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いずれまた、復活の呪文を唱えよう。

12月12日、米エンターテイメントソフトウェア協会(ESA)は、かつて地球上で最大のゲームショウと呼ばれた“Electronic Entertainment Expo(E3)” の終了を正式発表しました。

ESAはE3の公式ウェブサイトやXにて、「20年以上にわたって開催され、毎回前年を超える盛り上がりを見せてきたE3だが、とうとう別れを告げるときが来た。思い出をありがとう」とメッセージを残しています。

そしてその最後には、20 年以上応援してくれたゲームファンに対して「GGWP(Good Game Well Played)」という味方を称えるゲーム用語が添えられていました。

ここ数年は開催中止が続いていた

2020年には新型コロナウイルス感染拡大によって開催が延期され、続く2021年と2022年も任天堂やソニーといった大手の不参加や撤退を受けオフライン開催は中止に。

そんななか、多くのゲーム会社が「自分たちで演出して、がっつり自社流のイベントやカンファレンスを開けばいいんじゃない?」と気づき始めたのです。というわけで、波瀾万丈の数年間を経て、E3は正式終了に。

ESAの社長兼最高経営責任者(CEO)であるスタンリー・ピエール・ルイ氏は、Washington Post紙の独占インタビューでこう語っています。

「ゲーム業界やプレイヤー、クリエイターの皆さんが、E3に情熱を持ってくれています。我々もその情熱を共有しています。

これほど愛されたイベントに別れを告げるのはつらいですが、我々の業界がファンやパートナーにリーチする新たな機会を得ることを考えれば、正しいことなのだと思います」

20年の間に涙と笑いの名シーンが数々

E3は最新かつ最高のゲームの進歩を世界に発信し、ゲーム業界にとって「文化的な試金石」となりました。

1995年にソニーは競合他社のセガサターンより100ドルも価格を抑えた初代PlayStationを発表し、ゲームの新時代を切り開きました。

2017年にはUbisoftのキャラクター「ラビッツ」と任天堂の「マリオ」がコラボしたNintendo Switch向けソフト『マリオ+ラビッツ キングダムバトル』が発表され、任天堂のレジェンド的なゲームプロデューサー宮本茂氏にその功績を賞賛されたUbisoftのダヴィデ・ソリアーニ氏が涙を流すという感動的なシーンもありました。

その一方で、E3ではゲーム会社の幹部が自分の身を犠牲にして笑いを誘うという、ややシュールな瞬間も生まれました。

2006年、後にソニーCEOとなる平井一夫氏は、PSP(プレイステーション・ポータブル)で名作『リッジレーサー』の実演を行なう際、ソフトの読み込みに手間取って壇上で気まずそうに立ち尽くした挙句、「リッッッッジレィィィサー!」と叫び、聴衆が静まり返るという伝説を作りました。

また2007年、任天堂アメリカ支社長が『Wii Fit』を披露するためにステージに上がる際、肩をすくめて皆に「My body is ready(私の体の準備はできています)」という珍妙な表現をしたのが大バズリ。ネットミームとして定着するほどの名言となりました。

こうした手痛い失敗の反省から、多くのゲーム会社は高給取りの幹部がミームにされるE3よりも、自社で独自のショウイベントを主催したいと考えるようになったのかもしれません。

とはいえ、E3はゲームコミュニティのカルチャーにとって中心的存在だったことは間違いありません。現代では考えられない、比べようもないほど偉大なイベントだったのです。今夜はE3を忍んで一杯やるとしましょう。

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