19歳で遺伝性疾患「神経線維腫症1型(NF1)」と診断された米アイダホ州ボイジー郊外に住むメルセデスさん。第2子を出産するまでは顔に腫瘍はなかったという(画像は『The Mirror 2023年7月24日付「Mum covered in tumours hits back at cruel trolls who say she shouldn’t have had kids」(Image: Kennedy News/copyright unknown)』のスクリーンショット)

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19歳で遺伝性疾患「神経線維腫症1型(NF1)」と診断された女性は現在、顔を含む全身に200以上の腫瘍がある。腫瘍は2人の出産を機に急増し「何度もつらい経験をした」という女性だが、今は娘のためにも隠さず、前向きに生きているという。「NF1を知って欲しい」という女性について、英ニュースメディア『Tne Mirror』などが伝えた。

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米アイダホ州ボイジー郊外に住むメルセデス・クリステセンさん(Mercedes Christesen、52)は、約3000人に1人の割合で発症するという「神経線維腫症1型(NF1)」を患っている。

NF1はカフェ・オ・レ斑と呼ばれる色素斑や、思春期頃に発生し増えていく皮膚の神経線維腫(小さな腫瘍)などが特徴で、神経や骨、眼などに異常が現れることもある。両親のどちらかが神経線維腫症1型である場合、子どもには50%の確率で遺伝するが、遺伝子の突然変異による発症も少なくない。

メルセデスさんのケースでは、6歳の時に水疱瘡痕に腫瘍ができたが、カフェ・オ・レ斑などの症状はなく、家族の中には当時、NF1の患者はいなかったことから、それが病気の一症状であると気付く者はいなかったという。そうしてメルセデスさんがNF1と診断されたのは身体に4〜5個の腫瘍があった19歳の時で、医師は腫瘍の1つ取って検査し「たいしたことではない」と言っただけだったという。

ところがそれから10年後、第2子の出産を終えてしばらくすると、それまで数えるほどしかなかったメルセデスさんの腫瘍は、まるで花が一斉に咲くかのように増え始めた。それは顔にも広がり、ニキビ以外のトラブルがない綺麗な肌が自慢だったメルセデスさんはショックに打ちのめされたのだった。

こうして29歳を境に腫瘍が爆発的に増えると今度は、大人によるいじめが始まり、メルセデスさんは「私はそれからというもの、ずっと腫瘍を隠して生きてきた。顔を髪の毛で覆い、いつも下を向いていたのよ。それに仕事以外は外出することもなくなったの」と当時のことを語っている。

さらに追い打ちをかけるように、メルセデスさんはその後、医師から衝撃の事実を告げられた。それは娘のルイスさん(仮名、27)とエマさん(仮名、24)も原因遺伝子を持っているというもので、メルセデスさんは「当時の私は、NF1が遺伝することなど全く知らなかったのよ」と明かすと、こう続けた。

「ルイスは6歳の時、エマは3歳の時にNF1であることが判明してね。私は『原因は自分』と罪の意識にさいなまれたの。」

それでもメルセデスさんは、NF1と診断された娘たちのために、腫瘍で覆われた顔を隠すのを止め堂々と生きる決意をし、娘には「病気は恥ずかしいことではない」「外見のことで人目を気にするようになって欲しくない」というメッセージを送り続けたという。

そんなメルセデスさんは現在、結婚して14年になる夫ロドニーさん(Rodney、58)と一緒に暮らしており、「彼は『腫瘍があっても美しい』と私に思わせてくれるのよ」と笑顔を見せる。またすでに4人の孫がいるそうで、「幸いなことに、娘2人の症状はそれほどひどくないの。だからこのままの状態が続くよう願っているわ」と述べている。

ただ一方で、身体に200以上の腫瘍があるメルセデスさんは時に、奇異の目で見られたり、娘と外出すると「なぜ子供を作ったの?」と聞いてくる人もいるようで、「そんなことを言われると傷つくし、怒りが溢れてくるの。『あなたたちには関係がないことでしょう』って思うのよ。だって糖尿病や乳がんの遺伝子を持っている人や、ダウン症の人にそんなことは言えないでしょう!」と憤りを隠せない。

さらにメルセデスさんは「エマを連れて食料品を買いに行った時だったわ。ある女性がやって来てこう言ったの。『もし私があなたみたいな外見だったら、自殺しているわ』とね」と衝撃的なエピソードを明かし、こう続けた。

「そんなことを言われた私は、エマを隠すようにして『あなたは私と違って、良かったじゃない』と言い返したわ。ネガティブなことを言ってくる人には、ネガティブな態度で返さないようにしているし、過剰な反応はしないように心掛けているのよ。」

ちなみにNF1の患者の腫瘍の数には個人差があり、千個できる人もあれば、数個しかできない人もいるという。ただ年齢とともに症状は進み、皮膚だけでなく体の内部や神経に沿って腫瘍ができることもあるそうで、メルセデスさんは自身の症状についてこのように述べている。

「私の場合は、身体にできた腫瘍の痛みがひどいわね。だから定期的に通院して薬を処方してもらい、必要に応じて切除手術を受けているわ。ただ腫瘍を取るのは、保険に入っていてもとても高額なの! それに病気の知識がない医師が手術をすると、かえって腫瘍が大きくなったり痛みが増すこともあるのよ!」

なおメルセデスさんはSNSで、同じ病気を持つ人からの質問に丁寧に答えたり、病気にまつわる自身の経験を語っており、TikTokには7万8000人超のフォロワーがいる。フォロワーの中にはクラウドファンディングサイト「GoFundMe」にページを立ち上げて腫瘍の切除を勧める人もいるそうだが、メルセデスさんは「神経線維腫症についてのリサーチやサポートをする団体『小児腫瘍基金(Children’s Tumor Foundation)』に寄付して欲しい。そうすればこの病気の治療法が見つかるかもしれないから」と語っている。また神経線維腫症について知ってもらうためのチャリティ活動なども行っており、前向きに生きるメルセデスさんを多くの人がサポートしているようだ。

画像は『The Mirror 2023年7月24日付「Mum covered in tumours hits back at cruel trolls who say she shouldn’t have had kids」(Image: Kennedy News/copyright unknown)(Image: Kennedy News and Media)』『Mercedes Christesen 2020年12月29日付Instagram「#ctf」』『Mercedes Christesen 2023年1月17日付TikTok「Replying to @amandastrydom623」、2023年5月18日付TikTok「#endnf #neurofibromatosisawareness」』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 A.C.)