台湾初の国産気象衛星「トリトン」(猟風者)のプロジェクトを取りまとめる林辰宗さん(国家宇宙センター提供)

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(台北中央社)台湾初の国産気象衛星「トリトン」(猟風者)が、台湾時間10月5日午前9時36分に打ち上げられることが決まった。プロジェクトを取りまとめる林辰宗さんは、システム設計の審査が終わった2013年からこれまでの道のりを「紆余曲折だった」と振り返る。

トリトンは部品の約82%が台湾製で、地上設備と合わせ、20以上の台湾の研究機関やメーカーが開発と製造に携わった。今年7月には北部・新竹市の国家宇宙センター(国家太空中心、TASA)から打ち上げが行われるフランス領ギアナに運ばれ、打ち上げの準備が進む。

林さんによれば、当初は台湾と米国が協力した「福衛7号」(フォルモサット7号)プロジェクトの一環として打ち上げられる予定だったが、17年に計画縮小のあおりを受けた。6〜7割まで製造が進んでいたのにもかかわらず、打ち上げの見通しが立たなくなった。

それでも19年に政府が航空宇宙産業の発展に向けた長期プロジェクトの予算を計上すると、トリトンは科技部(現国家科学・技術委員会)の支持を受けて経費を獲得。だが今度は新型コロナウイルスの影響を受け、注文した部品の輸入が滞り、組み立ては延期を余儀なくされた。全ての部品がそろったのは22年のことだ。

林さんによると、トリトンに取り付けられる太陽光パネルは片面式で、姿勢の制御が大きな挑戦だったという。TASAでは1年余りをかけ、2軸可動式のパネルを開発。重心がずれる問題を克服した。

また台湾が開発した技術と製造した重要な部品については、打ち上げ後も点検を行う予定。打ち上げ時の激しい振動や宇宙空間の過酷な環境に耐えられるか調べ、順調に運用できた場合は、台湾の国際航空宇宙産業サプライチェーン(供給網)参入の重要な一歩になると林さんは話す。

林さんはギアナで打ち上げを見守る。トリトンの現在の状況については燃料タンクの試験が完了したとし、ロケットの準備ができ次第、燃料を注入できると語った。成功した際には、自身の子供に対して「あれが僕たちが造った衛星だよ」と話すつもりだという。

(張璦/編集:齊藤啓介)