人生100年時代、第二の人生をガラリと変える人もいます。結婚、子育て、離婚、病気の発症を経て、昨年からスペインへの単身留学を送っている53歳のRitaさん。今回は、スペイン生活での「持ちもの」についてつづってくれました。

スペイン生活での「最小限」の持ちもの

スペイン生活は、まずは1年間の語学留学としてスタートしました。荷物はスーツケース1つと大きなリュックサック1つ。当時、日本で賃貸契約していたワンルームマンションは解約。実家に荷物の保管をお願いすることも控えたかったため、今後の「人生の持ちもの」として最小限の量にまとめることにしました。
それまで働いていた会社を退職した日にスーツもヒールも処分し、食器やスポーツ用品は知人に譲り、家具・家電は低価格で中古で売りました。それまでどうしても捨てられなかった洋服や書籍などもありましたが、「これ飛行機で持って行くの?」と自問自答すると、あっさりと整理できました。

【写真】なんとか詰め込んだスーツケースの中身

「生きて行くのになにが必要か」「1人で持ち運びできる量」を基本とし、文具1つでも大きいものより小さいもの、思い出はできるだけ写真に収めました。

●人生の持ちものとして私が残したもの

衣類はどうしてもかさむので、圧縮袋を8枚利用してギュウギュウに詰めました。最後はスーツケースに乗っかり体重をかけてなんとか施錠。少しでも隙間をつくるために、重量のある靴は履き、季節外れでも厚めの上着を羽織って、なんとか出国しました。

・実際に日本から持参したもの

【洋服】夏物5枚、冬物5枚、スカート4枚、ズボン3枚、カーディガン2枚、コート2枚、下着類各7枚

【パジャマ】夏物1枚、冬物1枚

【靴】スニーカー2足、パンプス2足、サンダル1足、スリッパ1足

【タオル類】大1、中3、小5、風呂敷1

【バッグ】リュック小1つ、エコバック風2つ、斜めがけポーチ2つ

【化粧類】ポーチ1つ分

【文具+裁縫+工具】ポーチ1つ分

【薬+アクセサリー類】ポーチ1つ分

【紙類】各契約書、A4ノート3冊、スペイン語文法本1冊、封筒5枚、折紙2袋、思い出のカード

【他】パソコン、携帯、充電器など

これらは、すべて私のこれからの人生を送るため、厳選した持ちものです。

●買いたすものはスペインで手に入るものに

これだけあればきっと大丈夫! と思っても、実際にスペインで生活を始めると、どうしても買いたす必要のあるものが出てきました。冬を越すことが想像以上に寒かったり、文具や化粧品は消耗していきます。日本ではメーカーにこだわった品々も「スペインで手に入るもの」に限定し、まずは大量買いせずに1つずつお試しで購入。私は肌質上、合わない化粧品もときにありますが、取りあえずいちばんナチュラルな商品をいくつか試し、なじむものを見つけました。

この「現地で購入したものでも生活ができる」という実感は、想像以上の安心感を与えてくれ、ここでどうにか生きていけそうだという気持ちが膨らみました。

●想像と違かった日々の洋服

日本からあれだけ吟味して持って来たのに、じつはあまり使わなかったものも、ちょこちょこありました。スペインの街は石畳が多くパンプスでは足裏がすぐに痛くなり、またおしゃれすぎるスカートは履く機会もありませんでした。

一方で、念のため入れておこうと思って入れた短パンが大活躍。ヒールはスニーカーに、スカートは短パンに。スペインに身を移して30数年ぶりに学生となると同時に、自分の身なりも変わっていきました。日本にいた頃はこの歳で短パンを履くことになるとは思ってもいませんでした…。結局日本では想像していなかったようなものを身につけることになるかと思うと、洋服に関しては日本からわざわざがんばって持ってこなくても、現地調達した方がよかった気がしています。

ただ、万が一私のように不必要なものを持って来てしまったとしても街中にはリサイクルショップも多く、不要な服やバッグも引き取りが可能。この1年間利用しなかったものはお店や知人に譲ることにしました。常に日本を出国したときの荷物量を意識し、なにかを購入したらなにかを整理することを心がけています。

●ときには日本の生活用品が恋しくなることも…

大きなこだわりをなくしてスペインで買えるもので暮らしていこうと心がけているものの、家族から「日本からなんでも持っていくよ!」と言われると、やはりどうしても笑みがあふれてしまいます。使い慣れた医薬品、生活用品、好きな食べもの…欲を言えば、これもあれも。でも、食料品に関しては食べ終わってしまった後の虚しさを考えると、日本に帰国したときの楽しみにとっておきたい気もします。

それにしても上質で豊富な日本商品は世界でも有名です。なにか目新しいものを持っていると「それ日本から持って来たの?」とよく聞かれます。日本に旅行経験のある留学生仲間が「日本は買い物天国だよ!」とみんなの前で絶賛してくれたときは、母国を誇りに思えるひとときでした。

●スペイン生活1年、不便さも楽しめるように

日本を出国して1年後に、スペイン国内で転居をしましたが、このときもなんとかスーツケース1つと大きなリュックサック1つで移動。「ものが持てない状況」をつくることで、本当に必要なものを考えながら生活するようになれました。また、スペインには洋服もスポーツ用品も聞き覚えのあるメーカーが多く、日本人にとってはなじみやすい環境かと思います。

文字通り「住めば都」。日本と比べると不便さを感じてしまうこともありますが、その不便さでさえも新たな発見だと思い楽しんでいます。