日本では5組に3組がセックスレス、5組に1組が不妊に悩み、また50万人近くが不妊治療を受けているといわれています。イラストレーターのオヨネさんもかつて、その1人でした。今回は、セックスレスから不妊治療に進んだ際の「事件」について。

痛い思いをするのは女性ばかり…!<オヨネの妊活いばら道32>

セックスレスや多嚢胞性卵巣症候群などの困難を経て2人目妊娠を目指すも、人工授精では難しかった私たち夫婦。
通っていた産婦人科から不妊外来へ紹介状を書いていただき、転院しました。
夫婦でそれぞれ様々な検査を受けながら、とくに私は多種にわたる投薬が長い期間続き、心身ともにボロボロになっていました。

●自分自身に注射を打つなんて!

その中でもよく覚えているのは「自分に自分で注射を打つ」というもの。
アレルギーや大きな病気なども今までなく、自己注射の経験がなかった私はめちゃくちゃ緊張しました。
不妊治療を先にしていた先輩や友人の話でなんとなくは聞いていましたが、ついに自分にもこのときが来たかと思いました。

口から飲むホルモン剤でおなかの中の卵子を育てたあと、排卵を誘発する薬を注射するというものです。

●注射の打ち方を練習する説明会で事件は起こった

もちろんいきなり「えいやー!」とは打てないので、注射の打ち方を練習する「説明会」に予約して参加しました。
看護師さん1人とこれから自己注射をしていくであろう3人の患者が席につき、緊張する3人に看護師さんが優しく詳しく実践して説明してくれました。

まず小さなビンを渡されました。
「薬の入った小さなガラスビンです。それを両手でパキっと割ります」と説明を受け、緊張しながらも看護師さんの真似。私以外の二人はうまく割れました。

が、しかし。私がどんなにがんばって割ろうとしてもビンは割れませんでした。どれだけ自分は不器用なのか? と心配になる程。
ビビりすぎて力が思った以上に入らなかったか? 力のかけ方が悪いのか? 焦りながらも、もっとがんばって力を入れると…。

パキ!
「割れた!」

と同時にピュー。

なんと割ったガラスが運悪く指に当たってしまったのです。指をガラスで切ってみんなの前で派手に出血。
大した出血ではなかったですが、みんなができていることなのに、自分は下手すぎてとても情けなく、慌ててしまいました。

●なかなか勇気が出ない

血はすぐ止まったので気を取り直し説明会は再開。新たに渡された袋をあけると注射器が入っていました。
人生で初めて触る本物の注射器に少しテンションも上がりつつ…。
練習ではホルモン剤を実際に打つことはできないので、人の体液とほぼ同じ成分の生理食塩水を注射で吸ってスタンバイしました。

いざおなかを出して、打つときはカーテンで仕きられた半個室で一人一人丁寧に看護師さんにチェックしていただきました。

自分の番になり、細い針とはいえ自分自身に刺すのは本当にドキドキ。
なかなか勇気がでず躊躇しましたが、気合いを入れておなかをつまみ、エイっと注射針を刺してなんとか生理食塩水を注入しました。

こ、こんなドキドキを毎回味わうなんて…ととても疲れたのを覚えています。

●メガネ(夫)は痛いことしなくていいな

その後毎月、決まった時間に何日か続けて打つので自己注射自体は慣れましたが、おなかの皮膚が内出血で何か所も青くなってナーバスになったものです。

メガネ(夫)はとくに投薬や処置等がなかったのでよかったのですが、
「この人は決まった時間に毎日お薬を飲むこともなく。副作用に悩まされることもなく。注射や痛いこともなく…気楽で不妊治療についても考えることも少なくていいなぁ…」
なんて、思ってもしょうがないことをとても考えてしまいました。