●今回の評価機材 / 3DMarkテスト

2月26日、AMDはRadeon RX 7900 GREを発表した。もっと正確に言えば、発表そのものは昨年7月に行われていたが、ただこれGlobal向けではなく特定地域向け、もっとはっきり言えば中国向け専用という扱いで、Global向けに展開される予定はなかった。これが変更になり、Global向けに投入されるようになったのが今年2月26日という訳だ。あるいはNVIDIAのGeForce RTX 4070 Superの対抗馬がすぐに用意できなかったので、GRE SKUを全世界リリースという形に変えたのかもしれない。

このRadeon RX 7900 GREのベンチマークテストの結果をお届けする

表1に簡単にRadeon RX 7900 GREとその前後のSKUの製品スペックをまとめてみた。Radeon RX 7900 GREはNavi 31を利用する製品の末弟といったところ。CU数こそ多い(ので演算性能はNavi 32を使うRadeon RX 7800 XTよりは高い)ものの、MCDは4つに減っている関係でInfinity Cacheは64MBに削減されている。またMemoryもGDDR6 18Gbpsになっている関係で、実はメモリ帯域だけでみるとNavi 32ベースのRadeon RX 7800 XTの方が上、という逆転現象も起きている。このメモリ帯域の削減に合わせてか、動作周波数もGame Frequencyが1880MHz、Boost Frequencyで2245MHzと低めに抑えられている。まぁこれには良い側面もあり、Total Board Powerは260Wである。

あとはどの程度の性能になるか? というのがポイントだ。AMDによれば、

1440p Gaming Performance:GeForce RTX 4070比で+16%、GeForce RTX 4070 Super比で同等

1440p Gaming with Raytracing Performance:GeForce RTX 4070比で+2%、GeForce RTX 4070 Super比で-12%

といったあたりで、Raytracingを多用しなければGeForce RTX Superと十分競合すると位置付けている。もうRaytracingの遅さはNaviの宿命みたいなものであり、次のNavi 4xでRay acceleratorが倍増でもされない限りはまぁこのままであろう。そんな訳で今回はこのGeForce RTX 4070 Superが仮想敵となるわけだ。GeForce RTX 4070 Superの性能は芹澤正芳氏のレポートが既に掲載されているのでご存じかと思うが、GeForce RTX 4070を一回り上回る性能とより向上した性能/消費電力比を誇る。流石にGeForce RTX 4070 Tiに届くほどには性能は向上していないが、このクラスとしては低めの220WというTGPも相まって魅力的な製品に仕上がっている。Radeon RX 7900 GREがこれにどこまで挑むことが出来るのかを見てみたいと思う。

○評価機材

今回Radeon RX 79000 GREとしてはPowerColorのHellhound Radeon RX 7900 GRE(Photo01〜09)である。GPU-Zでも問題なく認識された(Photo10,11)。Radeon Settingsでハードウェア情報を示したのがこちら(Photo12)で、GPU-Zの情報と一致している。ちなみに寸法は実測で320×120×48mm、重量は1275.6gで、昨今の重量級ビデオカードに慣れていると小さ目で軽いと感じてしまう。

Photo01: パッケージはいつものPowerColorという感じ。ただこの柄、うっかり評価機材の箱をぶち破ってしまったか! と誤解しそうで心臓に悪いので止めてほしい(特に右上)。

Photo02: 3ファン構成だが、中央だけ少し径が小さい面白い配置。ちなみに電源投入時にブルーで光るのも実にPowerColorらしい。

Photo03: 裏面も一応カバード。フルカバードでは無いが、ほぼ面一になっているので入り組んだケース内で他のケーブルをひっかけにくいのは吉。あとBIOSのOC/Silenceのスイッチがブラケット付近に用意されているのも操作しやすい。

Photo04: 一応2.5slot厚。妙にでこぼこしてないのもケースに収める際に重要である。

Photo05: こちら側はほぼむき出し。ヒートシンクの構造が良く判る。

Photo06: 出力はHDMI×1、DisplayPort×3。一番左にHDMIが来るカードを久しぶりに見た気がする。

Photo07: ヒートパイプは5本。一応リテンションを止めるためのネジ穴も用意されている。

Photo08: 上面。補助電源は8pin×2。

Photo09: 底面、ギリギリまでヒートシンクが広がっている。

Photo10: GPUのDefault Clockは2013MHzに。というか表1に示したGame Clockの1880MHzは流石に低すぎる気もする。

Photo11: Base Clockは更に低い1555MHzだった。Power Limit Adjustmentは-10%〜+15%。最大だと299Wで、ギリギリ300Wを切る辺りまでBoost可能である(性能がどこまで上がるかは不明だが)。

Photo12: コアクロック(Game Frequency)以外は表1の通り。

比較対象としてまずはRadeon RX 7900 XTとしてASUSのTUF Gaming Radeon RX 7900 XT OC Edition 20GBを用意。またGeForce RTX 4070 Superの方はASUS TUF Gaming GeForce RTX 4070 SUPER 12GB GDDR6X OC Editionを用意した。

このTUF Gaming GeForce RTX 4070 SUPERの方はまだ記事で紹介していない(TUF Gaming Radeon RX 7900 XT OC Edition 20GBの方は以前こちらの記事で紹介している)ので、ちょっと紹介しておきたい(Photo13〜22)。見た目だけで言えば同社のTUF Gamingシリーズと非常によく似ているが、実際は一回り小さく(実測で300mm×125mm×60mm。ちなみにTUF Gaming Radeon RX 7900 XT OC Edition 20GBは350×144mm×65mmだった)、重量も1184.8g(実測値:TUF Gaming Radeon RX 7900 XT OC Edition 20GBは2157.9g)と軽量である。一回り小さいとはいえ、それでもまだ結構な大きさではあるので、小さなケースに収めるには苦労するだろうが、重量は(同社の重量級カードに比べると)恐ろしく軽いのが特徴である。またそもそもTGPが220Wと控えめな製品に3つのファンを取り付けている事もあり(しかも昨今GeForce系列には高効率な11枚フィンを採用している)、フル稼働時でもかなり騒音は控えめになっている(多分ファンの動作プロファイルはGeForce RTX 4070 Superに最適化されているのではなかろうか)。またTUFシリーズに共通の頑丈なバックプレート(Photo17で底面のプレートには、強度向上用に端にリブが設けられているのが判るだろうか?)が装着されており、カードの反りとか歪みを抑えられる様になっているのも、TUFシリーズらしい長期間の利用を念頭に置いた特徴として良いかもしれない。

Photo13: TUF Gamingシリーズとしてはパッケージは小型。

Photo14: 同径3連ファン構成。カード端(この写真で言えば左下)が少し盛り上がっているのも他のTUF Gamingシリーズと共通。

Photo15: 裏面はほぼフルカバード。BIOSの動作モード切り替えスイッチはカード中央に。

Photo16: ほぼ3スロット厚。もういっそブラケットも3スロットのものにした方が安定すると思うのだが。

Photo17: 非常に重厚感あふれるが、持ってみると意外に軽い。

Photo18: 出力はHDMI×1、DisplayPort×3。それは良いのだが、カードエッジからのはみ出しっぷりが凄まじいのが判る。横幅がギリギリのケースへの装着は難儀するだろう。

Photo19: リテンション用の穴もちゃんと用意されている。

Photo20: 電源コネクタは12VHPWR×1。

Photo21: ヒートパイプは4本の構成。

Photo22: 12VHPWRと8pin×2の変換ケーブルも付属する。

また同社のGPUカードで利用できるGPU Tweak IIIも利用可能になっている(Photo23〜25)。動作状況の監視やOC設定などを全てGUIから設定できる。オーバーレイでの表示(Photo25)や、リモートマシンでの監視(Photo26)も可能である。

Photo23: メイン画面。デフォルトだとこの2つのウィンドウが横に繋がっていて、恐ろしく面積を喰う。一応こんな風に切り離しが可能ではあるが。リアルタイムで監視やロギングが可能。

Photo24: 表示項目も多岐に渡る。

Photo25: 左上にGPU Tweak IIIのオーバーレイを表示中。

Photo26: 手持ちのスマートフォンに飛ばして表示させた例。要するにGPU Tweak IIIにWebブラウザが内蔵されているので、相手はスマートフォンでなくてもWebブラウザが動けばなんでも行ける。ただしPCのファイアウォールを切っておかないと、外部からのアクセスを全部弾くので注意(最初しばらく悩んでしまった)。

その他のテスト環境は表2に示す通りである。ちなみにRadeon RX 79000 GREのドライバだが、テストが終わった後でAMDよりHelldivers 2に対応した修正版としてAdrenalin 23.40.19.01 feb16版が提供されたが、そもそもHelldiver 2をテスト項目に入れてないこともあり、今回はAdrenalin 24.1.1 WHQLのままとしている。

グラフ中の表記は

RTX 4070 Super:ASUS TUF Gaming GeForce RTX 4070 SUPER 12GB GDDR6X OC Edition

RX 7900 GRE :PowerColor Hellhound Radeon RX 7900 GRE

RX 7900 XT :ASUS TUF Gaming Radeon RX 7900 XT OC Edition 20GB

となっている。また解像度表記も何時もの通り

2K :1920×1080pixel

2.5K:2560×1440pixel

3K :3200×1800pixel

4K :3840×2160pixel

としている。

なおゲームに関しては、FSRやDLSS/XeSSなどのSuper Samplingも全て無効の状態で比較を行っている。Raytracingはゲーム毎に設定が異なるので、その都度説明したい。

○◆3DMark v2.28.8217(グラフ1〜3)

3DMark v2.28.8217

UL Benchmarks

https://benchmarks.ul.com/3dmark

グラフ1

グラフ2

グラフ3

まずは小手調べと言う事で3DMarkから。グラフ1がOverallであるが、テストによって性能の傾向が結構異なる。NightRaidとかFireStrike、TimeSpyなどに関してはRadeon RX 7900 GREがGeForce RTX 4070 SUPERを上回っているが、WildLifeとかSpeedWay、SolarBayなどは逆転している。WildLifeに至ってはExtremeは兎も角PerformanceではGeForce RTX 4070 SUPERがRadeon RX 7900 XTをも上回っているあたり、性能差はアーキテクチャの違いに起因しているとも言えなくもない。あとRay Tracingを利用するSpeedWay/Solar Bay/Port RoyalはやはりRadeon RX 7900 GREが一番遅い(SpeedWayとかSolarBayでは結構大差がついている)のは仕方ないところか。もっとも先に書いたようにRay Tracingが現在のNavi 31の泣き所な訳で、それでもここまで頑張ったと評すべきなのかちょっと判断に迷うところではある。

Graphics Test(グラフ2)も傾向は同じである。尤もPhysics/CPU TestとかCombined Testなどを絡めるのは初期のFireStrikeとかTimeSpy、NightRaidなどで最近追加されたものは全部Graphics Testだけでスコアを出しているからそれほど差が無いのも当然なのだが。ではPhysics/CPU Testで差があるか? というのがグラフ3である。同系のGPU同士だとあまり差が出ないのだが、NVIDIAとAMDが混在しているから、ドライバのつくりなどで多少差が出ることもあり得るのだが、結果はグラフの通り誤差の範囲であって、差は無いとして良いかと思う。

●ゲームテスト1: Avatar FoP / Borderlands 3 / CoH 3 / Cyberpunk 2077

○◆Avatar Frontiers of Pandora(グラフ4〜10)

Avatar Frontiers of Pandora

Ubisoft

https://www.ubisoft.com/ja-jp/game/avatar/frontiers-of-pandora

ベンチマーク方法はこちらに準ずる。設定は

Graphics Quality:Ultra

とした。ちなみに設定項目は無いのだが、どうも内部ではRay Tracingを利用している風情がある。

グラフ4

グラフ5

グラフ6

グラフ7

グラフ8

グラフ9

グラフ10

さて結果はグラフ4〜6の通りで、Radeon RX 7900 XTが辛うじてGeForce RTX 4070 Superに勝っているという程度で、当然Radeon RX 7900 GREに勝ち目はない。ただ全体の傾向を見ていると、2KはCPUボトルネックで2.5K位で多少差が出る感じか? と思ったがフレームレート変動を見てみると2K(グラフ7)ではまだボトルネックになった、と言うほどグラフの形が一致しておらず、まだギリギリGPUの方がボトルネックの様だ。もっともこれはRadeon RX 7900 XTとGeForce RTX 4070 Superの話で、Radeon RX 7900 GREはそこまで性能が行ってない感じではある。とはいえ、そのRadeon RX 7900 GREでもギリで3Kまでは60fpsをほぼ割らずに済んでいるし、ちょっとだけ描画品質を落とせば4Kでもプレイは可能だろう。いうほど悲観的なスコアでもないのは救いである。

○◆Borderlands 3(グラフ11〜17)

Borderlands 3

2K Games

https://borderlands.com/ja-JP/

ベンチマーク方法はこちらのBorderland 3の項目に準ずる。設定は

全体的な品質:Ultra

アンチエイリアス:テンポラル

とした。

グラフ11

グラフ12

グラフ13

グラフ14

グラフ15

グラフ16

グラフ17

結果(グラフ11〜13)を見ると、今度は逆にRadeon RX 7900 GREがGeForce RTX 4070 Superを綺麗に上回る成績になっている。今となっては比較的軽めなゲームに属するのかもしれないが、それでも4Kで平均80fps超えは中々優秀と言わざるを得ない。フレームレート変動を見ると2K(グラフ14)は多少GeForce RTX 4070 Superと重なり合うところもあるが、2.5K(グラフ15)ではほぼ分離。3K/4K(グラフ16・17)では完全に分離しており、明確に性能差が示された格好である。

○◆Company of Heroes 3(グラフ18〜24)

Company of Heroes 3

Relic Entertainment

https://www.companyofheroes.com

ベンチマーク方法はこちらのCompany of Heroes 3の項目に準ずる。設定は

Image Quality:Ultra

とした。

グラフ18

グラフ19

グラフ20

グラフ21

グラフ22

グラフ23

グラフ24

さて、結果(グラフ18〜20)だが微妙にRadeon RX 7900 GREがGeForce RTX 4070 Superに負けている感じだ。ただMaximum/Minimumに大差はないあたり、割と接戦である事が見て取れる。

実際フレームレート変動を見てみると、2K(グラフ21)など差が非常に少ない。2.5K(グラフ22)だとそれでもややグラフが分離している時間が長くなるが、かなり接近している。3K〜4K(グラフ23・24)も同じであり、特に4KだとGeForce RTX 4070 Superが75〜85秒付近で妙に落ち込むのがRadeon RX 7900 GREではない辺り、どちらがプレイに向いているかの判断が難しい。一応平均フレームレートではややとGeForce RTX 4070 Superに負けているとはいえ、Ultra Qualityで4Kまで十分にプレイできるというのは普通に考えれば十分な性能と言える。

○◆Cyberpunk 2077(グラフ25〜31)

Cyberpunk 2077

CD PROJEKT RED

https://www.cyberpunk.net/us/ja/

ベンチマーク方法はこちらのCyberpunk 2077の項目に準ずる。設定は

Quick Preset:Ultra

Ray Tracing:Medium

とした。一応軽くRay Tracingを使っている状態だ。

グラフ25

グラフ26

グラフ27

グラフ28

グラフ29

グラフ30

グラフ31

さて結果(グラフ25〜27)を見ると、まず絶対性能という観点で言えばRadeon RX 7900 XTですら3Kが何とか。Radeon RX 7900 GREとGeForce RTX 4070 Superは2.5K止まりにしておく(か、Ray Tracingを無効化する)方が良いかと思う。

それはともかくとして、こちらは逆にRadeon RX 7900 GREがGeForce RTX 4070 Superが微妙に買っている感じである。もっとも2Kのフレームレート変動(グラフ28)を見ると、Radeon RX 7900 GREがGeForce RTX 4070 Superの性能差は非常に少ない感じである。ただ2.5K〜4K(グラフ29〜31)では次第に差が判りやすくなっている。特にグラフ31など、差の絶対値そのものは少ないが、それでも確実にRadeon RX 7900 GREの方が上回っている感じが見て取れる。

●ゲームテスト2: F1 23 / Far Cry 6 / ForSpoken / Hitman 3

○◆F1 23(グラフ32〜38)

F1 23

EA Sports

https://www.ea.com/ja-jp/games/f1/f1-23

ベンチマーク方法はこちらのF1 23の項目に準ずる。設定は

Anisotropic Filtering:16x

Anti-alias:TAA Only

Detail Preset:Ultra-High

とした。こちらは無条件でRay Tracingが有効化される。で、QualityをUltra-HighにするとRay Tracingをフルに利用するためだろう。

グラフ32

グラフ33

グラフ34

グラフ35

グラフ36

グラフ37

グラフ38

結果(グラフ32〜34)を見るとGeForce RTX 4070 SuperがRadeon RX 7900 XTを上回る性能になっている。勿論Radeon RX 7900 GREは全然及ばない。なのだが、GeForce RTX 4070 Superですら2Kで120fps切りであり、実用になるのは2.5Kまでというあたりは、このクラスのビデオカードではUltra-Highにはすべきではない、というあたりだろうか。

フレームレート変動(グラフ35〜38)を見ると、まぁ2Kはどのカードでも十分利用できるが、Radeon RX 7900 GREはもう2.5Kで結構アウトである。流石に煩雑に50fpsを切るのはちょっと厳しいだろう。Radeon RX 7900 XTでもなんとか、という感じ。3K以上はどれも厳しい感じになっている。まぁRay Tracingは厳しいのは判っていた話ではある。冒頭で書いたようにRay Tracingが入るゲームでRadeon RX 7900 GREはGeForce RTX 4070 Superからフレームレートが平均12%落ちとされているが、F1 23に関してはUltra-Highだと20%落ちとなっている。残念ながらこれがNavi 31の実力というべきだろう。

○◆Far Cry 6(グラフ39〜45)

Far Cry 6

Ubisoft Entertainment

https://www.ubisoft.com/ja-jp/game/far-cry/far-cry-6

ベンチマーク方法はこちらに準ずる。設定は

Quality: High

Antialias: TAA

DXR Reflections/Shadows On

としている。

グラフ39

グラフ40

グラフ41

グラフ42

グラフ43

グラフ44

グラフ45

さて結果(グラフ39〜41)を見ると判るが、2Kに関して言えば完全にCPU Neckである。2.5K以上でそれなりに性能差が出てくるが、これを見る限りでRadeon RX 7900 GREとGeForce RTX 4070 Superの性能差は殆ど見られない、という事になる。

実際フレームレート変動(グラフ42〜45)を見ると、2Kはもう見事にCPUボトルネックということでほぼ1本の線に収束してしまっているので良いとして、2.5Kはほぼ同等。3Kは何故か10〜50秒の範囲でややGeForce RTX 4070 Superの方が高いフレームレートを示しているが、4Kになると逆にRadeon RX 7900 GREの方が高い。

Ray Tracingを有効にしても、それをフルに使う様なゲームで無ければRadeon RX 7900 GREはGeForce RTX 4070 Superとほぼ同等のである、という事例となった。ちなみにこのFar Cry 6のみ、GeForce RTX 4070 Superは4K描画時にメモリ不足の警告が示された事を注記しておく。

○◆ForSpoken(グラフ46〜52)

ForSpoken

Square Enix

https://www.jp.square-enix.com/forspoken/

ベンチマーク方法はこちら(Ryzen 8000GのForSpokenのページへのリンク入れて下さい)に準ずる。設定は

Image Quality Presets:High

とした。

グラフ46

グラフ47

グラフ48

グラフ49

グラフ50

グラフ51

グラフ52

結果(グラフ46〜48)を見ると、かなりRadeon RX 7900 GREは健闘しているものの、GeForce RTX 4070 Superに一歩及ばないという感じだ。まぁ4Kでも110fps超えだから、プレイに支障があるか? と言われればNoであるが。

フレームレート変動(グラフ49〜52)を見ると、負荷が軽いところで性能が上がりきらない感じだ。2Kで言えば60〜120秒とか160秒移行がそれにあたる。逆に120〜160秒、それなりに負荷が高そうなところでの性能差はそれほどないあたり、実はプレイをしていてどの程度性能差を感じられるか? はちょっと微妙なところだ。この傾向は2.5K〜4Kも同じで、なので現実問題としてはそこまでの大きな性能差は無いとは思うのだが、それでもフレームレートを比較した場合には明確に差は存在するというところだ。

○◆Hitman 3(グラフ53〜59)

Hitman 3

IO Interactive A/S

https://www.epicgames.com/store/ja/product/hitman-3/home

ベンチマーク方法はこちらのHitman 3に準ずる。設定は

Adaptive Supersampling Technique:Off

Ray Tracing:Off

Level of Detail:Ultra

Texture Quality:High

Texture Filter:Anisotropic 16x

SSAO:Ultra

Shadow Quality:Ultra

Mirrors Refrection Quality:High

Reflection Quality:High

Variable Rate Shading:Off

Motion Blur:High

Simulation Quality(Graphics):Best

とした。

グラフ53

グラフ54

グラフ55

グラフ56

グラフ57

グラフ58

グラフ59

さて、結果(グラフ53〜55)を見ると、やはりRay Tracingを使わないとRadeon RX 7900 GREはそれなりに性能が出る。2KではちょっとCPUボトルネックの気があるが、解像度が上がると性能差は開く。といっても、GeForce RTX 4070 Superとの性能差はそう大きくはない。最小フレームレートがほぼ一定、というあたりからもこれが伺える。

フレームレート変動(グラフ56〜59)を見ると、最高速のRadeon RX 7900 XTは兎も角としてRadeon RX 7900 GREとGeForce RTX 4070 Superの性能差は「存在するが、そう大きなものでは無い」というあたりだろうか。

●ゲームテスト3: Metro Exodus / Tomb Raider / The Division 2 / Watch Dogs Legion

○◆Metro Exodus PC:Enhanced Edition(グラフ60〜66)

Metro Exodus PC:Enhanced Edition

4A Games

https://www.metrothegame.com/

ベンチマーク方法はこちらのMetro Exodus Enhanced Editionの項に準じる。今回はUltra Presetを利用した。

グラフ60

グラフ61

グラフ62

グラフ63

グラフ64

グラフ65

グラフ66

さて結果(グラフ60〜62)からも明らかな様に、今度はGeForce RTX 4070 SuperがGeForce RTX 4070 Superを上回っている。そもそもこのベンチそのものがRay Tracing必須で、しかもUltra PresetだとそれなりRay Tracingの範囲も広いので、これは予測できた結果でもあり、F1 23の様にGeForce RTX 4070 Superが最高速にならなかっただけでもNavi 31は頑張ったと言えるかもしれない。

フレームレート変動(グラフ63〜66)を見ると、どの解像度でも綺麗にグラフが分離しており、明確に描画性能の差がある事が判る。それでもRadeon RX 7900 GREは2.5Kで60fps以上を維持(特に厳しい75〜90秒付近でもギリギリ60fpsを割っていない)してるから、プレイをするには十分である。3KになるとGeForce RTX 4070 Superもこの75〜90秒あたりで50fps前半まで落としており、Radeon RX 7900 XTだけが何とか60fpsを維持、という感じなので、このグレードの製品としてはRadeon RX 7900 GREは十分健闘していると考えて良いかと思う。

○◆Shadow of the Tomb Raider(グラフ67〜73)

Shadow of the Tomb Raider

SQUARE ENIX

https://tombraider.square-enix-games.com/en-us

ベンチマーク方法はこちらに準じる。設定は

Quality:Highest

Ray Tracing:Off

とした。

グラフ67

グラフ68

グラフ69

グラフ70

グラフ71

グラフ72

グラフ73

今となっては割と古いゲームで、Ray Tracingの利用も局所的なので、Ray Tracingは無効化したのだが、意外にここでGeForce RTX 4070 Superがかなり健闘を見せ、Radeon RX 7900 GREを凌ぐ性能を叩き出している(グラフ67〜69)。ただ傾向を見ると、2KではややCPUがボトルネックになりかかりらしく、実際フレームレート変動(グラフ70〜73)を見ると2Kでは結構な時間Radeon RX 7900 XTとGeForce RTX 4070 Superのグラフが重なっている。もう少しCPU性能の上乗せがあれば、Radeon RX 7900 XTのグラフはもう少し上に上がってゆきそうだ。2.5K以降はもう明確にグラフが分離しており、これがそのまま性能差と考えて良いと思う。とはいえ、一番性能の低いRadeon RX 7900 GREですら4Kで80fps以上を維持しているあたりは、プレイに支障が出ることは無いとは思うが。

○◆Tom Clancy's The Division 2(グラフ74〜80)

Tom Clancy's The Division 2

Ubisoft

https://www.ubisoft.co.jp/division2/

ベンチマーク方法はこちらの"Tom Clancy's The Division 2"に準ずる。設定は

品質:ウルトラ

とした。

グラフ74

グラフ75

グラフ76

グラフ77

グラフ78

グラフ79

グラフ80

さて、結果(グラフ74〜76)を見ると、やはり今となっては軽いゲームと言う事もあってか、2KではちょっとだけCPUボトルネックになりかかってる感がある。ただ2.5K以上では相応にフレームレートが落ちる辺りは、ギリギリ2Kのみ(Radeon RX 7900 XTのみ2.5KもまだCPUネックになってる可能性はあるが)といったところ。そして問題のRadeon RX 7900 GREとGeForce RTX 4070 Superだが、平均フレームレートを見ると差は1fps未満で、これは誤差の範囲としてよいのではないかと思う。フレームレート変動(グラフ77〜80)を見ると、2.5K〜4Kの範囲で70秒〜85秒あたりで妙にGeForce RTX 4070 Superのフレームレートが上振れしており、これが微妙に平均フレームレートに影響を及ぼしている(2Kはごちゃごちゃしすぎていて判別が難しい)。ただ全体として見ればほぼRadeon RX 7900 GREとGeForce RTX 4070 Superのグラフは重なっており、同等の性能と評して良いかと思う。

○◆Watch Dogs:Legion(グラフ81〜87)

Watch Dogs:Legion

Ubisoft

https://www.ubisoft.co.jp/wdlegion/

ベンチマーク方法はこちらの"Watch Dogs:Legion"に準ずる。ちなみに設定は

Quality:Very High

RT Reflection:Medium

とした。

グラフ81

グラフ82

グラフ83

グラフ84

グラフ85

グラフ86

グラフ87

結果(グラフ81〜83)はまぁ明白で、やはりRay Tracingを使うとRadeon RX 7900 GREの性能はGeForce RTX 4070 Superには及ばない。一応今回Ray Tracingは控えめにMedium設定にしてみたが、有効にするだけで結構な性能へのインパクトがあるようだ。ただその性能差は10%少々に収まっており、これはAMDの言う-12%よりはマシである。

フレームレート変動(グラフ84〜87)を見ると、所々重なる部分はあるものの、基本3つのグラフは綺麗に分離しており、性能差は明白である。もっとも3KだとRadeon RX 7900 XTは兎も角として、Radeon RX 7900 GREは元よりGeForce RTX 4070 Superもプレイにはちょっと厳しい感じで、この描画設定を維持するなら解像度は2.5K以下にしないと厳しい。その意味ではRadeon RX 7900 GREもGeForce RTX 4070 Superも大きな違いは無い、ともいえるが。

●ゲームテスト総括 / PCMark / ビデオエンコード

○◆Game Benchmark総括(グラフ88〜91)

ということで12種類のGame Benchmarkのご紹介が終わったところで、ちょっとすべてのゲームの平均フレームレートをまとめて相対性能を示してみた。

グラフ88

グラフ89

グラフ90

グラフ91

Radeon RX 7900 GREを100%としたものだ。2Kだけでなく2.5K〜4Kまで全部示したのは、2KだとCPUボトルネックに陥った例(Far Cry 6、Tom Clancy's The Division 2)があるからで、もう少し上の解像度での相対性能も同時に示してみる必要があると感じたためだ。それぞれ12個の平均フレームレートについて相対性能を示した上で、最後に幾何平均を算出している。その幾何平均をまとめると

といった感じ。解像度に関わらず、おおむねGeForce RTX 4070 SuperはRadeon RX 7900 GREと比べて4%ほどフレームレートが高いといった傾向にあると考えられる。

もっともこれ、Ray Tracingを有効化したタイトル(Cyberpunk 2077・F1 23・Far Cry 6・Metro Exodus PC Enhanced Edition・Watch Dogs:Legion)を含んだ上での数字である。これに加えてAvatar Frontiers of PandoraもRay Tracing対応タイトルと扱うとすると、Ray Tracing未対応のゲームの場合の性能は

となり、ほぼAMDの主張する「GeForce RTX 4070 Superと同等」が確認できたことになる。まぁRay Tracingが鬼門なのは致し方ないところだ。

○◆PCMark 10 v2.1.2662(グラフ92〜97)

PCMark 10 v2.1.2662

UL Benchmarks

https://benchmarks.ul.com/pcmark10

グラフ92

グラフ93

グラフ94

グラフ95

グラフ96

グラフ97

一応Game以外でも普通に使える事の確認のためにこちらも実施してみた。まずOverall(グラフ92)であるが、PCMark 10 Extendedで性能差が大きいのは主に3DMark Firestrikeの結果が反映されているからで、無視してよい。そしてPCMark 10もそこそこに性能差があるのは、恐らくDigital Contents Creationと思われるので、これも無視すると、おおむね変わらないという結果になる。実際、PCMark 10 Applicationsのスコアはほぼ同等である。

Test Groups(グラフ93)でも、EssentialsとProductivityは言うほどの性能差がみられない。そのEssentials(グラフ94)で意外にApp Startupで性能差がでるのは良く判らないのだが、結果を見るとWritingのWarm/Cold Startupだけが妙に時間差がある。内部でOpenCLでも呼んでいるのかもしれないが、詳細は不明だ。ただ性能差があるのはそこだけなので、普通にはあまり関係ないと思われる。これはVideo Conferencingも同じである。

Productivity(グラフ95)も、Writingには性能差なし。Spreadsheetsでは内部でOpenCLを呼んでいるところで多少時間差がある程度で、やはり一般には関係なさそうだ。

Digital Contents Creationでは、Rendering&Visualizationの中で呼んでいる3DMark Slingshotの性能が結構違う関係でここで大差がついているが、これはGPU性能そのままである。Photo Editingも、ContrastとかUnsharpningなどをOpenCLを利用するところで所要時間が変わっており、このあたりはやはりGPU性能がそのまま影響する感じだ。要するにOpenCLを使わなければ殆ど差が無い、という格好である。その証拠にApplications(グラフ97)では差が無いも同然になっている。ということでOpenCLを使わなければほぼ性能差は無いこと、及びOpenCLを使う場合の性能は

GeForce RTX 4070 Super < Radeon RX 7900 GRE < Radeon RX 7900 XT

となることが確認できた。

○◆TMPGEnc Video Mastering Works 7 V7.0.30.33(グラフ98)

TMPGEnc Video Mastering Works 7 V7.0.30.33

ペガシス

http://tmpgenc.pegasys-inc.com/ja/product/tvmw7.html

グラフ98

Ryzen 8000Gのベンチマークの際に、意外にRyzen 8000Gのエンコード速度が速い事を確認できたので、ではRadeon RX 7900と比較するとどうか? という事を確認したかったのと、こちらの記事にある様にGeForceの内蔵エンコーダが最大8streamまで同時対応になったので、これの効果を確認してみることにした。

ということで結果がグラフ98なのだが、まずNVIDIAに関しては相変わらず同時2streamまでだった。こちらによれば、GeForce RTX 4070 Superの場合はNVEncそのものは1基ながら、最大8streamまで同時に処理できることになっている。ここからは推察だが、多分この最大8streamのエンコードを可能にするためには、NVIDIAが提供するVideo Codec SDKも最新のモノにする必要があり、TMPGEnc側でこれを怠っているためではないかと思う。ただ同時2streamにしても、正直言って遅すぎる気がする。あるいはこれもSDKを最新のモノに入れ替えないとフルの性能を発揮できないのかもしれない。ちょっと別のエンコードソフトを利用すべきであった。

一方Radeonの方だが、Ryzen 7 8700Gの場合で4streamで131.3fps、2streamで121.1fpsほど。対してこちらは4streamで170fps超えであり、その性能差は明白である事が確認できた。

●消費電力テスト / 評価まとめ

○◆消費電力測定(グラフ99〜105)

最後に恒例の消費電力測定である。今回は

3DMark SpeedWay(グラフ99)

CyberPunk 2077 2K(グラフ100)

Hitman 3 2K(グラフ101)

Metro Exodus PC Enhanced Edition 2K(グラフ102)

Shadow of the Tomb Raider 2K(グラフ103)

の5つの消費電力変動と、その平均値(グラフ104)。及び待機時電力と平均値の差(グラフ105)をまとめてみた。もっとも待機時電力に関してはグラフ104のIdleで示すようにほぼ同等であり、なのでグラフの絶対値は兎も角傾向そのものはグラフ104と105で大きくは変わらない。

グラフ99

グラフ100

グラフ101

グラフ102

グラフ103

グラフ104

グラフ105

さて結果を見てみると、やはりGeForce RTX 4070 Superの低消費電力ぶりは圧倒的であり、Radeon RX 7900 GREは概ね60Wほど上乗せされる感じになる。Hitman 3だけ消費電力の差が少ないが、これはHitman 3が煩雑にScene Changeが入って消費電力があまり変わらない時間(グラフ101の60秒前後が判りやすい)が挟まるためで、稼働中はやはり60Wほど消費電力上乗せとなる。性能が同じならば消費電力が増えた分、どうしても性能消費電力比の観点でRadeon RX 7900 GREはGeForce RTX 4070 Superには敵わない。そもそも公称値でGeForce RTX 4070 SuperがTGP 220W、Radeon RX 7900 GREはTBP 260Wなのだから、これは予測された結果ではあるのだが。

○考察

ということで駆け足ではあるが、Radeon RX 7900 GREを評価してみた。ラフに言えば「Ray Tracingを使わなければGeForce RTX 4070 Superと同等」というのはほぼ事実として良いと思う。

ただ、昔のゲームは兎も角昨今ではRay Tracingを有効化しているというか、無効化出来ないタイトルが次第に増え始めている事を考えると、そろそろRay Tracing Unitの強化をお願いしたいところではある。ただRay Tracingを有効化したタイトルであっても、GeForce RTX 4070 Superと同等のものはいくつかあったし、全体として見ればGeForce RTX 4070 Superの4%落ち程度の性能を維持しているのは、随分頑張ったと思う。

そんなRadeon RX 7900 GREの最大の売りは価格である。GeForce RTX 4070 Super発売当初の価格はこちらにある様に\99,800〜\132,500と結構幅があるが、この原稿執筆時(2月21日)でのAmazonの最安値は\102,680ほど。対してRadeon RX 7900 GREの国内販売価格は、まだ正式な価格は示されていないが10万円を切る値段で投入予定とされており、どの程度切るか次第ではあるものの、9万円台前半なら悪くない買い物かもしれない。

しかしNavi 31を使ったカードがミドルレンジ扱いされてしまう昨今の性能のエスカレートぶり(というか、ゲームの求めるGPU性能の上がり具合)にはちょっと恐ろしいものを感じてしまう。AMD/NVIDIA共に、そろそろ次世代製品のアナウンスが欲しいところだ。