モノが溢れているこの時代に、あえて“モノ”をプレゼントしなくてもいいんじゃない?と言う人もいるかもしれないけど…。

自分のために、あれこれ考えてくれた時間も含めて、やっぱり嬉しい。

プレゼントには、人と人の距離を縮める不思議な効果がある。

あなたは、大切な人に何をプレゼントしますか?

「あなたとのDistance」一挙に全話おさらい!



第1話:30歳男が本気の女に贈るプレゼントとは。アクセサリーでもバッグでもなく…

ドアを開け、急いで冷房をつける。同棲中の彼女・絢音はまだ帰宅していない。いつものことだ。僕はキッチンに立ち、買ってきた2人分の食材を並べた。今日の夕食はホイコーローにするつもりだ。

フリーのグラフィックデザイナー兼カメラマンとして活動している僕と、大手IT企業でバリバリ働く絢音。時間の融通がきくのは僕のほうだから、たいていの場合、平日は僕が家事をすることになっている。

絢音とは交際4年、同棲して2年。今夜、僕はこのありふれた日常をいつになく強烈に恋しく感じていた。

…なぜなら今朝、憧れている同業者の先輩から、突然こんな電話がかかってきたからだ。

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第2話:女を海外旅行に誘ったら断られた37歳男。しかし、ある物をプレゼントしたら、彼女の気が変わり…

今思えば、この日の会話が結婚を考えるキッカケになったのかもしれない。

運良く、出会った当時の彼女の歯には虫歯が4つもあったから、聡美を口説く時間はたっぷりあった。

ゆかりという娘がいることを初めて聞かされたのは、交際を申し込んだ時のことだったと思う。

子どもの年齢が想像よりも上だったので多少は驚いたが、シングルマザーだということは恋の妨げにはならなかった。

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第3話:「これ、昔の彼にもらったの」デートに元カレからのプレゼントを身につけて行った女。嫉妬した彼氏は…

本当はアーカーのネックレスとか、ミュウミュウのバッグとか、欲しいものはたくさんあった。しかし、喉まで出かかったところで、あえてそれを呑み込んだ。

― ブランドの何かをねだるなんて、子どもっぽいよね…。

子どもっぽく見えないように。それは美那が、7歳年上の建人といる時にいつも気にしていることだった。

建人との出会いは、7ヶ月前の卒業旅行でのこと。セントポール大聖堂近くのパブで飲んでいた美那と友人に、たまたま出張でロンドンに来ていた建人とその同僚が声をかけたのがきっかけだった。

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第4話:「もう結婚したのに…」別れた男との記念品を捨てられない人妻。ある日、38歳になった元カレに再会し…

「いいじゃん、買っちゃえば。なんなら俺が買ってあげるし。百合、婚約指輪も要らないって言い張るから買わなかったけど…一度くらい、何かちゃんとしたものを贈らせてよ」

弘樹は今にもクレジットカードを取り出さんばかりの勢いだ。それを見て、私はハッと我に返る。

― ダメダメ、今の時計を大切にするんだから。

店員さんにお礼を言って、慎重に時計を外した。弘樹が不満げな表情をするので、思わず苦笑してしまう。

「…この時計、気に入ってるんだよね」

たくさん傷のついた、チープさを醸す私の時計。それは、“ある人”からの、最後の贈り物だった。

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第5話:夫がクローゼットに隠していた他の女へのプレゼント。発見した妻は、絶望のあまり…

私を選んだ理由は、おそらく妥協…なのだろう。同じ志を持った、真面目な働き者。彼の夢をかなえるパートナーとして、私以上に相応しい相手はいないと、涼香も自覚している。

お客様の前に立つ以上、身ぎれいにはしているが、気がつけば年相応に加齢していることは否めない。

涼香はドレッサーの前で、LANCOMEのアイクリームを入念に塗り込みながらため息をついた。

― 彼は、若いころ手に入らなかったものを、今、得ようとしているのかな…?

女性の影に納得できてしまう自分が悲しい。ダブルベッドにひとり潜り、涼香は静かに目を閉じるのだった。

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第6話:目の下のクマ取り手術。気軽に考えていたけど実態を知った30代女は、別の“あるモノ”に課金し…

ここ最近、ちょっとしたことでも気持ちがピリついてしまう。そのせいで、社内でも腫れもの扱いをされているような気がする。

鏡に映る自分の顔をあらためて見てみると、青黒いクマがくっきりと浮かび上がり、今にも倒れてしまいそうだ。

― 確かに、このクマじゃ体調も心配になるよね。もうすぐハロウィンだからって、これじゃまるで魔女だよ。…よしっ。

自分の疲れ顔を鏡でまじまじと眺めたあと。私は、“ある場所”に電話をかけていた。

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第7話:同窓会で元カノに離婚したことを打ち明けられた32歳男。思わず、彼女をデートに誘ったら…

「…彼といる時間がすごく窮屈で、消耗しちゃって」

聞けば結婚相手は、七瀬に「仕事をやめて自分を支えてくれるように」と言うようになったのだという。それでも仕事を手放したくなかった七瀬は、「嫁を間違えた」と吐き捨てられたのを機に、離婚を決めたそうだ。

「周りから、あんないい条件の人めったにいないよ、って言われて結婚したんだけど。確かに、条件では、そうなんだけど。…そろそろ幹事の仕事しなきゃ。こんな話してごめんね。旬矢の話も、今度聞かせて」

七瀬は、逃げるようにテラスを去っていった。旬矢はいつのまにか、あの頃のように七瀬に心を奪われていた。

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第8話:玉の輿婚を報告したら、音信不通になった未婚の女友達。久々に再会した彼女に言われた辛すぎる一言

仕事を辞めた私が高価な粉ミルクを買えるのも、夫の稼ぎが十分にあるおかげ。

だから、育児がワンオペになることは承知の上だ。

悩んでいるのは、そこではない。私が婚約してから一切の連絡が取れなくなってしまった、親友のユリのことだ。

― まさか出産もスルーされるとは、思ってなかったな…。

きっと夫に相談したら、「女ってめんどうだな」の一言で片付けられてしまう。だから、ひとりで悩み続けるしかなかった。

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第9話:大親友の彼氏と結婚した女。「略奪したわけじゃない」と言い訳しつつも、合わせる顔がなく…

由梨と最後に会ったのは、26歳の時だ。

「信彦さんと、お付き合いしてるの」

そう報告したあの日。由梨の驚いた顔を萌花は今でも忘れていない。

不意に、ダイニングテーブルの隅で萌花のiPhoneが小さく震えた。手を伸ばし、画面を見ると、新着メッセージを知らせるLINEの通知。

『萌花、久しぶり。同窓会来る?』

たった今、最後に会った記憶を辿っていた友人、由梨からだった。

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第10話:「はい、あげる」と、赤坂のタワマンをくれた15歳年上の彼。ある日突然、音信不通になり…

オーナーの古い知り合いで、とにかく羽振りが良いらしい。窪塚洋介似の品のあるイケメン、紳士的な態度も相まって、女性スタッフの中で「逆指名したい」と話が出るほど人気があった。

けれど彼は、毎回なぜか私を指名した。キラキラした女子大生の中で、北関東から出てきてバイトで身を立てている私が物珍しく見えたようだ。毎回高価な酒を注文し、あれこれと私の話を聞きたがったが、ある日ポンと“鍵”を机の上に置いた。

「それ、プレゼント。普段使わないから、住んでていいよ」

赤坂のタワマン、夜景が見える高層階の一室。それが、彼からの初めての贈り物だった。

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第11話:出産したけど、夜遊び三昧の独身時代が忘れられない。28歳女が友人に送ったメッセージとは

― そういえば、あのコ、元気かな…。

ふと思い立った菜摘は、怖いもの見たさで長谷川千里のアカウントを検索し、覗いてみた。

千里はかつての友人で、アパレルで働く3歳年下の女の子だ。お互いに雑誌の読者モデルをしていたことで知り合った彼女とは、年齢は違えども、価値観や趣味、好きなモノやノリが全て一致する親友だった。

しかし、結婚と同時に妊娠を報告したところ、表向きに祝ってくれはしたものの、連絡がぱたりと途絶えてしまった。

― そんなもんだよね、女の友情って…。

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第12話:32歳でCAからライターに転身した女。CA時代の暴露話がヒットした代わりに、失ったものとは

今から2年前、32歳のとき。10年勤めた航空会社を退社した私は、ライターに転身した。

出版社で働く大学時代の友人が、Webコラムの枠をくれたのだ。そこでCA時代の裏話を書きはじめると、ほどなくして大ヒット。他社からも声がかかるようになり、連載は一気に6本に増え、毎月の原稿納品数は30本以上にまで跳ね上がった。

― このまま人気ライターの仲間入りをして、いつかは自分の本を出版できたらいいな。

そんな華々しい未来を思い描いていた。ところが今年に入り、記事のPV数がみるみる下降しはじめると、連載は2本にまで激減。手が届きそうに思えた願望は、スルリとすり抜けてしまった。

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第13話:「あの人から貰いたい…」友達も彼氏もいない孤独な女が、30歳の誕生日にどうしても欲しかったモノ

社会人になって8年目。12/18には30歳の誕生日を迎える。仕事はそこそこに順調で経済的には満たされていると思う。しかし、兎にも角にも孤独なのだ。

数少ない大学時代の友達とは、年が経つごとに疎遠になってしまった。親友と呼べる友達も、特にいない。恋人も、4年近くいない。

― ひとりがこんなに寂しいなんて。

もういい大人なのに。でも、寂しいものは寂しいのだからどうしようもない。「酔鯨」をレジに持っていこうと手に取った、その瞬間だった。

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