by Fritzchens Fritz

PC向けゲームプラットフォーム「Steam」の運営元であるValveが開発した携帯型ゲーミングPC「Steam Deck」シリーズは、高負荷なゲームをサクサク遊べることから人気を集めています。そんなSteam Deckの液晶ディスプレイ搭載モデル(Steam Deck LCD)のAPUを接写した写真がFritzchens Fritz氏によって公開され、写真から多くの洞察が得られています。

AMD@7nmTSMC@DAPU_VanGogh@Zen2_RDNA2@Valve_Steamdeck_LCD@10… | Flickr

https://www.flickr.com/photos/130561288@N04/53420912673/

Steam Deckには液晶ディスプレイを搭載した「Steam Deck LCD」と有機ELディスプレイを搭載した「Steam Deck OLED」が存在しています。Fritz氏は両モデルのうちSteam Deck LCDのAPUを接写した写真を公開しました。

まず、Steam Deck LCDのロジックボードが以下。右下に写る正方形に近い形のパーツが計算処理や描画処理を担うAPUです。



by Fritzchens Fritz

APU付近をトリミングするとこんな感じ。Valveのロゴが記されているほか、AMD製であることも明記されています。



by Fritzchens Fritz

APUのカバーを外して中身を接写した写真が以下。CPUやGPUなどがギッシリ詰まっています。



by Fritzchens Fritz

ハードウェア関連YouTubeチャンネルのHigh Yieldは、Fritz氏が公開した写真を元に、Steam Deck LCDのAPU構成やSteam Deck OLEDとの違いについてまとめたムービーを公開しています。

Exclusive: Steam Deck Chip Analysis - YouTube

◆Steam Deck LCDのチップレイアウト

Steam Deck LCDのスペック情報や既存のAMD製APUのチップレイアウトなどを参考にAPUのレイアウトを推測した結果が以下。CPUやGPU、メモリコントローラーの位置などが推測されています。



しかし、チップ面積の13.7%に相当するエリアは用途不明エリアとして残ってしまいました。



Steam Deck LCDに搭載されいてるAPUは「Van Gogh」というコードネームで開発されていることが知られているのですが、High Yieldによると、ARゴーグル「Magic Leap 2」にもVan Goghが搭載されているとのこと。High YieldはAPUの用途不明エリアの詳細を知るために、Magic Leap 2の仕様を参照することにしました。



Magic Leap 2の仕様のうちAPUについて記された部分を確認すると、「14コア コンピュータビジョン プロセスエンジン(CVIP)」と呼ばれるチップが含まれていることが分かります。



Steam Deck LCDのAPUに含まれる用途不明エリアを再度確認すると、14個のコアが含まれているように見えます。このことから、High Yieldは「Steam Deck LCDとMagic Leap 2には同じ設計のAPUが搭載されており、Steam Deck LCDではCVIPが無効化されている」と推測しています。



◆Steam Deck LCDとSteam Deck OLEDの違い

以下の画像は、Steam Deck OLED(左)とSteam Deck LCD(右)の仕様を並べたものです。仕様を確認すると、Steam Deck OLEDには「6nm AMD APU」、Steam Deck LCDには「7nm AMD APU」が搭載されていることが分かります。



Steam Deck OLEDに搭載されている「6nm AMD APU」の面積は約133平方ミリメートルで、Steam Deck LCDに搭載されている「7nm AMD APU」の面積は約166平方ミリメートルです。「6nm AMD APU」は「7nm AMD APU」と比べて約20%面積が小さいことになりますが、これは「半導体製造プロセスが7nmから6nmへと微細化することによる密度の向上」だけでは説明できないほどの面積縮小とのこと。このため、High Yieldは「Steam Deck OLEDにはCVIPが搭載されておらず、Steam Deck OLEDのためだけに設計された専用APUが搭載されている」と推測しています。