「医療費控除」はさかのぼって申請できる。初心者でも簡単・確定申告のコツ
ずっと会社員だった人は、年末調整ですむためあまり馴染みがない「確定申告」。でも、退職をして年金生活になると、確定申告が必要になります。ただ、じつは年金生活者や定年退職者の方はもとより、現役世代のサラリーマンにも「トクする」チャンスがある手続きでもあるんです。
今回は、税理士の岡本匡史さん、磯 浩之さん、西山のりこさんが監修する『知らないと損をする! 年金生活者・定年退職者のためのかんたん確定申告 令和6年3月15日締切分』(扶桑社刊)より、確定申告でトクする方法をご紹介します。
年間の医療費が結構かかったなという人は要チェック!
トクするチャンスのある手続きの代表格である「医療費控除」。
病気やケガで、申告者本人が、自分や生計を同じくする家族のために一定額を超える医療費を支払った場合は「医療費控除」を受けることができます。
控除を受けられるのは「その年に支払った世帯の医療費が10万円を超えている」場合です。ただし、申告者の総所得金額等が200万円未満なら、「医療費が総所得金額等の5%の金額を超えている」とき、控除を受けられます。
通院に利用した電車やバスなどの交通費も控除の対象になります(ただし、治療を目的としたもの以外は控除の対象となりません)。
●こんな人は「医療費控除」をしてみましょう!
こんな人は、医療費控除を申請することをおすすめします。
1:過去に医療費が年間10万円を超えたが確定申告をしていない
支払った医療費が10万円を超えていれば、確定申告で医療費控除を受けられます。5年分さかのぼって申告できるので、忘れずに申告するようにしましょう。
2:1年間で支払った医療費が家族の分と合わせて10万円を超えた
医療費は、家計が同じ家族の分も合算できます。1人分では医療費が7万円だったとしても、家族の医療費が3万円を超えていたら医療費控除を受けられます。
3:自費でPCR検査や抗原検査を受けて結果が陽性だった
自費で新型コロナウイルスのPCR検査や抗原検査を受けたときに結果が陽性だったら、医療費控除の対象になります。支払った医療費に加えて計算しましょう。
戻ってくる金額は、申告する人の所得税率によって異なります。たとえば、医療費控除の金額が20万円の場合、還付金は、所得税率が5%の人は1万円、10%の人は2万円になります。
一方、住民税は課税所得額にかかわらず、控除金額の10%分が安くなります。そのため、一般的に、世帯内に収入を得ている人が複数いる場合は、いちばん収入が多く、所得税率が高い人が、家族の分をまとめて申告するのが最もおトクになります。ただし、医療費の合計が10万円以下の場合は、世帯の中で総所得が200万円未満の人しか申告することができません。
●医療費控除って、どれくらい戻るの?
医療費控除の計算方法は以下の図のようになります。
この計算式から求められる控除額に、所得税率をかけるといくらくらい還付されるか、目安が算出できます。
たとえば、課税所得が195万円未満で医療費控除額が20万円なら、「20万円×所得税率5%」で最大1万円戻ってきます。
●医療費控除になるもの、ならないものは?
控除対象になるもの
・治療を目的に支払った医療費・治療が必要な重大な病気が見つかったときの健康診断や人間ドック費
・入院時の治療費や検査費用
・新型コロナウイルスの陽性が判明したときの自費抗原検査・PCR検査費用 など
控除対象にならないもの
・病気の治療を目的としない医療費・予防のための健康診断や人間ドック、メタボ健診の費用 ・入院時の自己都合による差額ベッド代
・インフルエンザなどの予防接種費用
・新型コロナウイルスの陰性証明のための自費抗原検査・PCR検査費用 など
医療にはさまざまな種類がありますが、医療費控除の対象になる医療費は決まっています。
基本的には、治療のために支払った分は控除の対象になりますが、病気の予防、健康増進、美容関連の医療費は控除の対象にはなりません。入院したときにかかる自己都合による差額ベッド代も対象外です。
健康診断や人間ドックの費用は、検査で病気が見つかった場合は控除の対象になります。
このように、さまざまな「医療」に関する費用が控除対象になる「医療費控除」のほかに、社会保険料控除や寄付金控除などさまざまな控除がある確定申告。『知らないと損をする! 年金生活者・定年退職者のためのかんたん確定申告 令和6年3月15日締切分』(扶桑社刊)では、申告書の記入方法から医療費控除用の領収書ポケットなどが付録としてついています。