近年、JR各社を中心とする鉄道会社は、通勤形車両の改良を進めています。ここ数年で登場した新型車両には、それまでは見られなかった設備や性能も。今回は、JR西日本の最新型323系の特徴を紹介します。

立客を意識した袖仕切り

 通勤形電車といえば、ロングシートの座席とつり革以外はほとんど設備もなく、殺風景な車両というイメージがありましたが、近年はサービス改善の動きが顕著です。フリーWi-Fiや空気清浄器、トイレが設置されるなどしています。

 そうした最新の通勤形電車はJRでも取り入れられています。今回はJR西日本で2016(平成28)年に営業運転を開始した「323系」を取り上げます。


JR大阪環状線と桜島線(JRゆめ咲線)で使われる323系電車(安藤昌季撮影)。

 323系が走る大阪環状線は、323系導入以前においては、4扉通勤形の国鉄型103系・201系と、3扉近郊形の221系・223系・225系が混在した路線でした。扉数が異なると、整列乗車がしづらい上に、ホームドア導入の妨げになります。そこで323系は、国鉄型車両を置き換えるべく3扉で導入されました。

 系譜としては、103系から続く通勤形であることもあり、大阪環状線のラインカラーであるオレンジバーミリオンの帯をまとっています。

 新機軸として、鉄道総研が開発した空転制御システムを搭載しています。これは主電動機の電流情報から、車輪の空転を感知して防止するもので、車両の加速力と乗り心地の向上に寄与しています。

 特筆すべきは接客設備です。座席と側扉を仕切る一部の袖仕切りに、クッション性の高い腰当てが設置されており、立客がもたれかかることができます。袖仕切り自体も、上から見ると三角形であり、肘を置きやすいつくりとなっています。

新幹線よりも広い座席!?

 つり革や手すりも大型化され、緊急時にも掴まりやすい構造に。車内照明も、灯具が天井と一体化しており、車内に影が落ちにくいよう、凹凸のない構造となっています。光源も天井面への反射により、室内が明るくなる設計です。また女性専用車は、照明の色を変化させて、分かりやすさを増しています。

 車端部の貫通扉はアシストレバー付きで、小さい力でも開けられます。


323系の車内(安藤昌季撮影)。

 座席については、通勤形電車でトップクラスとなる1人あたり47cmを確保。新幹線のN700S普通車でも、座席幅は2人掛けが44cm、3人掛けの中央席でも46cmであることを考えると、新幹線以上の座席幅です。

 47cmは同世代の通勤形よりわずか1cm広いだけなのですが、筆者(安藤昌季:乗りものライター)の実感としては、隣りに人が座った際の圧迫感は明らかに軽減されていました。座席のクッションにSバネを採用したことで、近年流行っているウレタン製でバネが入らない座席よりも適切な弾力があり、座り心地は通勤形でトップクラスでしょう。

 床からの高さは45cm。201系の42cmより高くなっており、お年寄りでも立ちあがりやすくなっています。

 また、17インチ液晶ディスプレイを1両辺り16か所も搭載しています。車両間の貫通扉の上にも設置され、混在時でも停車駅などの情報が見やすくなっています。

 車いすやベビーカー用のフリースペースは、各車両に1か所ずつ設置。優先席には座席間を仕切る肘掛けも備えられていて、快適性と掴まりやすさを両立しています。ただ、JR東日本やJR東海のような「床面の色替えによる優先席表示」は行われていません。

 323系は大阪環状線のほか、桜島線(JRゆめ咲線)で運用されています。本系列をゆっくり眺めたいなら、西九条駅始発の桜島線内折り返し電車に乗ると、混雑具合も少なく楽しめます。