作家・作詞家として活躍する高橋久美子さんによる暮らしのエッセイ。ハロウィンが近い今、外でお酒を飲むことについて、つづってくれました。

第109回「パーティとお酒」

ハロウィンというものが日本にも浸透して10年くらいになるだろうか。私はいまだに、はしゃぎ方が分からずにいる。店頭に並んでいるので、かぼちゃのケーキを食べてみたりはするけど、渋谷にくりだして仮装したりする弾けた友人がいない。

パーティが得意か不得意かといわれると、不得意に入るだろう。気心知れた友人たちと集まるのは楽しいけれど、それも少人数が希望。大人数になったら、誰と何を話したらいいだろうかと、みんなが気を遣い合っているのが分かる。優しい世界だなと思いつつも、帰って「ちかれたー」ってなっていることも多い。大人数のときは、UNOとかトランプとかカードゲームをするのが平和でいいよ。

コロナ期間中を経て、不特定多数で様子を見合う「はじめまして〜」な会が、ますます苦手になった人も多いのではないだろうか。正直、ここ数年あれがなくて気楽でした。

若い頃は「友達の友達がDJをするから来て」みたいなパーティに参加することもよくあった。行くねって言っていた人が来てなくて、結局はじっこでZIMAを飲みながら踊った。

音楽があれば一人がむしろ気楽でいいけど、よく知らない人のホームパーティに丸腰で参加してしまい「ですねー。あー、わかりますー」と、共通の話題を探して相槌をうつ時間たるや。

初対面であたふたしないっていう面では鍛えられた気がするけれど。

●珍しく、羽目を外す夜もある

さて、2023年、コロナをサンドしたからなのか、40歳を突破して落ち着いてきたからか、あんまりそういう無造作なパーティに誘われなくなった。パーティって言葉事態、もしかして死語でしょうか。付き合いで…みたいのがない世界は平和だなと思う反面、予期せぬ出会いがないのは少し寂しかったりもする。

とか思っていたら、先日イベントの打ち上げで3軒はしごして、最後にはタクシーに押し込まれて家に辿り着くという出来事もあった。そんな夜は、みつをの「人間だもの」が沁みます。人に大迷惑をかけない範囲で、たまには羽目をはずすこともいいじゃないか。そう考えると、仮装して盛り上がるハロウィンも、好きな人にとっては一大イベントなんだろう。

●じつは若い世代のほうが飲みに対して堅実かも?

私の肌感覚では、23時を過ぎた渋谷で飲んでいるのは40代以上が殆どな気がする。20代の堅実でマナーの良いこと。基本、調和を重んじる優しい子が多いですよね。

SNSなんかを見ていると、そんなことないよという界隈もあるんだろうけど、私達の頃を思うときちんとされている方が多い印象だ。お酒を2杯で止めて、22時には「そろそろ帰りますね〜」っと、しっかりした足取りで帰っていく。頼もしいよ。

23時、見渡せば居酒屋には40代以上しかいないじゃないか…。

そもそも、アルコールを入れなくても楽しく会話できるのが人間の正しい姿だと私も思う。飲んで話しても翌日は殆ど覚えてないし、会話が良い方向へと深まることもないと、これまでの経験から言えるもの。飲みニケーションも一理あるけど、まだお天道様の高い時間帯に話を進められてこそプロだとも思う。とはいえ、お酒の席は楽しい。一年に一回くらい、羽目をはずして飲むことも許してね。

●ほどよく飲む日を楽しめるのも40代

おいしいお酒を少し飲んで早めに帰ることに成功した日は、とても幸せだ。

先日、友人と食事をして季節の日本酒をお酌しあいながら、ゆっくりとその美味しさをかみしめた。日本酒おいしい季節だねえ。

「徳利もう一本いっとく?」

「うーん、今日はもう帰りましょう」

彼女も40代である。

「そうやな、また今度にしましょう」

その日は、まだ早い時間に帰ってきた。帰ってから一本エッセイが書けそうなくらい余裕な飲み方だった。話した会話も、お酒の銘柄も、味も、覚えている。

もうちょい飲みたいな、の手前で帰ること。いやあ、それができたらプロです。そして、また近いうちに健康的に飲むといいなと思うのだ。

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