5類移行後に感染した人(疑いも含む)に行った簡易インタビューから、20名のリアルな声を取り上げます(写真:Ryuji/PIXTA)

7日、松野博一官房長官が記者会見で、新型コロナウイルスの患者数が「緩やかな増加傾向にある」「重層的に感染状況を注視したい」などとコメントしたことが大きく報じられました。

この日は感染症法上の位置付けが2類相当から季節性インフルエンザなどと同じ5類に変更された5月8日からちょうど1カ月の節目。感染者数の集計も「全数」から「定点」に変わるなど、全体の動向が見えにくくなったこともあって、「気をつけよう」「また不安をあおるな」などと賛否の声が飛び交っています。

実は私自身も5類以降後に初めて夫婦で感染し、身をもって現在の状況を知ることができました。さらにその際、「ネット上の記事やコメントとは違うことがいくつかあった」という思いから、すぐに独自取材を開始。発熱外来の病院、処方箋薬局、学校施設などで、5類移行後に感染した人(疑いも含む)に1〜3分程度の簡易インタビューを重ねました。

オンラインを含めると、取材対象者の数は100人超。任意のインタビューであるにもかかわらず、感染者の現状がうかがえるリアルな声が多数集まりました。あらかじめ誤解のないように書いておくと、ここでは危険をあおるようなことや、医療的なことにふれるつもりはありません。

また、簡易インタビューは東京都の中野区と杉並区の一部地域で行ったものに過ぎず、みなさんに伝えたいのは「現在の感染者がどんな状況で、何を感じているのか」のみ。「いくらかの参考になれば」という意図のもとで、ピックアップした20名のリアルな声を挙げていきます。

高熱で病院へ行く?検査はする?

簡易インタビューで尋ねたのは、主に「感染は何回目か」「症状と体温」「通院や検査の有無」「会社や学校などへの影響」「ネット上で言われている『風邪と同じ』という印象はあるか」の5点。

まず現在、感染していない人にとって真っ先に気になるのは、「もし高熱などの症状が出たら通院や検査をするのか」でしょう。そこにまつわる5人の声を挙げていきます。

「以前かかったときに買った検査キットと解熱鎮痛剤があったので、病院は行きませんでした。陽性でしたが、38度台まで出た熱は2日で下がったし、大きな問題はなく終了。もう少し長引いたら薬をもらいに病院へ行こうと思っていましたが、いつかかるかはわからないので、常備しておいてもいいかもしれませんね」(30代女性)

「39度まで熱が出たのはひさびさだったので病院に行ってみたら、『検査はしなくてもいい』と言われました。それどころか、『薬を飲んでおけば大丈夫だから病院には来なくてもよかった』という感じで。けっきょく熱は4日間くらい続いて、せきとのどの痛みも1週間ちょっとはありましたが、『これが風邪とかと同じような扱いってことなのかな』と解釈しました」(40代男性)

「私は発熱したら受診して検査するように会社から言われていたので、迷わず病院へ行きました。けっきょくコロナ陽性で、その週の3日間強制休暇になりましたが、熱があったときですら、カロナールを飲めば平熱くらいまで下がったので普通に働けたと思うんですよね。こういう会社側の対応がアップデートされていないところって、ウチだけじゃなくけっこうあると思いました」(30代男性)

「上司に『熱が出たから病院に行きました』と報告したら、『コロナはもう病院なんかに行かなくていいんだよ』と叱られました。コロナではない病気かもしれないのに、勝手に決めつけられて……。ふだん決して悪い人ではない上司がこんなことを言ったのも、コロナ禍の反動なのかなと思います。けっきょく熱は3〜4日続きましたし、後味が悪いですね」(20代男性)

「小学生の子どもにコロナのような症状が出ましたが、熱は2日で下がりました。病院では溶連菌とかの検査はしてくれたけど、コロナは検査キットを買って自分で調べさせました。コロナに関しては検査せずに、自覚がないまま陽性で登校している子どもがけっこういるのかもしれませんね」(30代女性)

基本方針は、症状が重くなければ「行かなくてもいい」

私が通院したときも「検査はしなくてもいい」と告げられたほか、東京都の「発熱などの症状が出たら」という案内用紙を渡されました。そこに書かれていたのは、「医療機関に行く前にまず自分で検査し、陽性でも症状が軽ければ自宅療養して、5日間は外出を控えることを推奨」などの言葉。つまり、病院へは症状が重くない限り、「行かなくてもいい」「症状が軽ければ行かないほうがいい」のが基本方針なのでしょう。

ただ現実的には、いきなり38〜40度もの高熱が出て驚きや不安から病院へ行く。あるいは、家に薬が常備されていないから行く。会社に義務づけられているから行くという人が多いようです。

今回、簡易インタビューを実施したことで最も特徴的だったのは、「初めてかかって戸惑っている」という人の多さ。

「私は2日で熱が下がりましたが、のどがかなり痛かったので、『多分コロナだったのかな』と思っています。周囲にも初めてコロナにかかったという人がけっこういて、子どものママ友グループLINEにも3人いたし、犬の散歩仲間にも2家族いたし、夫も『会社でも初めてかかって休んでいる人が3人いる』と言っていたので」(30代女性)

「3年間、大丈夫だったので、『ウチの家族はコロナにかからない』と勝手に思い込んでいましたが、5類になってすぐに4人全員が感染して驚きました。夫は自分がかかってうつしたと申し訳なさそうで、小学生の子どもたちは4日間ずっと寝てましたね。一番症状が軽かった私ですら39度の熱が3日も出て、血痰も1週間以上出ていましたし、『今でもこんなに強い症状があるものなの?』というのが正直な感想です」(30代女性)

「感染してから5日くらい毎朝39度くらいまで熱が出てヘコみました。初めてですが『以前より軽くなった』と聞いていたので。食欲もないし、便通もおかしくなったままだし、5類と言えどもけっこうくるなという感じ。ただ、頓服薬を飲めば37度くらいまでサーッと下がるので、絶望感とかはなかったです」(40代男性)

「思っていたより症状が重かった人」の声

この3人に共通していたのは、「思っていたよりも症状が重かった」という実感。また、過去にかかったことがある人から、「『私のときよりはずっと楽だと思うよ』などと言われるのが嫌だった」という声もありました。

「症状が思ったよりも重かった」という声が多かったので、参考までにもう少し挙げてみましょう。

「熱は38度8分まで出て4日程度で下がりましたが、2週間過ぎてもまだ血が混じった痰が取れず、倦怠感と息苦しさが残っていて休日の外出もままなりません。後遺症とまでは言ってはいけないんだろうけど、これがまだまだ続くなら精神的に病んでしまいそうです」(30代女性)

「ちょっと驚いたのが39度近い高熱が3日続いたあと、36度台まで下がって2日間過ぎたので『もう治るのかな』と思っていたら、また38度台が4日間も続きました。全部初めてのことなので、再び熱が上がりはじめたときは、『今度はコロナ?インフルエンザ?違う感染症?』とか、けっこう不安でしたね」(40代男性)

「風邪だと言われたら風邪ですが、二十何年かぶりに39度台の体温計を見た僕のような人間から見たら、“生涯で最もやっかいな風邪”という感じ。熱が下がらなかった1週間で、『もしこのまま死んでしまったら……』と何度か考えてしまいました。もう全快したので今思えばバカなのですが、そう考える人もいるってことです」(40代男性)

「夫が病院で陽性の判定が出て、2日後に私も熱が出たので病院に行ったら、『コロナで間違いないから検査はしなくても大丈夫』と言われました。けっきょく私は2週間近く熱が下がらなくて、3週間過ぎた今も微熱があってせきも出るので薬を飲んでいます。初めて感染しましたが、正直もう二度とかかりたくないですね」(30代女性)

今回の簡易インタビューでは、ほとんどの人が体温の推移を教えてくれましたが、「早ければ1〜2日、普通で3〜4日、遅ければ1週間以上、高熱が続く」という傾向が見られました。その他の症状がもう少し長引く人は少なくないものの、「高熱は必ず下がるし、薬で抑えながら仕事や家事ができる」という実感を語る人が多かったのです。

職場閉鎖、臨時出費、小児科の状況

仕事や学校、家庭内などにおける感染の影響についても、さまざまな声が集まりました。

「今、感染2日目で38度台まで熱が出て困っているところです。職場のチーム7人が全員感染してしまって、仕事が回らない状況で……。1〜2日のズレで感染者がバタバタと増えていったから、営業先に行けないし、リモートで済ませられない現場仕事なので、ただ回復を待つだけ。業務再開にはあと5日間くらいかかりそう」(50代男性)

「20代の娘が感染して、38度7分まで高熱が出ました。熱は2日くらいで下がって会社は2日半ほど休みましたが、その後も鼻が詰まりっぱなしでかんでばかりだし、せきもけっこう出るので、毎日通勤している今も肩身が狭いようです」(50代女性)

「夫婦で感染しましたが、病院に行っても検査すらしないし、のどを1秒だけ見て、風邪薬をたくさんもらっておしまい。症状は3日程度で治まってよかったけど、月末に夫婦で1万円を超える臨時出費という点では、『家計的にけっこう痛いな』と思いました。症状は意外にキツかったけど、次は病院に行かないかも」(30代男性)

「自分がかかってみてわかりましたが、この程度で経済を止めるのはありえないし、もう医療現場はひっ迫しないと思うけど、個人が『感染予防の対策や準備できることがあるなら、ちゃんとやったほうがいい』とは思いました。だって自分は会社を3日も休んで一人暮らしの自宅待機になって、薬や食事の準備とか苦労したので」(20代男性)

「親子で感染しましたが、大人の内科は空いていて選べるくらいなのですが、小児科は診察と検査が終わるまで2時間以上かかってヘトヘトでした。もともと数が少ないのと、ほかの感染症とかも流行っているようで、子どもの患者も大変ですが、小児科医さんたちが大丈夫かなと心配になります」(30代女性)

一時的な職場閉鎖、残る症状と職場の目、臨時の医療費、一人暮らしの対策、小児科の状況と、それぞれの立場が伝わってくるリアルな声でした。しばらくの間は同じようなことを感じる人が多いのかもしれません。

今回の簡易インタビューで、「これは良くないことだな」と感じたのが、感染者に対する周囲の対応。下記のように感染者たちを嘆かせるような声が少なくなかったのです。

「38度台の高熱が出たとき、直感的に『もしコロナとかだったら夫と2人の子どもにうつしたくない』と思いました。上の子は学校の試験前だし、下の子はサッカーの試合があるし、夫は仕事が忙しそうなときなので。だから、すぐにネットでいろいろ調べましたが、『熱くらいで病院に行くな』とか、『ただの風邪なのに検査するやつは頭がおかしい』とか酷い言葉が書かれていて、嫌な世の中だなと思いました」(40代女性)

「5月以降も気をつけていたけど、かかってしまっておそらく両親と祖母にうつしてしまいました。私は39度近い熱が3日間出て治まりましたが、父と祖母は基礎疾患があるので心配な日々が続いています。上司や同僚には『今のコロナはただの風邪だから大丈夫』と言われましたが、とてもそうとは思えなくて……」(20代女性)

「熱は3日で下がりましたが、その後もマスクをしていたら『今でもしてるの?』と半笑いされました。こっちは他の人にうつさないよう気をつけているのに、相手の気持ちを汲み取れない人がたくさんいて残念です」(20代女性)

年齢も立場もメンタルも病歴も、みんなそれぞれ違う

たとえば、「3日間、38〜39度の熱が出た」「2〜3週間、のどの痛みがあり、せきが止まらなかった」という今回のインタビューで多かった症状を「どう思うか」の個人差は決して小さくないでしょう。「普通の風邪と大差ない」「だから大したことない」と感じる人と、「普通の風邪と同じとは思えない」「だから辛いし不安」と感じる人の両方がいて、感情の差は大きなものがあります。

また、「家庭や仕事の環境によって不安が募りやすいかどうか、実際に支障が出やすいかどうか」の個人差もあるでしょう。それぞれ、年齢も立場もメンタルも病歴なども違うのですから、「自分のように思わない人がいるかもしれない」という気持ちは心の中に持っていてほしいところです。

実際、ネット上にコロナ感染の症状や辛さなどを書き込むと、「それは風邪の症状そのもの」「風邪だからほっとけば治る」「大げさにさわぎたいだけの人」「またコロナ禍の社会に戻りたいのか」などと冷たく言い放つようなコメントが多発しています。

感染者が症状や辛さを吐露することすら許さないようなコメントは、やはり寂しさを感じざるを得ません。「風邪と同じ」という主張の是非はさておき、目の前に感染者がいたとき、「風邪は万病の元」という言葉を思い出して優しい言葉をかけてみてはいかがでしょうか。

(木村 隆志 : コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者)