●記者という職業は「個性豊かな印象」

読売テレビ・日本テレビ系ドラマ『CODE−願いの代償−』(毎週日曜22:30〜)が現在放送中だ。台湾で大ヒットしたドラマを原作に、日本版としてオリジナル要素をふんだんに盛り込む同作は、幾重にも重なる事件と欲望が渦巻くノンストップ・クライム・サスペンス。婚約者を失い絶望の淵に落ちた刑事・二宮(坂口健太郎)が、その死の真相を追い求める中で「どんな願いも叶える」という謎のアプリ「CODE」を手にしたことから物語が始まる。

今回は、同作で「CODE」の謎を追うフリーの記者・椎名一樹役を演じる染谷将太にインタビュー。自身が取材で会う記者たちの印象、主演を務める坂口健太郎が“スタッフを惑わせながら”盛り上げる現場の雰囲気、30歳にして20年ほどの業界歴を持つ染谷の現場での立ち振る舞い方について話を聞いた。

染谷将太 撮影:島本絵梨佳

○■椎名なりの記者像を作りました

――『CODE』の企画を最初に聞いたとき、どのような印象を持ちましたか?

ノンストップ・クライム・サスペンスという言葉がふさわしいドラマだなという印象でした。展開も速くて、どんどん事件が進んでいって、謎が何層にもなっていく。まず台本が読み物として面白くて、「やるのは大変そうだな」と思いつつ、撮影ではその大変さも楽しんでいます。

――染谷さんは、「CODE」の謎を追うフリーの記者・椎名一樹役を演じます。

椎名という人間はつかみどころがないのですが、軸に信念があって、ブレずに「CODE」の謎に向かっていきます。ドラマが進むにつれて明かされていくことなのですが、椎名のベースになっているエネルギーみたいなものがあって、自分もそれがブレないように演じています。

――フリーの記者役ということですが、役作りで何か参考にしたものはありますか?

具体的に何かを参考にしたわけではないんですけど、椎名が置かれた状況と、フリーの記者で謎に向かっていくという環境がすごく合っていて、作品をより魅力的で面白く描ける設定だなと思いました。なので、台本で描かれていることだけではなくて、椎名はきっと今までこういう人生を歩んできたんだろうなという台本に描かれていない部分も自分なりに想像して、かなりエンタメ化してると思うんですけど、椎名なりの記者像を作りました。

――今回もこうして取材を受けていただくなど、様々な記者と接する機会も多いと思いますが、記者という職業に対してはどのようなイメージをお持ちですか?

イメージですか! イメージ……個性豊かな印象ですね。当たり前ですけど、記者さんによって性格や考え方が違うので、質問も違う。記者の方が変わったら、自分の発言のニュアンスも変わるじゃないですか。それが面白いというか。活字に落とし込むってある種の表現だと思うので、役者の表現とはまた違うけど、そういう個性豊かな印象があります。

●現場を“惑わせる”坂口健太郎にスタッフも応戦

○■初共演の坂口健太郎は「本当に面白い方」

――主演の坂口健太郎さんとは今回が初共演になります。坂口さんとのお芝居はいかがですか?

坂口さん演じる二宮は、最愛の人を亡くしたことが原動力になって突き進んでいて、椎名とは目的が違うんですけど、向かっていくところは一緒で、いい意味でちぐはぐなバディですよね。分かりやすいバディの関係ではなく、微妙な距離感を残したままのバディになっていくので、演じていて、すごく楽しいです。

――染谷さんから見て、坂口さんはどのような方ですか?

坂口さんは本当に面白い方で、常に現場を笑わせてくれていて。坂口さんが現場にいる日といない日では、別の現場なんじゃないかと思うくらいです。カメラのレンズにはいろんなミリ数があって、撮影部の方が「50ミリ!」とかレンズ交換で声をかけ合うんですけど、坂口さんが全然違うミリ数を叫んだり、(カメラの)絞りも「はい! ニッパチ!」とか全く違う数字を言い出したりして(笑)。スタッフさんも「惑わされるな!」と応戦して、常にみんなの笑いが絶えないような楽しい現場です。



――坂口さんが冗談を言っているとき、染谷さんはどんな風に返しているんですか?

気の利いたツッコミもできないので、微笑んでます(笑)。坂口さんは本当に自然にずっとボケてるので、もはやどれがボケで、どれが素なのか分からなくなってくるんですよね(笑)。面白い方です。

――坂口さんがいる日といない日で現場の雰囲気が全く違うと、「坂口さんがいない日は自分が!」となったりは?

自分にあんな才能はないので、事故るだけです(笑)。

――ボケもツッコミも難しいですもんね……。染谷さんは子役からこのお仕事をされていますが、現場での立ち振る舞い方は、年齢によって変わるものですか?

自分の中では正直あまり変わってなくて。最近、自分が一番年下じゃない現場も多くなってきていて、演出部のスタッフさんたちも当たり前のように全員年上だったのが、自分より若い人もいます。自分は年齢を全然気にしないので、立ち振る舞いが何か変わるわけではないんですけど、不思議な感じはしますね。

木村拓哉との初共演を経て“改めて諦めた”こととは

○■自分にこんな器量はないなと改めて諦めましたね(笑)

――初めて年下のスタッフさんが現場にいたときのことは覚えていますか? 自分より年下のスタッフさんがいてドキッとしたという話もよく聞きます。

いつからか気づいたらって感じでしたね。「あれ?」みたいな。自分も少し大人になったんだなと、そのとき初めて思いました。仕事現場に年下の人がいたとき、どういう気持ちになりました?

――「しっかりしないといけない」と背筋が伸びる感じでした。何か自分にできることはないかなと。

何も意識してないんですけど、したほうがいいんですかね(笑)? 自分ができることも特にないですし、今まで通り、自分の仕事を全うしようとしているだけですね。

――自分がそう思うのは、これまで出会ったカッコいい年上の人たちが気の利いた立ち振る舞いをしてくれたからかもしれません。

なるほど! 確かに、目上の方が緊張をほぐしてくださったり、自分がやりやすいように気をつかってくださったりしたときは、すごく素敵だなって思うし、ものすごく尊敬するんですけど、自分にできる自信がそもそもなくて。

この間、木村拓哉さんと初めて共演させていただいて、どういう風にやったら僕がやりやすいかをすごく気にかけてくださったんですけど、自分にこんな器量はないなと改めて諦めましたね(笑)。



――染谷さんが一緒に仕事をしてきた先輩方はカッコよすぎて、ちょっと話が違いました(笑)。20歳になるタイミングで受けたインタビュー記事を拝読すると、子役時代はプレッシャーをすごく感じていたとか。キャリアを重ねて、30歳になった今はいかがですか?

自分がちゃんとできないと、みんなが帰れないっていうプレッシャーみたいなものは子どものときから変わらないですね。そういう緊張感が根付いてしまっているのかな。

○■リラックスして本番に臨めるように…

――その緊張はいつぐらいから出てくるものですか? 前日も次の日の仕事のことで頭がいっぱいになったり?

場合によってはそういうときもあります。でも、あまり気にしすぎても良くないので、自分はどちらかと言うと、どうやったらリラックスできるかを考えているかもしれません。やり方はいろいろあるんですけど、自分がリラックスして本番に臨めるように、わざとあくびするとか。脱力するスイッチみたいなものを作っています。

――あくびはどのタイミングでするんですか?

あえて、本番直前にカメラ前ですることもあります。

――本番直前ですか!

自分の場合は、人前であくびをすることで、「どうでもいい」って力が抜けるんですよね。いいパフォーマンスをできるようにするのも仕事だと思っているので、他の人に迷惑をかけなければ、リラックスできるようにいろんな方法を試してみるのもありなのかなと思っています。

――まねできるタイミングがあれば、あくびしてみるようにします。最後に、30代の抱負を教えていただけますか。

どんなお仕事を頂けるのか、自分には分からないですけど、自分がやったことのないことにもチャレンジしたいなと思います。今までチャレンジしたことがなかったことにもチャレンジして、また新たな気持ちで30代も働けたら、うれしいです。



■プロフィール

染谷将太

1992年9月3日生まれ。東京都出身。7歳で子役として活動を開始し、9歳のときに『STACY』(01)で映画初出演を果たした。2011年、映画『ヒミズ』(12)の主演を務め、「第68回ヴェネツィア国際映画祭」でマルチェロ・マストロヤンニ賞を受賞したほか、2012年の「第66回毎日映画コンクール」でスポニチグランプリ新人賞(『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』) 、2013年の「第36回日本アカデミー賞」で新人俳優賞を受賞(『ヒミズ』『悪の教典』)など数々の賞を受賞。現在放送中のドラマ『CODE-−願いの代償−』に、「CODE」の謎を追うフリーの記者・椎名一樹役で出演している。

衣装協力:ジョルジオ アルマーニ