ポケモンバトルの公式世界大会出場を決めたプレイヤーが「ゆびをふる」しか覚えていないポケモン6体で韓国大会の決勝に挑もうとしたところ大会が中止&世界大会出場権もはく奪に
ポケットモンスター公式の世界大会であるポケモンワールドチャンピオンシップスのゲーム部門(VGC)に取り組む韓国のゲーマーが、世界大会進出を決める韓国大会の決勝で「ゆびをふる」を使うことを画策し失格になりました。参加者がゆびをふるを使おうとした理由は、「大会運営のプレイヤー軽視に抗議するため」です。
A Pokémon Tournament Was Canceled After All 4 Finalists Protested Using Metronome - IGN
韓国大会決勝に進出し、失格となった当事者の1人であるNashさんは、その経緯をTwitter上で説明しています。
How we got disqualified for playing Metronome. pic.twitter.com/AR6ukdApMU— Nash (@NashVGC) June 3, 2023
Nashさんは「アジアのサーキットで起きている問題を皆さんが把握しているかどうかわかりませんが、他のアジア地域同様、韓国のポケモンプレイヤーにとってもかなり苦しい1年でした」と言及し、最初に韓国のポケモン界隈で起きた出来事を時系列で説明しています。
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韓国のVGCのフォーマットについて少し背景を説明します。新型コロナウイルス以前は、決勝に至るまで3種類のリアル大会があり、それぞれにサーキットポイントが付与されていました。このサーキットポイントは韓国だけのもので、日本のような独立したサーキットが存在するわけではありません。ただし、このようなリアル大会も2019年を最後に開催されておらず、現在の韓国のVGCコミュニティでは、毎年1度だけオンラインでダブルエリミネーション形式の大会(ポケモントレーナーズカップ)が開催されるだけです。
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2022年、ポケモンワールドチャンピオンシップスが復活した時、Pokémon Koreaがどのように招待状を渡すつもりなのか、プレイヤーは興味を持っていました。しかし、特に説明もないまま、それまで通りオンラインでポケモントレーナーズカップが開催されました。そして大会終了後、ポケモントレーナーズカップの上位4選手がポケモンワールドチャンピオンシップスのDay2に招待されると発表されました。ポケモントレーナーズカップの対象はマスターズディビジョン(日本の場合、1997年以前生まれ)のみだったため、ジュニアディビジョン(日本の場合、1998年以降生まれ)とシニアディビジョン(日本の場合、1995年から1998年までの生まれ)はそもそも対象外となってしまいました。
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そして2023年も3月まで何の詳細も発表されませんでした。しかし3月になり、大会の詳細が発表されました。
基本的には、各グローバルチャレンジの韓国人トップ50人にポケモントレーナーズカップへの招待が行われました。そして、150人のプレイヤーがBO1のダブルエリミネーション形式の大会に参加することとなりました。たった10試合ですべてが決まってしまうため、多くのプレイヤーが不満を抱いており、この形式は「サブアカウントや試合操作に弱い」という批判もあります。
そして実際、日本と同じ複数の問題が発生しました。プレイヤーは再試合に次ぐ再試合を続けながらも、プレイをやめることはできませんでした。さらに、大会の主催者であるPokémon Koreaは、大会を無効とすることを決定しました。この大会でトップ16に入ったプレイヤーは補償を求めたものの、結局Pokémon Koreaは該当者に来年のポケモントレーナーズカップへの招待を約束しただけです。ポケモントレーナーズカップはグローバルチャレンジで1600点を獲得することができるだけの大会であり、トップレベルの大会とは程遠く、基本的に何もないのと同じです。また、この通知は壊滅的なメッセージとして韓国のポケモンプレイヤーに受け取られ、来年もポケモンワールドチャンピオンシップスの世界大会進出を決める大会形式がこのままであることを暗示していました。そして2週間後、再びポケモントレーナーズカップの予選が開かれました。
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この2度目のポケモントレーナーズカップでトップ4に進出したのが、ブルー、サンユン、ミジャ、私(Nashさん)の4人でした。つまり、私たちはポケモンワールドチャンピオンシップスのDay2への招待権を獲得したということです。しかし、ポケモンワールドチャンピオンシップスに出場するにはライブ配信もされるポケモントレーナーズカップの決勝に出演(つまり顔出し)する必要があります。この決勝はポケモントレーナーズカップにおける1位から4位を決めるためのもので、豪華な賞品も用意されているものの、すでにポケモンワールドチャンピオンシップスへの参加が確定しているため、それほど大きなリスクは存在しません。
そこで、決勝に進出した4人で「ゆびをふる」でバトルすることを決めました。これは我々のコミュニティで起きている諸々の問題、つまりはリアル大会が開催されないことへの不満、大会形式の問題、マスターズディビジョン以外の軽視、問題発生時の補償の不備などに対する抗議の意味を含みます。しかし、これらすべての背後にある本当の問題は、公式が我々プレイヤーに対して絶対的な無礼を働いているということです。
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決勝が開催される予定だった週、Pokémon Koreaは突然ブルーにメールを送り、理由も告げずに彼を失格にしました。ブルーが失格理由を聞くために電話したところ、Pokémon Koreaは回答を拒否しました。そしてすぐに別のプレイヤーのBetagoにDay2への出場権を譲りました。しかし、Betagoも我々3人の意見に同意し、ゆびをふるバトルが開催される予定でした。
決勝では事前にゲーム内のオンラインツアーシステムで使用するポケモンを決めておく必要があったので、6月2日にこれを実行しました。決勝は4日に予定されていました。
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しかし、今日(3日)になって決勝に出場する予定だった4人全員にメールが届き、公式サイトとPokémon KoreaのTwitterアカウントから、4人全員が失格になったという通知を受けました。
その理由は以下の通りです。
ある特定のわざを覚えたポケモンを全員が選出したため。
なお、Pokémon Koreaによると以下は禁止行為に該当するとのことです。
・他の参加者に危害を加える行為、または不快なイメージを与える行為。
・その他、任天堂、株式会社ポケモンおよびその子会社が不適切と判断する行為。
つまり、Pokémon Koreaは我々が使用する予定のポケモンを見て気に入らなかったため、ゆびをふるを使う予定だった我々4人を失格にしました。
決勝に進出したプレイヤーが全員「ゆびをふる」という、すべてのわざからランダムに1つを使うというポケモンきっての運任せなわざを使う予定だったものの、この決勝戦は開催前に中止されてしまいました。これにより、Nashさんを含む4人はポケモンワールドチャンピオンシップスへの出場権を失ってしまったということになります。
Pokémon Koreaは2023年6月3日に公式サイト上で「ポケモントレーナーズカップ2023のマスターカテゴリの4選手による禁止行為の発覚に伴う出場権はく奪および大会中止について」というリリースを出し、ポケモントレーナーズカップが中止となったとことを公表しています。
포켓몬 공식 사이트
https://pokemonkorea.co.kr/news/5/13270
Pokémon Koreaは大会を中止することになった経緯を「覚えているわざが特定のひとつのみになったポケモンが複数登録されており、正常な対戦および大会運営が困難と判断したため」「複数の選手で上記の内容(ゆびをふるしか覚えていないポケモンを登録)を確認したため」と説明しています。
さらに、上記の行為について「各種公式大会で禁止行為と定めている『他の参加者に危害を加える行為、または不快なイメージを与える行為』および『その他、任天堂および株式会社ポケモンおよびその子会社が不適切と判断する行為』に該当します」とも説明しています。
なお、ポケモンワールドチャンピオンシップスへの出場権をはく奪されることとなってしまったプレイヤーのひとりであるサンユン氏は、自身のTwitter上で「ポケモントレーナーズカップ2023の決勝戦で私が使う予定だったメンバー。私はポケモントレーナーズカップとPokémon Koreaに抗議しましたが、自分の選択を後悔していません。居心地の良いポケモンワールドチャンピオンシップスへの招待ではなく、権利のために戦うことを選んだ誇り高い仲間たちに多大な感謝を示したいと思います」とツイート。ツイートにはゆびをふるしか覚えていない6体のポケモンのスクリーンショットが添付されています。
The final team I locked for PTC 2023 fianls.
We all DQed for protesting against TPC and Pokemon Korea, but I'll never regret my choice.
Huge thanks to our proud mates, choosing to fight for rights instead of cozy DAY2 invite - @NashVGC @CandyBong__Z @betagovgc @blue_vgc pic.twitter.com/e4GHloIC57— Bingha (@Sangyoon_Jeong) June 3, 2023
この騒動に対して、2014年のポケモンワールドチャンピオンシップスのVGC部門マスターズカテゴリで優勝したPark Se-jun氏も「韓国とアジアのVGC運営の現状はとんでもなく混乱しており、ポケモントレーナーズカップはVGCを愛し続けるプレイヤーに対して全く敬意を払っていません。抗議は我々が長年にわたって経験してきた現場の反応のすべてを表しています。我々は運営の助け、対話、そして変化を切実に望んでいます」とツイート。
The current state of Korean+Asian VGC operation is a ridiculous mess, and TPC is showing absolutely no respect to players who love and care about VGC. DQ'ing is all the real response we've got through the years.
We desperately need help, communication, and change.
Hear us, TPC. https://t.co/JQiVBV0V2Q— Sejun Park (@pokemon_tcg) June 3, 2023
2016年のポケモンワールドチャンピオンシップス・VGC部門マスターズカテゴリで優勝したWolfe Glick氏は韓国での騒動を動画化してYouTube上で公開しています。
Korean Players Disqualified for using Metronome - YouTube
Nashさんたちの活動はアジアだけでなくアメリカにまで波及しており、ミルウォーキーで行われる公式大会にゆびをふるしか覚えていないポケモンで出場予定だとする選手も登場しています。
Bringing Metronome to the Milwaukee Regional Championships in solidarity of the Top 4 people DQ at Korean Nats
Good luck and have fun to all my opponents. pic.twitter.com/DuVf7Z0IN7— METRONOMES STRONGEST SOLDIER (@thatguyinabeani) June 3, 2023