過去に放送されていたビッグモーターのCM。従業員が顧客の車のドアを激しく殴打(ツイッターより)

写真拡大

 損害保険会社に対し、不正に保険金を請求していたことが発覚した大手中古車販売会社『ビッグモーター』。その“闇”は今、続々と明らかになっている。

【写真】不正を自ら暴露? 物議を醸しているCMの全貌

「保険金の水増しのため、従業員が顧客の車を故意に損傷させていたと伝えられています。車体に傷をつける、タイヤをパンクさせる、部品を破壊するといった内容で、“犯行”にはドライバーやヤスリなどの工具用品、さらには靴下に入れたゴルフボールを用いたという話も。ほかにも、不要な部品の交換や存在しない作業のでっち上げなど、極めて悪質な不正が取り沙汰されています」(全国紙社会部記者)

修理費用に「ノルマ」

 疑いは1000件以上、不正請求総額は約5000万円に及ぶという。蛮行の背景には、経営陣からの不合理な目標設定や圧力があったようで……。

「修理費用に“1台あたり14万円”という“ノルマ”が設けられていたそうです。達成できない場合には、降格処分や給料の大幅減俸などペナルティもあったとのこと。これらの実態は従業員による内部告発によって明らかになりましたが、ビッグモーターは告発のもみ消しや報告書の改ざんも行なっていたと見られています」(同・社会部記者)

 過去にも、不正車検や社員に対する“罰金制度”など、さまざまな不祥事が報じられてきたビッグモーター。今回の騒動を受け、代表取締役社長の兼重宏行氏は自身の報酬全額を1年間自主返上、加えてそのほかの役員に関しても報酬の一部を返上することを発表したが、裏ではこんな“小言”を残していた。

社長がメディア批判

《メディアの常として、全社員の2%に満たない一部のBP(板金塗装)社員の過去の不祥事でも、世間の関心を集めるために、会社全体の組織ぐるみだと決めつけて報道しています》

 これは、兼重社長が従業員にLINEで送信した文章が流出したもの。内容について、社の広報担当者は7月20日、全国紙の取材に対し「文章については、当社兼重社長が従業員向けに送ったものになります」と事実関係を認めた上で「不適切な内容が含まれていることについて猛省しております」と、兼重氏のメディア批判について謝罪した。

 火に油を注ぐ形となった兼重社長のLINE流出だったが、社の信用がさらに失墜する事実が。

「組織の方針などが記された『経営計画書』の内容が炎上しています。これは企業が毎年すべての社員に配る冊子で、内容を毎朝唱和させられるそう。会社と社長の意思に従えるかどうかを示す部分では《会社と社長の思想は受け入れないが、仕事の能力はある。今、すぐ辞めてください》という記載のほか、《経営方針の執行責任を持つ幹部には、目標達成に必要な部下の生殺与奪権を与える》といった過激で独裁的な言葉が。そのほか、《社員旅行や親睦会などの会社行事の不参加者は、人事評価を下げる》といった典型的な“ブラック企業”の規約が記載されていました」(前出・社会部記者)

 経営計画書について、ビッグモーターは「会社と社員のベクトルを合わせる目的で記載した内容となります。表現が過激であるという外部からのご指摘もあり、表現の変更も含め、検討しております」とコメント。

 ほかにも、副社長などの上層部が従業員の服従度をはかるため店舗を視察する『環境整備点検』というイベントがあるなど、外部の調査委員会からもさまざまな問題点が指摘されている同社。斉藤鉄夫国土交通大臣は7月21日、ビッグモーターへの聴取の日程は調整中としたうえで、道路運送車両法の違反が認められれば、立ち入り検査も検討すると明らかにした。

過去のCMが「特大ブーメラン」

 もはや収束不能なほどに燃え広がっているビッグモーターの炎上。俳優・佐藤隆太が出演するCMもイメージの低下を懸念して放送中止を協議しているというが、そんな中、ネット上では過去に放送されていたCMが話題となっていて……。

「2006年に放送されていた、西村まさ彦さんを起用したCMが“特大ブーメラン”だと話題になっています。その内容は、中古車販売店の従業員が顧客の車を乱雑に扱い、損傷させた上で不当な査定をするというもの。ドアを拳でガンガンと激しく殴打し、叩きつけるように何度も開閉したり、運転席に座った状態でハンドルやウインカーを乱暴に扱ったり、さらには、エンジンルームの部品を力ずくでもぎ取り、その部分から激しい水蒸気を噴出させたり……。自分でそんな“破壊行為”に及んでおきながら、従業員は“高くは買い取れませんね”と言い捨てるんです。まさに今回の騒動を想起させるような内容ですが、極めつきは最後のシーン。タキシード姿の西村さんが“車売る前にお店選ばなきゃ!”と宣言するもので、不正請求が明るみになった今ではとんだ皮肉になってしまいました」(広告代理店関係者)

 ツイッターでは、

《当時からやっていたことをCMにしたのか》

《自ら暴露していたとは》

《壮大な伏線回収、特大ブーメランで草》

 など、騒動と結びつく内容に驚く声が多く寄せられている。

 多くの国民の生活に関わる中古車販売会社の、あまりに杜撰な運営体制。CMに出演していた西村が言うように、車を売る際には、店選びに細心の注意が必要だ。