富山県の東部にそびえる名峰・立山。主峰となる雄山、大汝山、富士ノ折立といった3つの峰からなる三連峯で、真ん中に位置する大汝山の標高は3,015mに達する。

立山が目前にそびえる室堂駅

秋の気配も深まる中、2023年は10月8日に初冠雪の発表が行われており、すでに雪化粧となっている立山だが、ふもとは鮮やかな紅葉が広がっており、インバウンドを含む多くの観光客が訪れて、コロナの影響からも徐々に脱しつつある。

観光客で賑わう室堂駅

富山県立山町の「立山駅」から黒部ダムを経て、長野県大町市の「扇沢駅」へと繋がる「立山黒部アルペンルート」は、標高3,000m級の峰々が連なる北アルプスを貫く世界有数の山岳観光ルート。ケーブルカーや高原バス、トローリーバス、ロープウェイなどで結ばれた総延長37.2km、最大高低差1,975mの壮大なルートにおいて、「室堂駅」は標高約2,450mの最高地点に位置し、アルペンルート観光の拠点地となっている。

大観台からの景色。正面に見えるのが落差350mの称名滝

室堂駅から立山を望む

大観峰から黒部平に繋がるロープウェイ。先に広がるのが黒部湖

紅葉が色づく山肌

黒部平からの風景。遠くに鹿島槍ヶ岳がそびえる

観光拠点として多くの観光客の集う室堂駅だが、いまやなくてはならないインフラと言える通信回線については多くの問題を抱えており、NTT西日本と立山黒部アルペンルートの主要運輸会社である立山黒部貫光は、喫緊の課題として、山間部での通信環境整備に取り組んでいる。

そして、通信環境整備の一環として、NTTメディアサプライが提供する充電機能付きWi-Fiルーターのシェアリングサービス「OKiRACOON(オキラクーン)」の端末を、「立山駅」と「室堂駅」に設置。9月4日よりサービスが開始となった。

室堂駅に設置された「OKiRACOON」

「OKiRACOON」は、充電機能が付いたWi-Fiルーターを1日1GBプラン660円〜で提供するレンタルサービス。マルチキャリアに対応したクラウドSIMテクノロジーが採用されており、立山黒部アルペンルートの山間部でも安定した通信が期待できる。

ベースとなる「OKiSTAND」と端末の「OKiROUTER」によるシンプルな構成で、1台の「OKiSTAND」に5台の「OKiROUTER」を搭載することができる。充電機能を備えた「OKiROUTER」のバッテリー容量は7000mAh。USB Type-C、Lightning、micro USB Type-Bのコネクタを備えており、ケーブルを別途用意することなく、スマートフォンなどの突然のバッテリー切れにも対応することができる。

OKiRACOON

利用方法が非常に簡単で、「OKiSTAND」に表示されているQRコードを読み取り、スマートフォン上でプランを選ぶと、「OKiROUTER」がスタンドから飛び出し、そのまま利用することができる。なお、初回利用時のみ、会員登録やクレジット情報の入力が必要。返却処理は、「OKiROUTER」を元の「OKiSTAND」に戻すだけで完了となる。

○■通信環境の整備が喫緊の課題

立山黒部アルペンルートのような通信環境が不安定な山間部などでの活躍が期待される「OKiRACOON」。導入にあたり「通信環境の整備はコロナ禍に入る前から大きな課題になっていた」と話すのは、立山黒部貫光 総務部 総務課 主幹の石倉豊氏。アルペンルートの大部分が国立公園内ということもあって、制約も多く、なかなか整備が進まない状況にあったと振り返る。

立山黒部貫光 総務部 総務課 主幹の石倉豊氏

一方、観光ソリューションにも力を入れているNTT西日本 富山支店の中尾俊祐氏は、「コロナ禍を経て、観光客、特にインバウンドの方がふたたび増えていく中で、通信環境だけではなく、充電環境についても不自由さを訴える声が多くなっていた」という状況から、「その課題解決に向けての有効な手段として、『OKiRACOON』を紹介させていただきました」と導入への経緯を紹介する。

NTT西日本 富山支店の中尾俊祐氏

最初に「OKiRACOON」を見たとき、「単なるバッテリーかと思っていたら、Wi-Fiもついているということで、非常に面白いと思った」という石倉氏。通信環境改善の有効な手段として高く評価している一方で、「まだサービスがはじまってから1カ月なので……」と前置きしつつ、「我々の宣伝不足という問題もありますが、お客様の反応的には少し物足りない」と現状を分析する。認知度の向上については中尾氏も「『OKiRACOON』のサービス自体は非常に良いものだと自負していますが、どうしても認知が追いついていないのが現状なので、そこは重要な課題として取り組んでいきます」とさらなるサポートを約束する。

また、通信環境の整備のほか、「人手不足の問題もかなり切実です」と訴える石倉氏は、「AIなどを活用することで、何とか人手不足を補える手段を考えていきたい」と今後の課題について言及する。しかし、ICTやDXなどを推進するためには、やはり通信環境の整備が必須。「インターネットを活用した様々なサービスを提案させていただいているのですが、そのためにはやはり十分なインターネット環境が必要になります。誰もが安心して使える通信サービスの提供に向け、通信環境の整備についても全力でサポートしていきたい」と中尾氏は力を込める。

「NTT西日本は、地域に密着した企業として、お客さまに寄り添ったサービスをこれからも提供していきたい」という中尾氏は、「富山の魅力をいかに発信できるか」を課題の一つとして捉え、「OKiRACOON」のようなサービスを活かしつつ、通信環境の整備やICTを活用することによって、「観光地としての富山の魅力をさらに向上させられるよう、サポートしていきたい」との意気込みを明かした。

雲海が広がる夕暮れ時の風景