港区中古マンション。購入したけど、売れない!?「ひとりで住む家、ふたりで棲む家」総集編
『始めるのはカンタン、でも終わるのは難しい――』
男女関係でよく言われるこのフレーズ。
でも…あなたは知っているだろうか。
この言葉が、“マンション売却”にも当てはまるということを。
悠々自適の東京独身生活を謳歌するために購入した“ひとりで住む家”。
それを“清算”して、“ふたりで棲む家”に移るのは、意外と難しい。
これは、東京でマンション売却に奔走する38歳女のストーリー。
第1話:「一生独身だし」36歳女が7,000万の家を買ったら…
米国株への投資や給料の一部をドルにかえて貯蓄してきたのが奏功し、円安が加速する中で一気に資産を増やすことができた。その一部を頭金にして、36歳の時に、このヴィンテージマンションを購入したのだ。
― 2年前、思い切ってこの家を買ってよかった。
お気に入りの家具を集めたリビングを見渡し、満ち足りた気持ちになる。
“当時”のことを思い返すと、まだほんの少し胸が痛む。けれどこの家で暮らすうちに、心の傷も少しずつ癒えてきた気がしている。
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第2話:「実は、私…」カルティエで指輪を選び、入籍の日も決まったけど。女には“秘密”があって…
― この人となら、ずっと心地よく暮らしていけそう。
そんな実感が深まってきた交際6ヶ月ごろ、正式にプロポーズされた。
さっそく互いの実家への挨拶を済ませ、カルティエでエンゲージとマリッジリングを選び、入籍の日取りも決める。いよいよ結婚する実感が湧いてきた。
ただ――1つだけ、彼にまだ“伝えられていないこと”があった。
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第3話:「新婚生活は順調だけど…」入籍して3ヶ月。女が親友に打ち明けた、ある心配事とは?
― たしかにミズホの言うとおりかも…自分が雄介の立場だったら、「また引っ越し?勘弁して」って思っちゃうかな。
ミズホの言葉に、雄介の感情に寄り添うことも必要だと気づかされる。「そうだよね。やっぱり子どもができてから悩もうかな」と言いかけた、その時。
「とはいえ、また次の家も購入して住むつもりなら、早いうちに住み替えた方がいいんじゃない?年齢重ねるとローンも組みづらくなっちゃうし。高齢出産でいつ授かるかわからないなら、なおさら早いうちに手を打っておいてもいいかも」
この言葉で、また私の中で気持ちが揺らぐ。
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第4話:港区にマンションを買った女。順調に見える暮らしの裏には、“人に言えない悩み”があり…
「それから、築年数。不動産市場では、築35年を超えると流動性は著しく下がる傾向にあります。また、建具や一部の設備はリニューアルされているものの、お風呂や給湯器などは設置から年数が経過しているので、中期的な修繕コストの発生が懸念されます」
― 言われてみれば、給湯器は結構古かったかも。
実際、住み始めてから一度リモコンが故障したことがある。その時は運よく中古の代替品が見つかったが、既にほとんどの部品が生産終了になっていると聞いた。
新堂さんは一度言葉を切ると、重々しく口を開く。
「さらにもう1つあるのですが…」
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第5話:「ウソ!?」港区マンションの売却査定。7,000万で買った家についた信じられない価格
4社目の内覧を終えた時には、私たちはすっかり疲れ果てていた。
「4社の中では、お昼に来てくれた財閥系の会社の人が一番いい感じだったよね」
「うん。話も論理的でスマートだったし、私たちの話もよく聞いてくれたし。まだ提案金額は出てきてないけど、財閥系の安心感もあるし、あの人なら任せられそう」
「真弓。財閥系の会社から、メールで提案書が来てるよ。ほら、PDFが添付されてる」
「本当だ!どれどれ…って、あれ?」
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第6話:「結婚も考えてたけど…」35歳外コン男が、同棲中の本命彼女と別れた“ある理由”
新堂さんへの手数料は、「法律の上限である“売却価格の3%+6万円”から割引して、1.5%」という取り決めになった。
「媒介契約は3ヶ月ごとに自動更新されますが、途中解約も可能ですので…」
わかりやすく教えてくれる表情には、誠実さがこもっていたと思う。しかし…。
「なんだか腑に落ちない提案をされているの。今から話すから、ミズホはどう思うか教えて」
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第7話:「昔ハマってたんだ…」40歳バツイチ男と結婚した年下妻。夫の趣味に“前妻の影”が…
その週末、さっそく私たちは部屋の写真撮影をすることにした。
雄介はNikonの一眼レフカメラと三脚を引っ張り出してきて、朝からあれやこれやと試行錯誤している。
― そういえば、前の奥さんとの離婚をきっかけに高級カメラを購入したって、付き合う前に言ってたなぁ…。
彼がバツイチであることをそう気にしたこともなかったが、思わぬ時に前妻の影がちらつくことがある。
そんな時、モヤモヤするような焦るような、少し複雑な気持ちにはなるのだけど…。
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第8話:かつて婚約破棄された39歳の元カレと3年ぶりに再会。結婚を報告したら、思わぬ反応で…
― なんで“彼”がここにいるの!?
マンションを売りに出して1ヶ月と少し。待ちに待った初めての内覧の日、訪れる検討客のために部屋の隅々まで部屋を磨きあげてその日を迎えた。
だけど――。
「本日はよろしくお願いいたします」
目の前で自分に向かって頭を下げているこの男。忘れもしない、自分を振った元恋人の修平だった。
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第9話:元カレをたびたび見かける女。怪しんで声をかけると意味深な顔で「久しぶり」と言われ…
「真弓さん、こんばんは。いきなりすみません」
「大丈夫だよ。どうしたの?この前言ってた、マンションの話?」
「違うんです…あれ、そうかもしれないな。いや、やっぱり違うかも」
電話の向こうで、健斗くんがゴニョゴニョ言っている。いつも冷静な彼が少し取り乱しているのが不思議で「どうしたの」と声をかけると…。
「今日、修平さんに会ったんです。それで、真弓さんのことを聞かれて…」
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第10話:婚約直後に破局。幸せ絶頂の34歳女を絶望に陥れた、慶應卒エリート男の愚行
「はぁ…まさか、こんなところで会うなんてね」
修平の横をすり抜けて、私は手に持っていた空き瓶をカゴの中に捨てる。今朝使い切ったばかりの、ジャムの容器だ。
そう、私たちが今いるのは、マンションのゴミ置き場。
元カレ・修平が私の部屋の内覧に来てからというもの、私は彼の様子が気になっていた。私の後輩である健斗くんに会い、探りを入れている様子だったが、目的は一体なんなのか――。
考えるうちに、私は、修平の思惑を予想していた。
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第11話:「夫には見せられない…」自宅ポストに元カレからの手書きメッセージが。衝撃の内容とは?
― 私の部屋を偵察して、参考にしたんだろうな…。
見れば、チラシの下の方に、3週間後の土日の日程で『内覧会開催予定』と書かれている。
ポータルサイトにも、同じことが書かれていた。検討客の内覧をこの2日間に絞り、プレミア感を演出する意図だろう。
― ん…?何か書いてある?
よく見ると、枠外にごく小さな文字で、手書きの文字が書き込まれていた。目を凝らして確認した時、思わずギョッとする。
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第12話:「未練がある」6年交際した元カレから、突然の告白。38歳既婚女の人生は思わぬ展開に…
「今からなら、10階を内覧できるって!せっかくだから、真弓も見せてもらおうよ!」
「そうなんだ!よ、よかった」
屈託のない笑顔。私は複雑な気持ちを悟られないよう、できるだけ明るい声を返す。
― 修平が、部屋にいませんように。
元恋人の不在を、切に願いながら。
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第13話:「前から思ってたけど、君ってさ…」いつも温厚な夫が、妻に不満をぶちまけ家出した理由
「真弓に未練があるんだよ」
マンションのエレベーターホールで元カレ・修平に腕を掴まれ、そう告げられたとき。いつのまにか背後に、夫の雄介が立っていた。
― 雄介…今の話、聞いちゃったよね?
雄介は何も言わず無表情だが、普段と明らかに様子が違う。無言でエレベーターのボタンを押し、ひとりで乗り込んだ。
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第14話:港区在住の建築家と再婚した女。シアタールーム付きの新居が、スピード離婚の引き金に…
「お客様から、指値のご相談を伺っています」
新堂さんの声が、電話口から聞こえる。先日再内覧をした女性について、進捗報告を受けているのだ。
彼女の購入意向を確認できたのはよかったが、やはり一筋縄ではいかない。指値…つまり、販売価格より減額しての購入相談ということになる。
― もともとの出し値が8,050万円。新堂さんの提案で「値下げ予定」として広報してもらっていたけど…。
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