2023年に入ってから、デンマーク空軍から退役予定であるF-16戦闘機が大きな注目を浴びています。日本の報道では、ウクライナに渡るのが有力視されていますが、欲しがっている国は他にもあるのです。

「そのF-16を下さい!」ウクライナ以外にも

 2023年に入ってから、デンマーク空軍から退役予定であるF-16戦闘機が大きな注目を浴びています。2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻以来、初めてウクライナ人パイロットが同軍の機体を使用し訓練を行ったからです。


退役予定のデンマーク空軍所属F-16(画像:デンマーク空軍)。

 デンマーク空軍は、現在保有しているF-16を前倒しして2025年までに退役させると発表しており、ウクライナへの供与の発表が近々あるのではと噂されています。また、製造元のロッキード・マーチンがあるアメリカも、それを容認する動きを見せています。

 しかし、このデンマーク空軍のF-16を欲していたのは、実はウクライナだけではありません。コロンビアとアルゼンチンも同機を購入する意向があると、たびたび報じられています。

 コロンビアに関しては旧式化したイスラエル製の「クフィル」戦闘機を更新する戦闘機を探しており、対米関係を意識しF-16購入に興味を示していました。

 2023年6月には既にF-16を配備しているチリに代表団が同機の能力を学ぶために訪れていたり、中古機となる予定のデンマーク空軍のF-16についても2022年に状況を確認しに行ったりしているとする報道もありました。

 しかし、コロンビアはF-16の最新バージョンであるF-16ブロック70を購入する意向とも2023年5月中旬に報じられています。またコロンビア空軍は、新型機を長期間にわたって使用したいのが真意のようで、中古のデンマーク機では、近代化のため多額の費用がかかり、機体の寿命も短いという予想のため、購入にそこまで積極的ではないようです。

全てのF-16がウクライナに行くわけではない?

 アルゼンチン空軍に関してはもっと深刻で、2015年に保有するフランス製の「ミラージュIII」戦闘機全機の退役を決定して以降、超音速の戦闘機がゼロとなっており、一刻も早く超音速戦闘機の復活を実現したいという思惑があります。


アルゼンチン軍が運用している数少ないジェット軍用機のA-4AR「ファイティングホーク」(画像:アルゼンチン空軍)。

 さらにアルゼンチンは、フォークランド紛争の影響で、イギリスからの武器禁輸措置がかかっており、他国のものであってもイギリス由来の技術が使われている軍用機の購入に制約がかかります。今回のF-16を逃すと、当分、新たな戦闘機を望めない可能性もあるのです。

 2023年2月にはアルゼンチンへデンマーク空軍とアメリカ空軍、製造しているロッキード・マーチンの代表者が訪問し交渉をしたそうですが、その最終決定が出る前に、今回のウクライナへの供与の可能性が出てきました。

 この件に関して、アルゼンチン空軍の幹部は全てのF-16をウクライナに供給する意味の発表はまだ出ていない点に触れ、アルゼンチン空軍へF-16が来る可能性はまだあることを地元報道陣に強調したようです。しかし、同空軍は同時に、現在防空任務などで使用しているA-4AR「ファイティングホーク」の維持管理や武装のアップデートの重要性にも触れたようで、F-16の購入が許可されなかった最悪の事態も想定しているようです。

※7/06 19:30 一部修正しました。