ホテルは客に寄り添う?(ヒルトンの広告動画から)

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「とまるところで、旅は変わる」などと題し、アメリカの大手ホテルチェーン「ヒルトン」が自社のホテルと旅館のような施設を比較した動画をユーチューブに投稿したところ、X(旧ツイッター)上で批判が相次ぐ事態になっている。

日本の旅館をけなすのかといった声で、この動画は、その後に非公開となった。ヒルトンでは、「特定のものを貶める目的でなかった」と取材に説明したが、「不快な思いをさせてしまい、お詫び申し上げたい」と謝罪した。

「旅館は融通が利かないような演出」と批判が出て

旅館のような施設のフロントで、着物姿の女将らしき年配の女性が若いカップルを出迎え、笑顔でこう話し始める。

「次に、ご入浴は、5時から11時までになります。ご夕食は、6時にお部屋にお持ちいたしますので、必ず9時までに食べ終えて下さいませ」

カップルは、きょとんとした表情をしている。

「朝食は、7時から10時まで。ラストオーダーは9時半。8時ごろは大変混み合います」

カップルが顔を見合わせ、困ったような表情になると、動画にナレーションが入った。「せっかくの休みなのに、まったくゆっくりできないとき...」。すると、カップルがヒルトンの高級ホテル「コンラッド」のラウンジに立つ風景に、シーンが様変わりする。高層階から夜景が広がり、女性が「きれい〜」と感嘆し、2人で自撮りも始めた。

そこに、男性スタッフが来て、「お客様、ごゆっくりされるならディナーの時間をずらしますよ」と声をかける。喜んだ2人がレストラン内を進むと、「とまるところで、旅は変わる」とナレーションが入り、2人が白ワインで乾杯をするシーンで30秒の動画が終わっている。

この動画は、「予定でいっぱいの休暇」篇との副題が付いて、11月9日にヒルトンの公式ユーチューブで配信された。ところが、13日になって、旅館やホテル関係者からX上で、「日本の旅館を舐めるな」「演出が品性に欠ける」など、旅館は融通が利かないがホテルは客に寄り添うような演出はいかがなものかと批判が出て、動画が拡散する騒ぎになった。

「特定のものを貶める目的でなかった」とヒルトン釈明

もっとも、「欧米ではよくある広告手法なのだろう」「アメリカならシャレでウケる」などと、文化の違いを指摘する声もあった。

投稿した動画について、ヒルトンの広報担当者は11月15日、J-CASTニュースの取材に対し、次のように説明した。

「特定のものを貶める目的でなく、ヒルトンとして、心温まるホスピタリティをアピールするための広告動画でした。結果的に、旅館に対してネガティブなイメージを与えたように取られ、不適切な表現だと指摘を受けました。お客様に不快な思いをさせてしまい、お詫び申し上げたいと思います」

アメリカで22年に始めたグローバルマーケティングキャンペーンの一環といい、今回の動画は、ブランドムービー5種類のうちの1つだとした。

「日本と中国で展開しており、アメリカ国内のキャンペーンと似たテイストになってしまったことは否めません。広告代理店が入っていますが、動画を配信したのは私どもの責任です」

ネット上で騒ぎになって、15日までに動画を配信停止にしたことも明らかにした。ヒルトンの公式サイトなどで説明や謝罪をするかについては、まだ決まっていないとしている。

(J-CASTニュース編集部 野口博之)