高齢の親が住む家を見ると、ものが多かったり、探しものが見つかりづらかったり、不便そうだと感じることはありませんか? それは、年齢を重ねるとだれもが向き合うことだと、整理収納アドバイザーの原田さよさんは語ります。今回は、50代から始めておきたい、暮らしをラクにする収納の見直し方を教えてもらいました。

50代以降の「収納」をラクにするコツ

片づけをする際、どこから手をつけていいのかわからない場合、以下の3つを意識するとはかどりやすいということは、これまでの連載でもお伝えしてきました。

【写真】リビングに置くべきよく使うもの

【片づけやすい3つの基本】

□使っている場所の近くで収納する

□なにかをするとき使うものを、グループでまとめて収納する

□使用頻度が高いものほど、使いやすい場所に置く

今回は、この基本をふまえたうえで、もっとラクになる収納の3つのコツについてお伝えします。

(1)面倒くさくない収納にする

親の住む家の様子が、年々変わってきていると感じたことはありませんか? 昔よりも、置きっぱなしになっているものが増えている。そのせいで、欲しいときに欲しいものがさっと見つからない、取れない、というようなことです。ものの量が多すぎるということもありますが、身体が動かしにくかったり面倒に感じたりという、年齢による変化も関係しています。これは私自身にも言えることです。

たとえば、収納してあるものを出すのにいくつもアクションが必要だと面倒になり、出しっぱなしになりがちです。収納の扉や引き出しをあけ、中のものを取り出し、使ったあと元へ戻して扉(引き出し)を閉める。若い頃は大して面倒でもなかったこの動きが、だんだんおっくうになってくるのです。

おそらく頻繁に使うものほど、出しっぱなしになっているはずです。逆に言えば、頻繁に使うものなら出しっぱなしでもいいように置いておくのがいい、ということになります。ただし多すぎると使いにくいので、出しておくのはよく使うものだけにします。収納の基本(使っている場所の近くで、なにかをするとき使うものをグループでまとめて、使用頻度が高いものほど使いやすい場所に置く)を意識してみてください。

(2)自分も家族もわかりやすい収納にする

よく使うものをまとめて出しておく場所は、家族がふだん長く居る場所の近くにするのがおすすめです。年齢を重ねるにつれ、いったん座ったら立ちたくない! という私のような人もいらっしゃるでしょう。

「見えていること、種類でまとまっていること、手が届きやすいこと」を意識して収納していきます。

安全優先。わが家は狭く、高齢の親もいるので、つまずかないようリビングテーブルや敷いていたラグを処分しました。よく使うものは、ソファの側にマガジンラックを置いてまとめています。テレビやエアコンのリモコン、ハサミや紙やペン、BOXティッシュや“孫の手”も入れています。リビングにテーブルがあったら、そこにまとめるのもいいと思います。

よく使うものをまとめるための収納は、まず余っているカゴや箱などを活用してほしいです。収納ワゴンなどを先に買うのは控え、できるだけものが増えないようにしましょう。

一方で、使うけれど頻繁に出し入れしないものは、収納や引き出しの中にしまいましょう。出ているものが増えると「これも置いといていいか…」となりがちだし、探しものがまた増えるかもしれません。

□頻繁に使うものは、まとめて机やカウンターの上など、普段よくいる場所の一角に

□頻繁に使わないものは、収納や引き出しのなかに

いずれも、種類や目的ごとにざっくりまとめて見えるようにしておくことと、使用頻度の高いものほど手が届きやすい位置に置いておくようにすれば、年齢を重ねてきても、家族みんながわかりやすいです。それでも散らかってしまう場合は、出ているものを見直して、使う頻度に合わせて分けてみてください。

(3)危なくない収納にする

危ない収納とは、無理な姿勢を取らないと出し入れできないような収納です。椅子や脚立を持ってこないと手が届かない場所、天井が低くて腰が痛くなる屋根裏収納や階段下収納、窓がなく小さな電灯が頼りの納戸などは、だんだん使いにくくなってきていませんか。また、腰を曲げてかがみこまないといけない床下収納なども、辛くなってきていると思います。

若い頃ならひょいとできたことも、年齢を重ねるとそうはいかなくなってきます。私は五十肩で肩が上がらないこともありましたし、最近では筋力が衰えたのかちょっと背伸びを続けるとグラグラします。腰痛持ちではないものの、下から重たいものを持ち上げるのが辛いし、足に落としたら怖い! と思うこともあります。

もし、高い位置や低い位置に収納するなら、使用頻度の低いものに。たまに使うけれど重たいものであれば、高すぎず低すぎずの、肩から腰の位置あたりまでの場所に置くほうが安全です。

身体がしんどくなってきても欲しいものがすぐ取れて、使った後も戻しやすい。家族みんなが覚えやすく、危なくもない。そういう収納を目指したいので、私も時々見直しています。安全で暮らしやすい部屋にしていくのが、50代以降の片づけでは大切なことだと思います。

 

原田さよさんの書籍『50代はやめどき、捨てどき、楽しみどき』(扶桑社刊)が発売中。