「高収入」「安心」と謳い、女性にラオスでの「売春」を薦める投稿がツイッターで出回っている(写真はイメージです)

写真拡大

2023年6月頃から「スカウト」と呼ばれる人物が「高収入」「安心」と謳い、女性にラオスでの「売春」を勧める投稿がツイッター上で出回り、問題視されている。

4月には在ラオス日本国大使館が「ラオス北西部ボケオ県での求人詐欺に関する注意喚起」という声明を出していた。

一体、ラオスで何が起こっているのか。J-CASTニュースは、外務省と東南アジア専門ジャーナリスト・泰梨沙子氏に詳しい話を聞いた。

「日本人経営」「60分3万」「日給保証15万」などと謳う

女性を風俗店など水商売に誘う「スカウト」。「日本人経営」「60分3万」「日給保証15万」などと謳い、ラオスで売春する女性を募集する「スカウト」の投稿が、ツイッターで6月に複数見つかった。

外務省ウェブサイトによると、ラオスでは売買春が厳しく取り締まられている。「買春を行っていなくとも、外国人が未婚のラオス人異性と同宿すると、治安当局に検挙されることもあります」という。

ラオス日本国大使館が4月12日、「ラオス北西部ボケオ県での求人詐欺に関する注意喚起」をウェブサイトに掲載し、「1 最近、ミャンマー及びタイと国境を接しているボケオ県の経済特別区において、高額な報酬等の好条件を提示してラオスに渡航させた後、実際は自由を拘束し違法活動に従事させるという、外国人を被害者とする求人詐欺が多発しています」と状況を明かしていた。

「2 ラオスでは治安当局による取り締まりや捜査能力が十分ではないことから、上記1の状況に陥った場合、治安当局による救出や解決が容易ではない事情があります」とし、特に「SNSや知人等」から求人情報を得た場合は「情勢を十分理解し、騙されないように十分注意してください」と注意を促した。

外務省海外安全ホームページの「ラオスの危険情報」でも4月17日、「外国人を被害者とする求人詐欺が多発しています」などと同様の文章で注意喚起しており「渡航・滞在される方は、信頼できる旅行会社等を通じ、安全な移動手段・滞在先を選ぶとともに、現地の治安情報にも注意を払い、都市部や郊外の混雑する場所にはできるだけ近づかない、夜間の外出・移動は控える、公共交通機関は極力利用しない、山間部の訪問を避けるなど、不測の事態に巻き込まれないよう十分注意してください」と呼びかけていた。

「ツイッターの件は、外務省でも把握しています」

外務省南東アジア第一課担当者は6月26日、取材に対し「6月のツイッターのような話はこれが始めてではなく、過去にも類似の件はあったので、それも踏まえて4月の注意喚起を出しています」とし「今回のツイッターの件は、外務省でも把握しています」と答えた。

担当者は「今ツイッターで出ている情報は外務省としても、必ずしも真偽を確認できているわけでありません。実際外務省は真偽について把握できる立場にありません」とも話した。

現段階で違法活動に従事させられている日本人がいるか尋ねると「個別の事案になると必ずしも網羅的に把握できているわけではないので、そういった事案が全くないかと言われると確たることは言いづらいです。他方で既に注意喚起をしているのは、これまでの経緯も念頭に置いているからです」とした。

担当者は「注意喚起に書いているように、ボケオ県の経済特区において高額な報酬等の好条件を示して違法活動に従事させる件が多発しているので、注意してください」とする。

東南アジア専門ジャーナリスト・泰梨沙子氏(ツイッター:@hatarisako)は取材に対し26日、ラオスの「高額求人」の実情をこう説明した。

「米国務省の人身売買に関する報告書や、地元メディアの報道によると、ラオス北部のボケオ県のゴールデントライアングル経済特区内にある中国資本のカジノを中心に、大規模な人身売買が行われています。敷地内では主に、SNSを利用したロマンス詐欺や投資詐欺が強要されています」
「犠牲者の国籍はタイやベトナム、マレーシアなどアジアが中心で、SNSで好条件の求人を見てラオスに入国した後、仕事の紹介料などを名目に借金漬けにされ、身体を拘束されます。ラオス人のほか、ミャンマー、タイ、ベトナム、中国など外国籍の女性や子供が、カジノや国境沿いなどの性風俗店に売られ、強制的に売春させられているケースもあります」

泰氏は「一方で、ラオスでは治安当局による取り締まりや捜査能力が十分ではないほか、汚職も懸念されることから、捜査が進展せず、問題解決が容易ではないという事態となっています」と現状を伝えている。

米国務省が発表した「2023年人身売買報告書:ラオス」の内容

米国の国営放送局ボイス・オブ・アメリカ(VOA)が2022年10月10日に報じた「権利団体:マレーシア人700人が虐待的なラオス詐欺センターに閉じ込められている」(Rights Groups: 700 Malaysians Trapped in Abusive Laos Scam Centers)の記事によると、逃亡しようとしたり、ノルマを達成できなかったりすると、殴るなど暴力行為をされたり、電気ショックにさらされたりすることもあるという。

同記事では、スイスに拠点を置く非政府研究団体「国際組織犯罪に対するグローバル・イニシアティブ」のコンサルタント、リンジー・ケネディ氏が、2022年5月時点でゴールデントライアングルのエリアには意思に反して強制労働に従事させられている人が数千人いると考えていると伝えている。

米国務省が発表した「2023年人身売買報告書:ラオス」(2023 Trafficking in Persons Report: Laos)によると、ラオス政府は2022年に75人の人身売買被害者を特定し、その内67人が性的人身売買の被害者だったという。特定された性的人身売買被害者のうち1人は外国人だった。外国人被害者は虚偽の求人情報につられてタイに誘いこまれ、人身売買業者はボートで国境を越え、ラオスにある経済特区に移送するという。

同報告書では、人身売買業者はパフォーマンスを発揮できなかったり、服従しなかったりする被害者がいると処罰するとも指摘。身体的虐待をしたり、賃金を横取りしたり、借金づけにしたりするという。これらに限定されず、販売ノルマを達成できない人や採用時の借金を返済できない人を、同様の詐欺計画で強制労働、家事労働、性的人身売買で強制労働させるため、他の犯罪ネットワークに「転売」する可能性があるとする。

ラオスでは外国人がポルノと児童ポルノの組織を運営しており、大人と子供の被害者を性的人身売買、労働力の人身売買の対象にしているという。同報告書には、ミャンマー、中国、ロシア、タイ、ベトナム人の一部は、ゴールデントライアングル経済特区で性的人身売買の対象になっていると書かれており、何千人もの非正規移民労働者も借金に基づく強制労働の危険にさらされているとする。