モモコグミカンパニー 撮影/西邑泰和

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人気絶頂の中、惜しまれつつ2023年6月29日に解散したガールズグループ「BiSH」。メンバーの一人であるモモコグミカンパニーが、解散宣告された日から、東京ドームを超満員にしたラストライブまでの3年半の日々を赤裸々に綴った『解散ノート』(文藝春秋)が話題を呼んでいる。これまで小説2作、エッセイ2作を刊行し、文筆家としても評価の高い彼女が、なぜ解散ノートを書こうと思ったのか。その胸の内と、解散後の今を語る(前後編の前編)。

【写真】モモコグミカンパニーの撮り下ろしカット【11点】

2019年11月22日、事務所にBiSHメンバー全員が集められた。そこで彼女たちの所属する「WACK」代表の渡辺淳之介から、「東京ドームで解散」と突然の解散を告げられた。今は上り調子だが、この状況がいつまで続くか分からない。だらだら続けるよりも2,3年後に解散か、活動休止を発表するほうがいいのではないかという、あくまで本人たちの意思を尊重する提言だったが、異を唱える者は一人もいなかった。

「渡辺さんから解散という言葉が出た日、家に帰って、まっさらなノートの表紙に“解散ノート”と書きました。もともと私はテーマ性を持たせて日記を書くのが好きで、瞬発的に出たタイトルでした。他人に見せることのないノートは小学生の頃から書いていました。昔から自分の思いを書く場所が必要だったんです。

いつもは途中で投げ出してしまうんですが、解散ノートは3年半に渡って書き続けました。ちゃんと書き切ったのは初めてのことです。BiSHの活動が忙しいのに加えて、後半の1年半は小説を始め、書くものが多くて、最後のほうは気力で書いていました」

途中からキーボードに移行したものの、ノート1冊を埋めるまでは手書きにこだわった。

「小説などの長い文章じゃなければ、基本的に手書きです。インターネット上に文章を残していると、いつ消えちゃうか分からない。それに指先を動かすと、頭の中が整理されて、アウトプットになるんです」

解散ノートを書くことは、自分へのご褒美でもあった。

「解散を突きつけられて、これから先、どう感じて、どんな人生を歩んでいくのか。自分でも解散後の人生が予想もつかなかったので、それを客観視して書くのが面白いなと思ったんです。誰かのためではなく、自分のために書く。書けなかったら、この世界にいる意味がないとまで思っていました。

作家になりたい。作家でありたい。その先の人生を書かなかったら、もう表には出なくていいと覚悟を決めて書いていたので、それが解散ノートを書き切る原動力になりました。途中からは同時進行で小説も書いていたので、解散ノートは息抜きというか、自分と向き合うための時間にもなっていました」

もがいている自分をコンテンツとして面白がりながら書いていたが、忙し過ぎて一行だけの日もあった。だが書き続けることが重要だった。

「書かないと、その日あったことも忘れちゃう。たった一行でも、書けば思い出せるんですよね。解散後に、エッセイ形式で振り返る方法もありますが、それだと思い出が美化されちゃうだろうなと思って、リアルタイムで残していくことにこだわりました。本にする過程で文章は整えましたが、この日はなくすとか、この日を付け足すとかは一切していないんです」

解散ノートを書きながら、いかに自分にとってBiSHというグループの存在が大きかったかを思い知らされた。

「解散が自分の中で衝撃的だったのは、やっぱりBiSHというグループが大きかったからだと思うんですよね。BiSHを取った自分に何があるんだろう。自分とは何者なんだろう……。それを真剣に考えるきっかけを作ってくれたのが解散ノートでした。まだ小説も書いていなかったので、歌もダンスも得意ではない自分には何もなくて。逆に解散があったからこそ、小説を書こうって一念発起できたところもあります」