W杯4大会出場を果たしたサッカー選手・長友佑都さんの専属シェフを務め、アスリートたちを「食」の面から支えている加藤超也(かとう・たつや)さん。加藤さんによれば「一流のアスリートたちはパフォーマンスを維持するために『食』を大切にしている」のだとか。

アスリート専属シェフに聞いた!サッカー長友選手のすごさ

10月に『今日もお疲れさま!超回復めし』(主婦の友社刊)を発売した加藤さんに、これまでの経歴や長友選手の食のこだわり、さらには“一流の人の食べ方”についてお話を伺いました。

●パフォーマンス向上のために追求したのは「食」

加藤さんが食を追求し始めたきっかけは、自身が働くイタリアンレストランにサッカー元日本代表・中澤佑二選手が訪れたことに始まります。

「前身は上場企業のサラリーマンでしたが、“なにかをもって自分を表現したい!” と強い思いもあり、イタリア料理のシェフに転身しました。そんなある日、自分が働くお店に食事に来たのが中澤選手です。中澤選手の“豚肉はグリルして脂身をカット”、“サラダは塩とオイルだけの味つけに”などこと細かくオーダーする姿勢に、一流のアスリートたちがいかに『食』に対して高い意識を持っているかを知り、衝撃を受けました」(加藤さん・以下同)

「もっと体の機能面を高める食について追求したい!」と、考えた加藤さんは仕事と並行しながらアスリートのパフォーマンス向上のための食事を猛勉強。寝る間を惜しんで、食に関する資格を取得しました。

そんな折、長友選手がケガの多さから様々な食事方法に取り組んでいることを知り、「料理人の立場から体を変えていきたい」と、直接交渉を試みます。

「(無我夢中だったので)そのときのことは詳しく覚えてないのですが(笑)、長友選手のSNSに“食の面からサポートをしたい”とDMを出しました。翌日、早速マネージメント担当の方から返事があり、本人とお会いすることに。そこで自分は、長友選手の食事にフォーカスを当てて体改革に取り組んでいる姿勢に共鳴したことと、料理人の立場から食の大切さを伝えながらも体を変えていきたい、というお話をしました」

「医食同源」という言葉があるように、毎日の食事は薬による治療と同じで、自分に合ったものを選べば体は上向く。加藤さんの信念は長友選手の哲学とも一致し、対面を経て無事に長友選手の専属シェフを任されたそうです。

ちなみに、食の面から体を支えたいとアプローチしてきたのは、加藤さんが初だそうで、「これだ!」と思ったときに行動に移した行動力も抜群ですが、そのアプローチに対して即レスをした長友選手の判断が早いのも驚くべきところです。この直観力は、「できる人」がもつ共通の能力かもしれませんね。

●一流の人が求めるのは、翌日に疲れを残さない食事

加藤さんが、長友選手のパフォーマンス向上と疲労回復のために心がけている食事は、「高タンパク×良質な脂質」。それに加えて、味はもちろん、食欲をかきたてられるおいしそうな見た目にもこだわっているそうです。

「アスリートは肉体だけでなく、批判などで精神的な疲労にもさらされています。そんな心と体を癒やすのが毎日の食事。だから、疲労回復に欠かせないタンパク質のほか、良質な脂質などの栄養素をしっかりととりつつも、心と体を癒やすおいしさにもこだわっています。

機能面だけ追求し、ゆでたブロッコリーとパサパサの鶏胸肉のような料理では食べた気になりませんし、体も受けつけなくなりますから。“体のために義務感で食べる”のではなく、食事をする楽しさや豊かさを味わうまでが、真の『回復めし』だと思います」

毎日の「食」を大切にされている長友選手ですが、加藤さんへのリクエストで多いのが「魚介類」なんだそう。

「好き嫌いはとくにないのですが、魚のリクエストが多いですね。とくに『たこのカルパッチョ にんにくソース』は、毎日食べたい! というほど、お気に入りの1品です」

●長友選手もお気に入り!「たこのカルパッチョにんにくソース」

蒸しダコをスライスして、レモンとニンニクの効いたたれをかけるだけ。高タンパクで低脂肪でありながら疲労回復や抗酸化作用のある栄養素がとれて、お疲れ気味の人におすすめです。

【材料(2人分)】

蒸しダコ 140g
ニンニクのみじん切り 2かけ分
オリーブ油 大さじ2と1/2
しょうゆ 小さじ1
パセリのみじん切り 適量
レモン 1/2個

【つくり方】

<下準備>

・レモンは半分に切り、片方をレモン汁として使う。もう片方はくし形切りにする。
・タコは薄切りにする。

(1) ソースをつくる

小鍋にオリーブ油とニンニクを入れてごく弱火で熱する。ニンニクがきつね色になったら火を止め、しょうゆとレモン汁を加える。とろりとし白濁するまで鍋をゆすり、パセリを加えてなじませる。

(2) 盛りつける

器にタコを盛り、(1)をかける。レモンを添える。

●一流の人は、自分の体が求める食材・量を察知する

加藤さんと長友選手のつき合いは約8年。プレイ中の強打により肺に穴があく肺気胸になったときも、驚異の回復力で復活を見せた長友選手ですが、長友選手自身も「高タンパク×良質な脂質」の食事が大きかったと考えているそう。

「食事のサポートに入る前、とくに2015年のシーズンはケガが多かった長友選手ですが、食事を見直し始めた2016年から今に至るまで、僕の知る限りでは筋肉系のケガはほぼありません」

また、加藤さんが長友選手と知り合った頃に毎日驚かされていたのが、長友選手の「本能的な察知能力」です。

「食事による体の変化を察知する感覚は、非常に優れています。『今日は○○を食べたい!』って求めてくるメニューを後から振り返ると、栄養学に見ても理にかなったものをチョイスしているんです。

食べる量や順番もその日の自分のコンディションで決めていて、たとえば炭水化物も必要量をわかっているので、食べすぎることがありません。長友選手と知り合って8年ほど経った今でも、人として尊敬しています!」

食で心と体を整えているからこそ、高いパフォーマンスを安定した形で継続できる。そんな長友選手のブレない姿勢は人柄にも表れていますよね。

加藤さんが提案する「回復めし」からも、長友選手の心と体を整えるヒントをもらえそうです。一流の人の強さの秘密を、食から探ってみてはいかがでしょうか。