『十番右京』社長が語った、麻布十番に大人が引き寄せられる理由
お洒落で上品な麻布十番の魅力にいち早く気付き、『十番右京』を皮切りに、いまや麻布十番に3店舗を展開する岡田右京さん。
港区の特性をつかみながら、この街にこだわり店を営む岡田さんに、麻布十番という街の魅力を聞いてみた!
麻布十番には、夢のような出会いや経験への扉がある
もはや麻布十番を代表する一軒ともいえる『十番右京』。
2011年7月にオープンした同店は、その4ヶ月後には予約の取れない人気店となる。
入口付近には著名人が壁に書き残していったサインが並ぶ。石橋貴明さんが「のりたけ」と書いたお茶目なサインや、女優・鈴木砂羽さん、観月ありささん、浜崎あゆみさんなどビッグネームばかり!
爆発的な人気のきっかけとなったのが「トリュフたまごかけご飯」や「和ダレのフォアグラご飯」など、高級食材を使った写真映えするメニューだ。
これらのメニューがインスタグラムなどのSNSで話題を呼び、“右京”の名は瞬く間に広まった。だが、それらの価格を見ると、敷居の高い高級店と比べ、圧倒的にリーズナブルなことに驚く。
この店の仕掛け人であり、オーナーの岡田右京さんは、出店する前に徹底したマーケティングを行った。
そこで狙いを定めたのが、当時は今ほど市民権を得ていなかった“港区女子”だ。
「麻布十番は元麻布や広尾といった高級住宅街エリアに隣接していて、品の良いセレブにとっての下町的な感覚が残る街でした。
さらに、外資系の会社や大使館も周辺に点在していることからインターナショナルな空気も混在する。
加えて、六本木や青山、恵比寿といったエリアにも気軽に行ける距離とあって、華やかなライフスタイルを求める女性にとっても居心地が良くアクセスの良い場所でした。
そこで、女性が喜ぶ“オシャレ居酒屋”を展開したら流行ると考えたんです」
岡田さんの戦略は見事に的中し同店は大盛況。
さらに『歌京』、『十番右京ナチュールスタンド』をオープンさせるが、いずれも場所は麻布十番を選んだ。
「僕が麻布十番にこだわったのは、この街に20年近く住んでいて愛着があったという理由はもちろんですが、実際にこの街で商売をやってみて、あらためて街の魅力に取り憑かれたんです。
この街にいると、近隣のテレビ局に出入りする芸能人や、アーティスト、上場企業の社長と知り合えたりするなど、夢かと思うような出来事が日常的に起こるんです。他の街にはないことです」
坂本龍一が来店し、中山美穂が熱唱……。そんな光景が当たり前にある
それを最も象徴する例が、『歌京』での光景だろう。
2軒目利用できるような店が少なかった麻布十番に商機を見出し、深夜の遊び場として、ハイエンド向けの“懐メロバー”を2014年にオープンした。
店内には昭和から平成にかけてのJポップが流れ、「ドン ペリニヨン」や「ルイナール」「オーパス・ワン」といった超高級シャンパーニュやワインが手軽な値段で堪能できるとあって、著名人の客にも支持され、店内はいつも賑わっている。
「印象に残るお客様はたくさんいますが、今年3月に亡くなられた坂本龍一さんや、小室哲哉さんが来てくれた時はびっくりしましたね。
ほかにもアーティストの広瀬香美さん、俳優の藤原竜也さん、人気漫画『ワンピース』の作者・尾田栄一郎さんも遊びに来てくれました」と、錚々たるビッグネームが次々と飛び出す。
これを証明するかのように、来店した著名人のサインが至る所に書かれている。そこには、アスリートや会社経営者、実業家などメディアで目にする名前も多く、同店の底知れなさを表している。
「著名人がプライベートで来てくれるだけでも嬉しいのに、気がつくと一般の方と混じって楽しんでいたりする。
坂本龍一さんが来てくれたときは、カウンターに座って、ピアノを弾くように指を滑らかに動かしていて格好良かったですね。中山美穂さんや氣志團の翔さんはカウンターに入ってノリノリで歌ってくれた。
いずれも、一般のお客様がいる時にですよ。凄いでしょ(笑)。この街は、肩書きや立場を忘れさせてくれるところがあるようです。そこが、僕に限らず、多くの人を惹きつけているのかな」
こうした現象が成り立つワケを聞くと、“麻布十番ならではの客層”のおかげでは?と推察をしてくれた。
余裕のある粋な大人が集まる。だからこそ麻布十番は誰もが“素”の自分になれる
「港区という場所柄もありますが、遊びに来ている一般の方も、それなりの方たちが多いんです。
一流企業に勤める近隣の方々、六本木などの繁華街でひと通りの遊びを経験して酸いも甘いも知った方、すでに成功を収めて悠々自適に暮らす方々など、裕福な大人たちがご近所感覚で遊びに来る。
自分に余裕のある、そういう方々は隣にいるのが有名人だからといって無粋なことはしない。だから、誰もが“素”に戻って楽しむことができる。それが思わぬ一体感や居心地の良さを作り出しているんだと思います。
逆にエラぶる人は敬遠されがちですね」
肩肘張らない関係は、人と人の距離を近くさせる。大の大人であっても心の通った交流ができるものだ。そして、それが心地良さを生む。
また、麻布十番の“客層”が作り出すのは居心地の良さだけではないと語る。
「麻布十番のお客様はマナーや遊び方を心得ている一方で、厳しさもある。
たとえば『十番右京』の看板であるトリュフも、慣れてしまえば『“それ”ばっかりじゃん』って平気で言われてしまう。おかげで、今ではトリュフのメニューは3品とかなり少なくしました。
『ナチュールスタンド』も、当初は立ち飲みで好評をいただいたんですが、コロナが落ち着く頃には客足が激減。
メニューをあれこれ変えても手応えがなくて、どうにもならないと店に椅子を置いたら、途端にまた売上が伸びた。単に椅子がなくて寛げないのが嫌だ、それが理由だったんです。
麻布十番で店を続けていくには、こうした目も舌も肥えたお客様に認めてもらえるように、創意工夫をしないと相手にされない。いかに有名なシェフの店だろうが、愛されない店は残れない。
お客様と店とが一緒に街のレベルを押し上げているのだと思います」
それがまた、この街に新たな大人を呼び寄せる理由になっているようだ。
岡田氏は麻布十番に3店舗を展開!
上品な客層に合わせつつもキャッチーさも兼ね備えたそれぞれの店は、麻布十番で愛されている。
街に溶け込みながらも、色褪せない各店舗の魅力をお届けしよう。
1.写真映えする一品に女性も嬌声をあげる
『十番右京』
「トリュフたまごかけご飯」など、艶やかで絵映えするつまみが売りの店。
さらに、合わせる銘酒も100種をそろえるなど、選ぶ楽しさがあるので、大人がデートを楽しむのにぴったり。
■店舗概要
店名:十番右京
住所:港区麻布十番2-8-8 ミレニアムタワー B1F
TEL:03-6804-6646
営業時間:【月〜木】17:00〜(L.O.25:00)
【金・土・祝前日】17:00〜(L.O.26:00)
【日】17:00〜(L.O.22:30)
定休日:年末年始
席数:テーブル21席、カウンター12席
2.仕事終わりにサクッと美味しいナチュールを
『十番右京ナチュールスタンド』
ナチュールワインをグラス1杯から楽しめる店。仕事帰りの会社員などが一日の終わりを穏やかに過ごす姿が見られる。
テラスは、ワンちゃん連れも可能なため近隣住まいの常連も多い。
■店舗概要
店名:十番右京ナチュールスタンド
住所:港区麻布十番2-6-3
TEL:03-3403-1101
営業時間:【火〜土】17:00〜(L.O.25:00)
【日・祝】17:00〜(L.O.22:30)
定休日:月曜、年末年始
席数:テーブル32席、スタンディング8席
深夜まで営業している懐メロバー。リストから自分が聞きたい曲を選び、曲を聞きながらお酒とともに楽しむ。
ちなみに2023年5月(取材時点)の1位は『LA・LA・LA LOVE SONG』。
■店舗概要
店名:歌京
住所:港区麻布十番1-5-8 ヴェスタビル B1F
TEL:03-3403-7255
営業時間:18:00〜28:30
定休日:年末年始
席数:テーブル30席、カウンター10席
■プロフィール
岡田右京 ビクトリックス株式会社代表取締役。20代、30代には飲食とは無縁のアパレル業界に身を置く。その傍ら、食べ歩きに没頭。足を運んだ店はゆうに1,000軒を超える。この趣味が高じ、40歳で自身初の飲食店経営へ乗り出すことになる
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