寒い季節は、メンタルの不調を感じやすいと言われています。とはいえ、症状は人によってさまざま。メンタルの不調に気づいたとき、どこに相談すればいのか意外と知られていないと言います。そこで、うつメンタルコーチで公認心理士の川本義巳さんに、「カウンセリング」という手段について、教えてもらいました。

心を弱くしたとき、カウンセリングはいつ行けばいい?

もう10年以上前の話です。当時私は、精神科クリニックでカウンセリングを担当させていただいていました。クリニックがカウンセラーを常駐させるのは、当時かなり珍しく、ほかでは聞いたことがありませんでした。クリニックの方針で、初回はカウンセラーが面談を行い、その後診察を受けるか、カウンセリングを継続するか、診察とカウンセリングを併用するかを相談者さんと相談しながら決めていくというスタイルでした。

カウンセリングを続ける中で、驚いたことがありました。それは、カウンセリングを終わった後に相談者さんから「私はそんなに重症じゃないからカウンセリングは受けなくていいと思います」と言われたことです。

●カウンセリングに行くことは怖い?

私の中でカウンセリングは、どちらかというと医療的な治療の前に受けるものであり、治療を補助する役割だと思っていたのですが、その方は逆のイメージを持っているようでした。その後も何人かの方のお話を聞く中で、はっきりとはおっしゃらなくても、なんとなくそんなイメージがありそうだなあと感じることがありました。

これは「間違った情報を持っている」ということでもありますが、それより「カウンセリングというものがどういうものなのか、まだ一般には認識されていない」ということだと思います。そして10年経った今、少しはカウンセリングについて知られるようにはなりましたが、本質的には「よくわからない」という人も多いと思います。

たしかに街中を歩いていても、カウンセリングルームの看板を見ることはほぼありませんし、そういう広告やCMを目にすることもありません。インターネットで少し情報が取れたりはしますが、それこそ玉石混交で「どれがいいのかわからない」状態です。それゆえ「カウンセリングに興味があるけど、ちょっと怖い」という人が多くなるのも仕方がないことだなと思いますし、イメージが独り歩きして「重症になった人が受けるもの」と思い込む人が出ることもあるでしょう。

●初期症状のときこそカウンセリングが有効

改めてお伝えしますが、カウンセリングは初期対応にとても有効です。なので「最近気分がすぐれない」とか「憂鬱な感じが続いている」ということがあれば、カウンセリングを受けていただくことをおすすめします。なぜなら、初期段階であればカウンセリングで改善する見込みが高いからです。ここを放置すると、うつ病や適応障害といった病気になりかねません。

ただ、ここでまた「実際誰に頼めばいいのかわからない」という壁にぶちあたるんですね。カウンセラーといってもいろんな経歴の方がいらっしゃいますし、カウンセリグ自体が「資格がないとできない」という仕事でもありません。

なので、必ずしも「こういう人でないとダメ」とは言いきれないのですが、安全性を考えるとやはり心理系の資格(臨床心理士、公認心理師)を持っているかどうか、カウンセラーとしての実績がどれくらいあるか、といったところは目安にはなると思います。

またクリニックがカウンセラーを置いている場合がありますし、心理系の大学が外部の人も利用できる相談室を開設したりしていますので、そういったところは比較的安心かなとも思います。

●まずは気軽に相談してみる

最後にカウンセリングの敷居を高くしている条件に価格があります。これもカウンセラーによってもバラバラで、50分で数千円するところもあれば、数万円かかるところもあり、かなり金額に幅があります。だいたい1万円前後が多いようですが、これも保険が使える病院受診ならもっと安価になってしまうので、敬遠される一因にはなっています。自分が納得できる金額ならば一度相談してもいいと思います。

現在は、国家資格としての公認心理師ができ、公認心理師のカウンセリングも保険適用できるようにはなってきましたが、まだまだ全体的には実費診療が多いようです。コストを考えると、公的機関の相談窓口にも有資格者がいるようなので、まずはそういったところに相談に行ってみるのも手です。

もしも、「この症状で行っても大丈夫かな?」と思っても、心配無用です。少しでも気になることがあれば気軽に行ってもいいのです。相手は話を聞くプロなので、1回話を聞いてもらうだけでラクになることもありますし、病院受診をした方がよければそういったアドバイスもしてもらえると思いす。メンタル面の不調を感じたら、「心の健康診断」のような感覚でカウンセリングを検討していただけたらと思います。こういった選択肢があると覚えておくだけでも、気持ちが変わってくるのではないでしょうか。