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四輪車、二輪車用のショックアブソーバ、サスペンションシステムの製造・販売を行うカヤバは1月22日、AI技術を活用したショックアブソーバ(以下略、SA)開発効率化を支援するデータ分析システムを自社で開発したことを発表。詳細を「カヤバ技報 第66号」で発表している。

○社内DX推進の成果、作動油開発支援のためのデータ分析にAIを活用

同システムは、2019年設立のDX推進部の手によって開発されたもので、同社が高次元での操作性と乗り心地追求のため力を入れているSA摺動(しゅうどう)部品の作動油開発のデータ分析にAIを活用したことから生まれている。システムは新製品評価のために収集した走行試験データの一元管理、内製AIによるデータ解析、開発製品の特徴を把握する周波数解析サービスなどの機能を持ち、SA開発を効率的にサポートする。

SAデータ分析システムの概要図(同社資料より)

○パブリッククラウドのAWSでデータ分析基盤を構築

システムは、データ分析基盤とデータ分析アプリケーション、AIサービスで構成されており、走行試験データの一元管理からデータの検索、分析まで対応する。データ分析基盤には、AWS(Amazon Web Services)を活用し、クラウドで走行データの標準化のために開発された専用ロガーを運用。データ分析アプリケーションでは、データ分析ツール「Tableau」を使用し、走行データの検索、統計的な分析、データの比較検証、AI活用のためのデータ整備などに活用している。また、SA分析結果レポートを自動作成するアプリケーションを開発、業務効率化も推進している。

○AIによる異常検知技術を応用、開発品と従来品の周波数解析結果の比較から"新規性"を解析

今回、開発されたAIは新製品の特徴を表す"新規性"を抽出するもので、AIによる異常検知技術を応用して開発された。機械学習は、SA作動油の新製品と従来品の走行試験データにおいて、従来品の加速度データのみ実施し、後に開発品と従来品の周波数解析結果を比較、乗り心地という数値化が難しい感覚的な開発品の"新規性"の検出を行っている。同社では、専門知識がなくても利用できるAIを組み込んだアプリを開発し、誰でもAI周波数解析システムを利用できる環境構築も行っているという。

AIによる開発品と従来品のばね上周波数帯域の違いを可視化したイメージ(同社資料より)

同システムは、SA作動油の開発で試験運用され開発品の"特徴把握"に貢献しているが同社のDX推進部では、AI開発のための「Amazon SageMaker」を利活用する人材の育成を推進するとともに、「SageMaker Notebook」やAWS専用SDKを使った開発などを推奨、社内に蓄積されたデータやノウハウを公開し更なるAI活用を推進していくという。