●製品概要とテスト環境の紹介 / 3DMark

既報の通りRadeon RX 7700 XT&7800 XTが全世界で9月6日から発売になる(日本での発売開始は9月8日の午前11時)。まだ原稿執筆時点でも日本での販売価格が判明していないが、Radeon RX 7800 XTで$499、Radeon RX 7700 XTが$449となかなか意欲的な価格である。先の記事でも書いたが、競合とされるeForce RTX 4070が$599、GeForce RTX 4060 Tiが$396(8GB)ないし$499(16GB)ということで、価格競争力はそれなりにありそうである。問題は性能、ということで早速確認して行きたいと思う。

Photo00: 今回の新モデル投入で、Radeon RXのラインアップにおける「空白地帯」が埋まる

○評価機材

今回Radeon RX 7800 XTはAMDのReference品が届いた(Photo01〜12)。一方Radeon RX 7700 XTについてはASRockのChallenger Radeon RX 7700 XT OC Edition(Photo13〜23)を今回は利用した。

比較対象として今回はRadeon RX 6800 XTのReferenceの他、Radeon RX 7600搭載のASUS Dual Radeon RX 7600 OC Edition(Photo24〜32)及びGeForce RTX 4070搭載のASUS TUF Gaming GeForce RTX 4070 12GB GDDR6X OC Edition(Photo33〜41)をそれぞれ借用した。

Photo01: パッケージはRadeon RX 7900 XT/7900 XTXとよく似た構図。このシリーズは嫌いではない。

Photo02: パッケージ展開の仕組みも同じく。

Photo03: 2つのファンの位置が均等ではないというか、やや後方にずれているのがちょっと珍しい。

Photo04: 裏面はフルカバード。面取りしてあるので引っかかり難いのは正直助かる。

Photo05: それなりに質量感はあるが、Radeon RX 7900 XT/XTXに比べると一回り小さい。ちなみに寸法は265mm×106mm×50mm、重量は1501.6g(いずれも実測値)で、実際重い。

Photo06: 後方、面取りしてあるのにエラが張っている造形がちょっと独特。

Photo07: 補助電源は8pin×2。フィン3本だけに赤色が配されてRadeonであることを主張している。

Photo08: 底面から。一見貫通しているように見えるが、これはフィンの奥のヒートシンクが反射しているだけ。

Photo09: 出力はHDMI×1+DisplayPort×3。一応2.5slot厚としてギリギリ問題ない程度の厚みに収まっている(もっとも背面のプレートもそれなりにあるので実質3slot厚に近いが)。

Photo10: アップで見ると、なんとなく新幹線っぽい造形と思ってしまった。両方のエラの張り具合がそう感じさせるのだろう。

Photo11: 3840 Shaderなので60CU相当。動作周波数はスペック通り。

Photo12: Power Limitは-10%〜15%なので、234W〜302Wの範囲で可変可能ということになる。Base Clockは1603MHzと意外に結構低め。

Photo13: パッケージはシンプル。同社のChallengerシリーズらしいデザインである。

Photo14: 一見Radeon RX 7800 XTよりコンパクトに見えるが、単に横長がもう少しずんぐりした事に起因する。実際外寸は263mm×123mm×54mm(実測値)で、むしろRadeon RX 7800 XTよりも大きい。

Photo15: 背面にもプレートはあるが、フルカバードではない。ヒートシンクが覗いて見えるあたりがチャームポイント。ちなみに重量は961.8g(実測値)とだいぶ軽いのは助かる。

Photo16: やはり厚みがかなりあり、2.5slot厚というのは結構厳しい。限りなく3slot厚と考えた方が良い。

Photo17: 後方はこんな感じ。Radeon RX 7800 XTほど凝ってはいないが、省いたデザインの分軽くなっていると思えば、これは許容範囲。

Photo18: こちらも補助電源は8pin×2。基板の端に装着されているところとか、基板上のコンデンサの位置とかをPhoto07と見比べてみる限りは、基板そのものはReferenceのままだろうか?

Photo19: かなり厚みというか高さのあるヒートシンクが判る。

Photo20: 出力配置はRadeon RX 7800 XTと同じだが、このスリットは単なるデザインなのか、何か意味があるのか。

Photo21: 5本のヒートパイプを使っている事を強く主張しているのが判る構図。

Photo22: スペックと比較するとGame Clockを2171MHz→2226MHzに、Boost Clockを2544MHz→2584MHzに、それぞれ40MHz程度引き上げしている。

Photo23: Base Clockはこちらも1603MHzで、これはNavi 32のデフォルトだろうか。Power Limitは同じく-10%〜+15%なので221W〜282Wの範囲で可変ということになる。

Photo24: パッケージが割とASRockと似ているので取り違えそうになった。今回比較に使用した中では一番コンパクト。

Photo25: 相対的に大き目なファン2つの構成。寸法は241mm×120mm×49mmで、ちょっと背が高い。あとこの写真で底になっている部分が平になっていないので、この置き方だとちょっと倒れそうになる。

Photo26: 一応背面プレートも実装。重量は769.5gで、今回の比較の中では一番軽量。

Photo27: コンパクトではあるのだが、ファンの直径を稼ぎたかったためか結構背が高いので、小さめのケースだと蓋が厳しいかもしれない。

Photo28: AMDのReferenceとは異なるが、こちらも角を落としたちょっと複雑な形状になっている。

Photo29: 補助電源は8pin×1。

Photo30: 底面からは3本のヒートパイプの配置が伺える。

Photo31: 出力は同じくHDMI×1、DisplayPort×3なのだが、なんでHDMIをこの位置に持ってきたのだろう?(いやこういうパターンのカードも結構多いのだが)。

Photo32: 後方は完全にカバーに覆われている。ケースの中に収めた状態で配線とかをごちゃごちゃいじってると、ヒートシンクの角で怪我をする事は意外に多く、その意味でもきちんとフルカバードになっている事は好感が持てる。

Photo33: 今回テストした中では抜群にデカい。ファンも3連である(が、一番重い訳では無いあたりが面白い)。

Photo34: こちらも底面に当たる部分が全然平でないので、このアングルでの撮影には苦労した。

Photo35: 背面も当然フルカバードである。ヒートシンクの裏が抜いてある辺りがちょっと他と違う所か。

Photo36: 完全に3slot厚。寸法は298mm×124mm×62mmで、正直かなりデカい。にも拘わらず重量は1195.9gと、Radeon RX 7800 XT Referenceより軽く、サイズの大きさと相まって持つと「あれ?」となる。

Photo37: 上面が平ではないのはデザイン上の問題もあるのだろうが、結果として猛烈にデカい(今回比較のカードでは文句なく一番大きい)のはどうしたものか。

Photo38: 補助電源は8pin×1。ヒートシンクの構造が良く判る。

Photo39: 底面は結構実装密度が高く感じる。

Photo40: ブラケットから大きくはみ出すシャーシが威圧感すら感じる。出力の並びはRadeon RX 7600と同じく。

Photo41: 後方もフルカバードなのは嬉しいが、リテンション取付用の金具がちょっと出っ張ってるのが気になる。

その他のテスト環境は表1の通りである。製品グレードで言えばRadeon RX 7600のみが1080P Gaming向けで、その他が概ね1440P Gaming向けという感じになっている訳だが、今のラインナップだとRadeon RX 7700 XTの下がRadeon RX 7600になっているので、その性能差がどの程度あるのかの確認のために今回採用した。逆にGeForce RTX 4060 Tiが無いのは筆者の手配のミスであるが、時間の関係もあって今回はこのままとさせていただく。

グラフ中の表記は

RX 6800 XT:AMD Radeon RX 6800 XT Reference

RX 7600 :ASUS Dual Radeon RX 7600 OC Edition

RX 7700 XT:ASRock Challenger Radeon RX 7700 XT

RX 7800 XT:AMD Radeon RX 7800 XT Reference

RTX 4070 :ASUS TUF Gaming GeForce RTX 4070

となっている。また解像度表記も何時もの通り

2K :1920×1080pixel

2.5K:2560×1440pixel

3K :3200×1800pixel

4K :3840×2160pixel

としている。

またゲームに関しては、DirectX Ray Tracingは基本無効(無効化できないものはそのまま)としており、またFSRやDLSS/XeSSなどのSuper Samplingも全て無効の状態で比較を行っている。

○◆3DMark v2.27.8160(グラフ1〜3)

3DMark v2.27.8160

UL Benchmarks

https://benchmarks.ul.com/3dmark

グラフ1

グラフ2

グラフ3

今回は同一CPUなので、Physics/CPU Benchmarkを比較しても仕方ない(実際データは取ったがほぼ同一)ということで割愛し、3DMark/Graphics/Combinedだけを。グラフ1が3DMark Scoreであるが、ラフに言えば

Radeon RX 7800 XT: GeForce RTX 4070とほぼ同等、Radeon RX 6800 XTよりも少し上

Radeon RX 7700 XT: Radeon RX 7600とは比較にならないが、Radeon RX 7800 XTには結構明確な差がある

という感じだ。これはGraphics Test(グラフ2)でも共通で、フレームレートがそれだけハッキリ違うという事である。Combined Test(グラフ3)も概ねGraphics Testの結果を反映した格好になっており、Radeon RX 7800 XTは負荷が低い(2K)とGeForce RTX 4070にやや劣るが、Extreme(2.5K)/Ultra(4K)だと最高速だったりするあたりは両者のアーキテクチャの違いがこういう所に出てくるのだな、と感じる。

●ゲームその1: Borderlands 3 / Company of Heroes 3 / Cyberpunk 2077

○◆Borderlands 3(グラフ4〜10)

Borderlands 3

2K Games

https://borderlands.com/ja-JP/

ベンチマーク方法はこちらのBorderland 3の項目に準ずる。設定は

全体的な品質:ウルトラ

アンチエイリアス:テンポラル

である。

グラフ4

グラフ5

グラフ6

グラフ7

グラフ8

グラフ9

グラフ10

さて結果(グラフ4〜6)を見ると、Borderlands 3ではGeForce RTX 4070があまり振るわず、Radeon RX 7700 XTとほぼ同等といったところ。ではRadeon RX 7800 XTは? というと、Radeon RX 6800 XTとほぼ同じといった感じになっている。これはフレームレート変動からも明らかであり、特に3K/4K(グラフ9・10)はこれが明確として良いかと思う。流石に4KになるとRadeon RX 7700 XTはGeForce RTX 4070にやや突き放され始めるが、本来Radeon RX 7700 XTはGeForce RTX 4060 Tiが仮想敵な扱いだけに、ここまで頑張れば十分だろう。またRadeon RX 7700 XTは3Kまで、Radeon RX 7800 XTは4Kでも60fpsを超えているあたりは、ちょっと古めのゲームであれば3K〜4Kでも十分プレイできる事を示している。

○◆Company of Heroes 3(グラフ11〜17)

Company of Heroes 3

Relic Entertainment

https://www.companyofheroes.com

ベンチマーク方法はこちらのCompany of Heroes 3の項目に準ずる。設定は

Image Quality:Ultra

Physics Quality:High

Shadow Quality:High

Texture Detail:Ultra

Geometry Detail:Ultra

Anti-Aliasing:High

とした。

グラフ11

グラフ12

グラフ13

グラフ14

グラフ15

グラフ16

グラフ17

さて、まず結果を見るとRadeon RX 7800 XTがちょっとだけ全体的に高速で、GeForce RTX 4070とRadeon RX 6800 XTが同程度。Radeon RX 7700 XTはやや低めなのはまぁいいとして、Radeon RX 7600の結果が変なことになっている。実はあとのフレームレート変動には出てこない(何故かCSVのログを見ても反映されていない)のだが、実際のフレームレートはこんな感じ(Photo42)で、定期的に停まるのである。そりゃフレームレートが低い訳だ。

Photo42: 定期的に画面更新そのものが完全にストップ。「ハングアップしたか?」と見ていると、しばらくして何事もなく動き始めるという具合。これが繰り返される結果、Total Durationは311秒とかという恐ろしい事に。普通は90秒弱でベンチマークが完了する。

ちなみに以前のドライバ(Adrenaline Edition 23.10.01 May 15 2023)だと問題なくベンチが動いていたし、まともなフレームレートが出ていたし、同じドライバでもRadeon RX 6800 XTではこの症状が出ない事、また解像度を上げるほど停止する頻度や停止する時間が減る事などから、今回のドライバが非常に怪しい気はするのだが、それを検証する時間は取れなかった。とりあえず結果は示すが、Company of Heroes 3に関してはRadeon RX 7600は無視して頂ければと思う。

さてフレーム変動(グラフ14〜17)を見ると、御覧の通り割と変動が激しい。Radeon RX 7700 XTのみ他の3つとちょっと大きく外れている感じはあるが、それでも2Kで160fpsは確保しているし、2.5Kでも80fps以上を確保しているから、プレイには十分とはいえる。それどころか3KではRadeon RX 6800 XTが80秒付近で大崩れするのにたいし、Radeon RX 7700 XTは30秒付近でちょっと80fpsを割り込むものの、あとは100fps前後を維持しており、十分プレイ可能な範囲である。流石に4Kはちょっと厳しい感じであるが、2.5Kまでが基本的なターゲットであるRadeon RX 7700 XTであることを考えれば十分だろう。一方Radeon RX 7800 XTはGeForce RTX 4070以上の性能を常に維持し、4Kでも十分プレイ可能であることが確認された格好だ。

○◆Cyberpunk 2077(グラフ18〜24)

Cyberpunk 2077

CD PROJEKT RED

https://www.cyberpunk.net/us/ja/

ベンチマーク方法はこちらのCyberpunk 2077の項目に準ずる。設定は

Quick Preset:Ultra

Ray Tracing:Off

とした。

グラフ18

グラフ19

グラフ20

グラフ21

グラフ22

グラフ23

グラフ24

さて結果(グラフ18〜20)を見ると、最高速はRadeon RX 7800 XT、これにRadeon RX 6800 XTが続き、GeForce RTX 4070とRadeon RX 7700 XTはほぼ同程度といったところ。Radeon RX 7600はかなり落ちるがこれは致し方ない。

フレームレート変動(グラフ21〜24)もこの傾向を裏付ける格好になっている。絶対的なフレームレートと言う意味では、Radeon RX 7800 XTは3Kまで大丈夫だし、Radeon RX 7700 XTは2.5Kまでは問題なし。3Kは時々60fpsを切るシーンがあるので、プレイするなら多少描画品質を落とした方が良さそうではある。4Kに関しては今回試した全ての製品がちょっと厳しいが、そもそもUltra Qualityでやるのが間違っているという話もある。いずれにせよ、2.5Kまでの範囲で言えばRadeon RX 7700 XT/7800 XT共に問題なく利用可能だ。

●ゲームその2: F1 23 / Far Cry 6 / Hitman 3 / Metro Exodus

○◆F1 23(グラフ25〜31)

F1 23

EA Sports

https://www.ea.com/ja-jp/games/f1/f1-23

今年7月6日に2023年版がリリースされたので、F1 22に換えてこちらを利用する事にした。操作方法であるが、基本的には従来の流れと差が無い。スタート画面(Photo43)→Settings→Graphics Settings(Photo44)ときて、Video Mode(Photo45)で解像度やAntialias、SuperSamplingなどの設定を行った後で、Graphics SettingsのAdvanced SetupでPresetを選択(Photo46)し、最後にBenchmark Mode(Photo47)でRun Benchmark Testを選ぶとベンチマークが開始。終わると結果が表示される(Photo48)と共に、ログファイルがMy Documents\My Games\F1 23の下に自動生成される。

Photo43: ベンチマークだけであればEAのアカウントを作らなくても利用できる。マウスは使えずキーボードで操作というのも従来から変わらず。

Photo44: この辺も変わらず。

Photo45: 項目そのものは大きくは変わらず。

Photo46: Photo44でGraphics Setupを選ぶとまずはこの画面に来る。ここでVideo Modeを選ぶとPhoto45に移行し、終わるとまたここに戻ってくる形だ。

Photo47: Dynamicなシナリオは相変わらず選択できない(ので10位でスタートしてそのまま一回も追い越しなど無いまま隊列を組んで)10位でフィニッシュである。

Photo48: この辺も相変わらず。

ちなみに設定であるが、Video Modeで

Display Mode:Fullscreen

Vsync:Off

Frame Rate Limit:Off

Anisotropic Filtering:16x

Anti-Aliasing:TAA Only

Dynamic Resolution:Off

とした上で、Advanced SetupでDetail PresetをUltra Highとして、あとはデフォルトのままで解像度だけ変えて実施している。

グラフ25

グラフ26

グラフ27

グラフ28

グラフ29

グラフ30

グラフ31

ということで結果である。F1 22だとUltra Highでもそれほど重くなかったのが、F1 23では恐らくRay Tracingの適用範囲が広がったためだろうか? ちょっと全体的に重めである。といっても結果(グラフ25〜27)から判るように、Radeon RX 7600を除いてすべての製品が2.5Kでも60fpsを超えているのは流石というべきか。Radeon RX 7600も2Kではちゃんと60fpsを超えているあたり、2K Gaming向けを名乗ることに問題はないだろう。ちなみに最大/最小を見るとRadeon RX 6800 XTが3K/4Kでちょっと暴れているが、最大が妙に高い分最小が落ち込んでいるあたりはちょっとフレームの生成にムラが出た感じであろう。

フレームレート変動(グラフ28〜31)を見ると、2KはRadeon RX 760以外きちんと80fpsが確保できているが、2.5Kになると60fpsをさいごまで確保できているのはRadeon RX 7800 XTとGeForce RTX 4070のみで、Radeon RX 7700 XTは時々(0〜10秒付近と70〜80秒付近)60fpsを割り込んでいるのはそれなりに厳しい感じだが、それでも全般的にRadeon RX 6800 XTを上回っているのだから大したものである。

3K以上はどの製品でもかなり厳しいのは、恐らくRay Tracingが足を引っ張っているためで、解像度を落とす(or Super Samplingを使う)か、Ray Tracingを無効にする必要がある。その意味ではRadeon RX 7700 XT/7800 XTが2.5Kをターゲットにしていると明言しているのは正しく、実際2.5Kまでの範囲で使う分には十分楽しめるだろう。

○◆Far Cry 6(グラフ32〜38)

Far Cry 6

Ubisofy Entertainment

https://www.ubisoft.com/ja-jp/game/far-cry/far-cry-6

ベンチマーク方法はこちらに準ずる。設定は

Quality:High

Antialias:TAA

DXR Reflections/Shadows Off

としている。

グラフ32

グラフ33

グラフ34

グラフ35

グラフ36

グラフ37

グラフ38

ただ結果(32〜34)を見ると、Radeon RX 7600ですら4Kで平均80fpsというあたり、もう少し描画品質を上げてテストしてもよかったかな、とちょっと反省である。実際平均フレームレートを見ると、3Kあたりまでほぼフレームレートが一定(微妙に下がっているRadeon RX 7700 XTとかもあるが)というあたり、CPU Bottleneckになってしまっているからだ。ただこれはGPUの性能を比較するにはある意味都合の良い状況であり、こと2.5Kまでの範囲であればRadeon RX 7800 XTが最高速で、僅差でRadeon RX 7700 XT、その下にGeForce RTX 4070が来るという感じ。Radeon RX 6800 XTは低め安定。おもしろのはRadeon RX 7600が2Kのみ非常に性能が良い事か。ただ2.5K以上は急速にフレームレートを落としているのは、やはりInfinity Cacheが飽和したのだろうか? 同じ事はRadeon RX 7700 XTにも言える。2.5Kまではそう悪くないが、そこから急速に性能を落としているのは、やはりInfinity Cacheの容量が48MBに減っている&メモリ帯域が3/4しかないことが効いている気がする。

フレームレート変動(グラフ35〜38)もこれを物語る結果になっているが、面白いのは2.5K。Radeon RX 7700 XTとRadeon RX 7800 XTで明確にフレームレートが異なるのは開始10秒程度だけで、あとはほぼ同一で推移しているあたり、Radeon RX 7700 XTも2.5Kまでは結構実用的と言うか、それほどRadeon RX 7800 XTと遜色ない性能であることが見て取れる。ただ3K以上になると急速にフレームレートを落としている事からも判るように、Headroomの大きさという点ではRadeon RX 7800 XTには及ばないのが明らかである。このHead roomの追加コストが$50というのはなかなか絶妙な数字に思える。

○◆Hitman 3(グラフ39〜45)

Hitman 3

IO Interactive A/S

https://www.epicgames.com/store/ja/product/hitman-3/home

ベンチマーク方法はこちらのHitman 3の項目を参照されたい。設定は

Adaptive Supersampling Technique:Off

Ray Tracing:Off

Level of Detail:Ultra

Texture Quality:High

Texture Filter:Anisotropic 16x

SSAO:Ultra

Shadow Quality:Ultra

Mirrors Refrection Quality:High

Reflection Quality:High

Variable Rate Shading:Off

Motion Blur:High

Simulation Quality(Graphics):Best

としている。

グラフ39

グラフ40

グラフ41

グラフ42

グラフ43

グラフ44

グラフ45

さて結果(グラフ39〜41)を見ると、Radeon RX 6800 XTが結構健闘しており、ただRadeon RX 7800 XTには一歩競り負けるという感じ。Radeon RX 7700 XTは2Kだと悪くないが、2.5K以上だとちょっと性能を急速に落としている。とはいえ2.5Kで平均140fps近くだから2.5K Gamingを名乗るには十分であるし、2.5Kまでの範囲で言えばGeForce RTX 4070との性能差もそれほど大きない(2.5Kで137.8fps vs 142.9fpsなのだから、十分競合しているとして良いだろう)。更に言えばRadeon RX 7600も他の製品と比較したら見劣りするとは言え、2Kで127fps、2.5Kでも93.9fpsだから悪くないとは言える。もっともこれ、Ray Tracingを有効にしたらまた構図は色々変わりそうではあるのだが。

フレームレート変動は? というとグラフ42〜45の通りでとにかく激しく変動するので、最低のところに注目すると2Kは概ね100fps程度でこれは全製品問題なし。2.5Kも大きくは変わらないが、ここら辺でRadeon RX 7600がちょっと脱落(といっても常時60fpsは超えているから、ゲームには問題ないとは思うが)。3KでRadeon RX 7700 XTが脱落といった感じになっている(が、80fps以上は維持しているからプレイには問題なさそう)。

概してRadeon RX 7700 XT/7800 XT共に2.5K以下であれば全く問題ないし、GeForce RTX 3070と比較しても優秀な成績として良いかと思う。

○◆Metro Exodus PC:Enhanced Edition(グラフ46〜52)

Metro Exodus PC:Enhanced Edition

4A Games

https://www.metrothegame.com/

ベンチマーク方法はこちらのMetro Exodus Enhanced Editionの項に準じる。設定は

Shading Quality:Ultra

Ray Tracing:High

DLSS:Off

Reflections:Hybrid

Variable Rate Shading:4x

Hairworks/Advanced PhysX:Off

Tesselation:Full

とした。

グラフ46

グラフ47

グラフ48

グラフ49

グラフ50

グラフ51

グラフ52

GeForce RTX 4070の逆襲とでもいうべき結果(グラフ46〜48)がこちらで、Radeon RX 7800 XTですら追いつかない。次がRadeon RX 6800 XTで、Radeon RX 7700 XTはそれを更に下回る感じ。ただRadeon RX 7600を除くとどの製品も2.5Kで60fpsを上回る性能を発揮しており、プレイそのものには問題は無い。Radeon RX 7600も、低いとはいえ一応2Kで60fpsを超えてはいる。

フレームレート変動(グラフ49〜52)を見ると、2Kでは一番シビアなところ(80〜90秒あたり)は差が縮まっているが、他は先の平均フレームレートと同等の傾向がそのまま維持されている感じ。Radeon RX 7600はこの80〜90秒で40fpsそこそこまで落ちているあたりは、もう少し対策をした方が良さそうだ。これが2.5Kになると80〜90秒で全製品60fpsを割り込んではいるのだが、それでもRadeon RX 7600以外は50fpsはなんとか維持できているので、あとは描画品質とのご相談という感じか。F1 23もそうだが、やはりRay Tracingを有効にした場合、このクラスのビデオカードはなかなか厳しいものがある。ただ幾分にも古いゲームなので、DLSSはともかくFSRへの対応は見込めそうにないのがちょっと厳しいところか。3K以上だと。Radeon RX 7800 XTでももう厳しいので、どうしてもこうした高解像度を利用したければRSR(Radeon Super Sampling)を併用するのが吉だろう。

●ゲームその3: Tomb Raider / The Division 2 / Watch Dogs

○◆Shadow of the Tomb Raider(グラフ53〜59)

Shadow of the Tomb Raider

SQUARE ENIX

https://tombraider.square-enix-games.com/en-us

ベンチマーク方法はこちらに準じる。設定は

Preset:Hightest

Ray Traced Shadow Quality:Off

とした。XeSSも無効化している。

グラフ53

グラフ54

グラフ55

グラフ56

グラフ57

グラフ58

グラフ59

さて、結果(グラフ53〜55)を見るとここでもGeForce RTX 4070がやや有利である。「やや」と言うように、差そのものはそれほど大きくない。あと、なぜかRadeon RX 6800 XTがここではRadeon RX 7800 XTよりこちらも「やや」有利である。実のところ3K〜4Kだともうこの3製品の間に明確な差があるとは言いにくいからであるが。それに比べるとRadeon RX 7700 XTは結構落ちるし、Radeon RX 7600は更に落ちるが、それは致し方ない。ただ平均フレームレートだけで言えば、Radeon RX 7600を含むどの製品も一応3K位まではPlayableの範疇ではある。

フレームレート変動(グラフ56〜59)を見ると、とりあえずRadeon RX 7600以外は3Kまでは十分利用できるし、なんなら4Kでもギリギリ大丈夫な範囲ではあり、その意味ではどの製品も2.5K Gamingを名乗るには十分すぎる性能ではあるのだが。

○◆Tom Clancy's The Division 2(グラフ60〜66)

Tom Clancy's The Division 2

Ubisoft

https://www.ubisoft.co.jp/division2/

ベンチマーク方法はこちらの"Tom Clancy's The Division 2"に準ずる。設定は

品質:ウルトラ

とした。

グラフ60

グラフ61

グラフ62

グラフ63

グラフ64

グラフ65

グラフ66

もう今となってはそれほど負荷が高いゲームとは言えないため、結果(グラフ60〜62)でも判るように大きな差は無い。ただここでも最高速はGeForce RTX 4070で、それにRadeon RX 7800 XTとRadeon RX 6800 XTが僅差で追従、Radeon RX 7700 XTはちょっと差を付けられている感じだ。ただ大きく離されたRadeon RX 7600ですら2.5Kまで十分プレイできる性能ではあるので、性能差はともかくとしてプレイするのに支障があるという感じではないのだが。

フレームレート変動(グラフ63〜66)もこれを裏付ける格好である。2Kで言えば、Radeon RX 7800 XTのスコア低めなのは40秒付近に谷の部分があり、これが影響している感じである。ただそれ以外で言えば2Kはほぼ同等。2.5KでRadeon RX 7800 XTはGeForce RTX 4070から10fps程度下回るものの、Radeon RX 6800 XTとはほぼ重なる感じである。面白いのは3K/4Kではもう明示的な差が無い(というか4Kで言えばRadeon RX 7800 XTはむしろGeForce RTX 4070を上回っていると言っても良い)事で、こうした事も踏まえて考えるとRadeon RX 7800 XTの性能はGeForce RTX 4070に僅かに及ばない程度とするのが無難かと思う。一方のRadeon RX 7700 XTは、こうした上位製品とは明確に差が見られる。とは言え3Kですら70fps以上を実現できるので、2.5Kゲーミングには十分とはいえるだろう。

○◆Watch Dogs:Legion(グラフ67〜73)

Watch Dogs:Legion

Ubisoft

https://www.ubisoft.co.jp/wdlegion/

ベンチマーク方法はこちらの"Watch Dogs:Legion"に準ずる。ちなみに設定は

Quality:Ultra

RT Reflection:Off

DLSS:Off

とした。

グラフ67

グラフ68

グラフ69

グラフ70

グラフ71

グラフ72

グラフ73

さてまず結果(グラフ67〜69)を見てみると、Radeon RX 7800 XTは2KこそRadeon RX 6800 XTと同程度ながら、その先の解像度では明確に差がある。一方GeForce RTX 4070は? というと、Radeon RX 7700 XTとほぼ同等といった感じで、Radeon RX 7800 XT/6800 XTとは明確な差がある。

これはフレームレート変動(グラフ70〜73)でも明らかであり、Radeon RX 7800 XTが最高速でこれにRadeon RX 6800 XTが続き、GeForce RTX 4070は僅差ながらRadeon RX 7700 XTに競り勝っているといったところか。ちなみに4Kのグラフを見ると、Radeon RX 7800 XTだけは何とかプレイ可能に見えるが、68秒あたりの谷の部分で50fps近くまで下落する事を考えると、今回の製品では3Kまでの解像度に留めるか、描画オプションをもう少し見直す必要があるだろう。

ちなみにRadeon RX 7600は2Kなら十分だし、2.5Kでも何とかプレイできる程度の性能は確保していると言える。このグレードの製品でこれなら十分としてよいかと思う。

●ゲームベンチマーク総評 / PCMark

○◆ゲームベンチマーク総評(グラフ74・75)

グラフ74

グラフ75

ということで最後にこの10個のGame Benchmarkの結果をまとめてみた。2K及び2.5Kにおける平均フレームレートを取り、Radeon RX 6800 XTの数字を100%とした時の相対性能を示してみたものである。一番下のGeomeanは、10種類のフレームレートの比の相乗平均を取ったものだ。トータルで言えば、GeForce RTX 4070はRadeon RX 6800 XTとほぼ同等であり、これに対してRadeon RX 7800 XTは5%ほど高速であり、Radeon RX 7700 XTは5%ほど遅いという結果になった。両者の構成を考えれば納得できるというか、意外にRadeon RX 7700 XTが健闘したという感じもある。

むしろ気になるのはRadeon RX 7700 XTとRadeon RX 7600のギャップの大きさである。ミドルレンジとローエンドだから性能差があるのは判るが、その性能差が非常に大きいのが気になる。とはいえNavi 33で更に性能を引き上げるのには無理がある。Navi 32ベースでRadeon RX 7700ないしRadeon RX 7600 XTが投入されるのかもしれないが、製品構成的に言えばRadeon RX 7700 XTをもう少し性能を落とし、その分価格も下げてRadeon RX 7600とのギャップを縮めた方が良かったような気もしなくはない。もっとも競合であるGeForce RTX 4060 Tiとの競争を考えるとそうもいかなかった、という事かもしれないが。

○◆PCMark 10 v2.1.2636(グラフ76〜81)

PCMark 10 v2.1.2600

UL Benchmarks

https://benchmarks.ul.com/pcmark10

グラフ76

グラフ77

グラフ78

グラフ79

グラフ80

グラフ81

一応2Dについてもというか、OpenCL周りの比較のためにこれも実施してみた。Overall(グラフ76)を見ると、当然ながらPCMark 10 Extended以外はあんまり大きな差が見られない。Test Groupで言えば、Gaming(つまり3DMark FireStrike)の数字がばらつくのは当然として、気になるのは意外にDigital Contents Creationの成績が変化している事だ。そのDigital Contents CreationのDetail(グラフ80)を見ると、Rendering&Visualization、PhotoEditingの2つでRadeon RX 7700 XTとGeForce RTX 4070の落ち込みが目立つ。

ただRendering&Visualizationに関して言えば表2の様な結果になっている。ここでRenderingAndVisualizationRaytracingはPOV-RayをCPUで実施した際の所要時間なので御覧の通り全く差が無し。一方RenderingAndVisualizationGt1の方は3DMark Sligh ShotをOpenGL 4.3で実施した際のフレームレートで、要するにGeForce RTX 4070の方はOpenGL Driverの問題で、Radeon RX 7600の方は純粋に描画性能の問題なのか、それともPCIe 4.0 x8接続の問題なのかは不明だが、要するにフレームレートが上がらないのが理由であり、少なくともOpenCL周りは無関係である。

一方PhotoEditingのうち、OpenCLを利用するテスト結果を抜き出したのが表3であるが、こちらでは確かにRadeon RX 7600とGeForce RTX 4070の性能の低さが目立つ(赤は一番悪いもの、黄色は2番目に悪い結果を示す)。まぁGeForce RTX 4070に関して言えばOpenCLよりもCUDAを使え、ということなのかもしれない。ただ面白いのは、最高速はRadeon RX 7800 XTではなくRadeon RX 6800 XTな事だ。Navi 2→Navi 3に進化するなかで、描画性能そのものは向上したものの、OpenCLの性能の最適化そのものはまだ十分ではないのかもしれない。

●消費電力測 / 総評と考察

○◆消費電力測定(グラフ82〜88)

最後に消費電力比較を。今回はF1 2023の2K(グラフ82)、Hitman 3 2K(グラフ83)、Metro Exodus 2K(グラフ84)、3DMark SpeedWay(グラフ85)、Shadow of the Tomb Raider 2K(グラフ86)の5つについて消費電力変動を測定、それぞれの平均値(グラフ87)、及び待機状態との差(グラフ88)をまとめてみた。

グラフ82

グラフ83

グラフ84

グラフ85

グラフ86

グラフ87

グラフ88

結果を見ると、Radeon RX 7800 XTはRadeon RX 6800 XT比で50Wほど消費電力の削減に成功している。面白いのはRadeon RX 7700 XTで、殆どRadeon RX 7800 XTと消費電力が変わらない。そしてGeForce RTX 4070はそこから更に30〜50W低い格好だ。勿論一番低いのはRadeon RX 7600であるが、これは描画性能の低さとのバーターなので当然ではある。

Radeon RX 7700 XT/7800 XTはGCDがTSMCのN5、MCDがTSMCのN6で、全部TSMCのN7だったRadeon RX 6800 XTに比べれば省電力なのは想定通りではあるが、厳密に言えば動作周波数はやや引きあがっているし、シェーダ数(Radeon RX 6800 XTは5120個、Radeon RX 7700 XT/7800 XTは3520/3840だが、演算性能が倍になっている事を考えると実質7040/7680個相当)を考えると、よく50W削減が実現したな、という気もする。

○考察

ということで駆け足でRadeon RX 7700 XTとRadeon RX 7800 XTの性能を評価してみた。AMDの示したこのスライドと見比べてみると、Radeon RX 7800 XTの性能はそこまでGeForce RTX 4070より高くないという気はする。ただこのスライドだと、F1 23はむしろGeForce RTX 4070より劣る筈なのが、実際には僅かながらGeForce RTX 4070を上回るなど健闘を見せており、トータルとして競争力そのものはちゃんとあると思う。

問題は消費電力と価格だ。性能/消費電力比ではGeForce RTX 4070の方に軍配が上がるのはまぁ致し方ない。なので後は価格での勝負である。定価ベースで言えばGeForce RTX 4070が$599、Radeon RX 7800 XTが$499だからこれは圧倒的にRadeon RX 7800 XTが上である。問題は日本での価格であろう。Amazon Japanの原稿執筆時点のGeForce RTX 4070の最安値は\87,859であることを考えると、7万円台前半に収まる価格であれば、競争力はありそうだ。

一方Radeon RX 7700 XTはちょっと微妙である。消費電力は変わらず、にも関わらずRadeon RX 7800 XTとの性能差は明確に存在する。AMDはGeForce RTX 4060 Ti 16GBとの比較を示しており、そのGeForce RTX 4060 Ti 16GBの最安値はやはり執筆時点で\78,586。もしRadeon RX 7700 XTが6万円台前半で出てくれればそれなりに競争力はありそうである。ただ筆者がどっちを買う、と言われたら(もし7万円台前半で入手できるなら)Radeon RX 7800 XTの方がお買い得に思える。

ということで後は日本での発売価格が明らかになるのを待つだけである。