オリックスのフランク・シュウィンデル、DeNAのタイラー・オースティン、ソフトバンクのウイリアンス・アストゥディーヨ(左から)【写真:荒川祐史、中戸川知世、藤浦一都】

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2013年にはブランコ、バレンティン、マートンでセ打撃4タイトル占める

 プロ野球は30日から「日本生命セ・パ交流戦」に突入する。ただ、29日現在、両リーグの打率10傑に外国人助っ人は1人もいない。パ・リーグに至っては、昨年まで5年連続で年間打率10傑に名を連ねる助っ人が現れず、2017年に楽天のカルロス・ペゲーロ外野手が.281で8位にランクされたのが最後となっている。さらに過去3年間、両リーグを通じて打率、本塁打、打点、最多安打の打撃4部門でタイトルを獲得した助っ人はいない。外国人野手がパッとしないのはなぜか──。

 1983年から2019年までの37年間で、外国人助っ人が両リーグを通じ打撃タイトルに絡まなかったことは、2005年と2015年の2度しかない。反対に外国人選手だけでリーグ4部門を独占したケースは、セで阪神のランディ・バースが2年連続4冠に輝いた1985年と1986年をはじめ7度、パでも阪急(現オリックス)のブーマー・ウェルズ内野手が4冠を獲得した1984年など2度あった。最近では2013年のセで、DeNAのトニ・ブランコ内野手が首位打者と打点王の2冠、ヤクルトのウラディミール・バレンティン外野手が本塁打王、阪神のマット・マートン外野手が最多安打を占めている。それに引き換え、ここ3年間は異常事態と言えるだろう。

 現役時代にヤクルト、日本ハムなど4球団で捕手として活躍した野球評論家・野口寿浩氏は「ここ数年、トレーニング方法や食生活などの進歩で、日本人でも160キロ近いストレートを投げるピッチャーが増え、レベルが格段に上がったことは間違いない。外国人選手の数字が上がらないことにも、影響していると思います」と指摘する。もともと来日当初は、変化球やボール球を使った日本独自の配球に戸惑う助っ人が多かったが、日本人投手の地力が上がり、外国人野手にとってなおさら対応が難しくなっているというわけだ。

「NPBの球団が外国人野手に求めるのは、やはり長打力というケースがほとんど。多少の粗さには目をつぶることになるので、打率十傑の敷居が高くなるのも、無理はありません」と野口氏は付け加えた。

惜しまれるオースティン、ギッテンスの故障

 現状の数字はともかく、今季NPBで最も存在感を放っている外国人野手として野口氏が挙げるのは、セ・リーグ首位を走る阪神の3番に定着しているシェルドン・ノイジー外野手。「入団発表の段階で岡田(彰布)監督が『広角に打って、つなぎの役割をしてほしい』とホームランを求めない姿勢を明確にしたことがよかったのだと、私は思っています」と説明する。

 また、これぞという有力助っ人野手に、不思議に故障が相次いだことも見逃せないと言う。「DeNAのオースティン(外野手)と、楽天のギッテンス(内野手)は、怪我をしないで1シーズン通してやれれば、凄い数字を残すと私は見ています」。

 来日4年目のオースティンは、当初から怪我が多く、2021年には28本塁打を放ち、打率もリーグ6位に相当する.303をマークしたが、規定打席にわずか4打席足りなかった。昨年2度にわたって右肘を手術した影響で、現状では守備位置がファーストに限定され、代打出場がほとんどとなっている。一方のギッテンスも、昨年の来日デビュー戦で左手首を骨折し、21試合出場と実力を発揮できず。オープン戦好調だった2年目の今季も、コンディション不良で開幕メンバーから外れ、現状では1軍出場がない。

 今季、今のところ規定打席をクリアした上で外国人選手最高打率をマークしているのは、セがヤクルトのドミンゴ・サンタナ外野手で13位の.289。パは西武のデビッド・マキノン内野手で、こちらも13位の.253だ。今後、ペナントレースに爪痕を残す助っ人野手は、果たして誰だろうか。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)