30日で「スマホ断ち」を達成するために必要な心得について解説します(zon/PIXTA)

集中力や記憶力、創造性を減衰させる危険があることも証明されているスマホだが、完全に手放すのはなかなか難しい。そんな中、自身も陥っていたという「スマホ依存」から抜け出すために「スマホ断ち」プログラムを開発したキャサリン・プライス氏が、プログラムの概要について紹介します。

※本稿はキャサリン・プライス著『スマホ断ち 30日でスマホ依存から抜け出す方法』から一部抜粋・再構成したものです。

プログラムは自由に変更したっていい

30日間のプログラムの内容は次のとおりだ。習慣を変えるのには時間がかかる。そのため、できればこんなふうに一日にひとつずつ実践していってもらいたい。

とはいえ、この一覧をどう変更するかはあなたの自由。大切なのは、この体験(と、新しいスマホとの付きあい方)を自分にあったものにすることだ。

1週目 テクノロジーの選別(トリアージ)

1日目(月) 使用時間計測(トラッキング)アプリをダウンロードする

2日目(火) いまの付きあい方を把握する

3日目(水) 注意を始める

4日目(木) データを確認し、行動にうつす

5日目(金) SNSアプリを削除する

6日目(土) (リアルな)生活にもどる

7日目(日) 身体と向きあう

2週目 癖を矯正する

8日目(月) 通知にノーと言う

9日目(火) 人生が変わるマジック アプリを整理する

10日目(水) 充電場所を変える

11日目(木) 成功への下準備をする

12日目(金) アプリブロッカーをダウンロードする

13日目(土) 境界を定める

14日目(日) ファビングをやめる

3週目 脳の力を取りもどす

15日目(月) 動きを止める、深呼吸する、いまに意識を向ける

16日目(火) ぼーっとする練習をする

17日目(水) 集中力を鍛える

18日目(木) 瞑想する

19日目(金) スマホ断ち体験に向けて準備する

20日〜21日目(土〜日) スマホ断ち体験

4週目とそれ以降 新しい付きあい方をつくる

22日目(月) 体験を振り返る

23日目(火) 断スマホ(スマファス)する

24日目(水) 誘惑に対処する

25日目(木) デジタルライフの他の部分を片づける

26日目(金) スマホチェックを思いとどまる

27日目(土) デジタル休暇に取り組む

28日目(日) 劇的な効果をあげる人のスマホにまつわる七つの心得

29日目(月) 維持する仕掛けをつくる

30日目(火) おめでとう!

「スマホ断ち」の成功に必要な心得とは

ジャッジは不要

スマホ断ちは自分を裁く場ではない。当然、私があなたをジャッジする場でもない。私たちがやるべきことは観察し、自問し、体感することだけだ。

メッセージアプリで一日に150回メッセージをやりとりするのが、自分の好きな時間の使い方だと判断するのだとしても、あなたには好きに決める権利がある。

自分を追いこまない──”失敗”はありえない

実際にエクササイズをやってみて、効果が出ればすばらしい。日課にしよう。やってみてイマイチだと思ったら、次へ行こう。

同じように、もし以前の習慣にまたもどってしまったとしても(正直に言うと、その可能性は高い)自分を責めないでほしい。ただプログラムにもどってこよう。

そういう場合のひとつの対処法として、こんなのはどうだろう。

まずは自分が気落ちしていることを素直に認め、そのあとで気持ちを一新するために、自分の残念な行動を帳消しにするようなことを実行するのだ──スマホ版のカーボンオフセットだ。

たとえば、SNSブラックホールに吞みこまれていると気づいたなら、友人とランチに行く予定を立てるか、夕方の散歩ではスマホを置いていくようにしよう。

自分の手を動かし、自分で設定方法を探すこと

ノートをつける

各ステップには振り返りのヒントや答えてほしい質問を用意している。あなたが日記をつけるタイプなら、スマホ断ち専用のノートを用意してはどうだろう。

プログラムが終わるころには、自分の考えが見えるかたちになり振り返りができる。メールや手紙を自分宛てに書くという手もある。

くわしい手順を自分で探す

テクノロジーの進歩の速さを考え、設定の仕方は記しない。どうすればいいかわからなければ、インターネットで検索しよう。その際、自分のスマホの機種を含めるのをお忘れなく。もしくは、身近に九歳以上の子がいれば、代わりにやってもらおう。

プライベートから始める

まずは(仕事や学校用ではなく)私生活でのスマホの使い方に焦点をあわせよう。理由はふたつある。

ひとつには成果を出しやすいからだ。自分のスマホ癖を、仕事で始終チェックする必要があるからだと弁解する人は多い。

とはいえ、それはほんとうに仕事用のチェックだろうか。”仕事だから”と言いつつ、インスタグラムを見ていることはないだろうか。

ふたつ目は、プライベートでのスマホの使い方が変われば、仕事での使い方にも影が出るものだからだ。私生活で改善ができれば、仕事上のスマホとの付きあいもあるべきかたちにおさまるだろう。

ワンポイント:仲間を募る
いっしょにプログラムを実践する仲間がいれば、これからのプロセスがより楽しくなり、新しい習慣も定着しやすくなる。そこで、友人や家族、ルームメイトや同僚、ブッククラブのメンバーを仲間にすることをおすすめする。各ステップの質問項目を会話の題材として使えば、たがいの進捗を確認しあいながら進んでいけるだろう。

ぼんやりスマホを見るのは悪いことではない

ときにはスマホを見てぼーっとしたいこともある。問題なのは(私たちが防ごうとしているのは)、それが常態化することだ。

そして最後に、けれど、とりわけ重要なのが……。

自分いじめが目的ではない

私たちが取り組むのは、自分の理想の生き方と現状とのギャップを解消することだ。もちろん、途中で戸惑うことがあるかもしれないが、最後にはスマホ断ちですっきりとした気分を味わえるはずだ。

もしも単に自分に”ノー”を突きつけているだけだと思ったなら、いったんプログラムから距離を置いて立てなおしを図ろう。私たちのゴールは禁欲生活ではない。自覚的であることだ。

スマホ断ちが失敗するのは、ほとんどが準備不足が原因だ。

前述したように、スマホとの関係を見なおす際、どう変えたいかを具体的に考えずに取りかかることが多い。”スマホの使用時間を減らす”というような、曖昧なゴールに向けて動きだしてしまうのだ。

「ほどほどの使い方」を自分で決めること

テクノロジーを“選別”しよう

具体的にどうなりたいのか、何を実現したいのか、スマホに引きつけられる根本原因は何か、といったことを見きわめようとしない。


いきなり使うのをやめ、それではうまくいかず、無力感と失望感に苛まれるはめになる。それでは「こんな関係はもう嫌」と言って、恋人に別れを切り出すのと同じだ。

では、どんな関係ならいいのだと問いただされたところで、じつは自分でもわかっていないと白状することになるだろう。

あえて時間をとって答えを見つける努力をしなければ、十中八九、また同じように不毛で不健康な関係に陥ることになる。

同様に、この関係を有りか無しかの極論で考えることは、前述したように、スマホにたくさんの利点があるという事実から目をそむけることになる。

スマホ断ちの目的は、文明の利器の恩恵を捨て去ることではない。

スマホの悪影から自衛しつつ、スマホのよい部分を享受できるくらいの、ほどほどを自分で決めることだ。

(キャサリン・プライス : 科学ジャーナリスト)