これからビジネスパーソンとして活躍していくために、入社1年目から身につけたいスキルを紹介します(写真:kikuo/PIXTA)

リモートワークや副業が認められるなど、ここ2、3年で働き方が大きく変化した令和の今では、昭和・平成の「ビジネス環境」や「考え方」を前提とした仕事術では、Z世代の若手社員にとってマッチしなくなっています。

では必要なのは何か。多くのビジネスパーソンを教育してきたグロービス経営大学院の田久保善彦氏と中村直太氏は、より良いキャリアを築くために「Will」「Skill」「Network」の3要素が欠かせないと指摘します。

本稿では『読めば3年後の未来に先回りができる 入社1年目からの「働き方」』より一部抜粋・再構成してお届け。「仕事がデキる人に共通する、2つの本質的なスキル」について解説します。

ポータブルスキルとは何か

ビジネスシーンでは、頻繁に「スキルを身につける」「スキルアップする」という言葉を耳にします。スキルを身につけ、それをより高めていくことは、仕事をしていくうえでとても大切なことです。この「スキル」とは、何かを実現するための「能力」や「技術」のことですが、これらをまとめて「ビジネススキル」と呼びます。

ビジネススキルにも、コミュニケーションスキル、パソコン・ITのスキル、プレゼンテーションスキル、セールススキルなど、さまざまな種類があります。ここでは、これからビジネスパーソンとして活躍していくために、入社1年目から身につけておくべきスキルについて見ていきます。

ビジネススキルには大きく分けて2種類あります。どの仕事でも、どの職場でも必要な「ポータブルスキル」と、仕事、職場、企業、会社によって異なり文脈依存性の高い「アンポータブルスキル」の2種類です。

「ポータブルスキル」とは、文字どおり、個人の能力として持ち運ぶことができるスキルです。また、職場を変えても、職種を変えても、会社が変わっても通用するスキルです。その中には、仕事の仕方や人とのかかわり方といった「基本的なスキル」と、会社の中の部署の特性などに応じた「専門的なスキル」があります。

基本的なスキルには、「ビジネスマナー」「コミュニケーションスキル」「パソコン・ITのスキル」「プレゼンテーションスキル」「情報収集スキル」「計画を立てるスキル」「問題解決スキル」「数値分析スキル」「チームで仕事をするスキル」などがあります。専門的なスキルには、さまざまな部署でとくに必要とされる「デジタルマーケティングのスキル」「法人営業に関するスキル」「会計の知識・スキル」などが挙げられます。

もう1つのスキルは、その業界や職場から一歩外に出ると必要がなくなる「アンポータブルスキル」です。各業界では、その業界特有の知識や技能が求められますが、それらはほかの業界ではあまり必要とされません。また、自社システムの操作能力など特定の会社の中だけで通じるスキルもあるでしょう。

このように、ビジネススキルにはさまざまな「ポータブルスキル」と「アンポータブルスキル」とがあり、どちらのスキルも身につけたいものですが、まずは、基礎的な力として活用できる範囲が広い「ポータブルスキル」から身につけるのがおすすめです。

まずは正しく日本語を使うことから

「ポータブルスキル」の中でもとくに最初に身につけたいのは、「正しい日本語を使う」というスキルです。そんな基礎的なことなのかと思われるかもしれませんが、これはとても重要です。正しい日本語を使うことができれば、誤解を生みにくく、円滑なコミュニケーションが取れ、説得力のあるプレゼンテーションをすることにもつながります。

もし、取引先の相手に、この人は、「まともな日本語が書けない・話せない」と思われてしまったら、交渉相手として認めてもらえないかもしれません。さらに、日本語がきちんと使えるということは、論理的に物事を考えるということにつながります。逆に言えば、正しい日本語を使えない人は、論理的に考えることを苦手にしている場合が多いとも言えます。

加えて、正しい日本語に関係して1つ注意しておきたいのが尊敬語と謙譲語です。ビジネスの場面では、この2種類の表現をよく使いますが、これを正確に使うのは非常に難しいです。

もし自分の日本語が正しいかどうか心配なら、日本語を学ぶための本がたくさん出版されていますので、それらを活用して、ぜひ学んでみてください。もちろん、英語を使う環境で仕事をしているなら正しい英語、中国語が必須の環境なら正しい中国語が必要です。

仕事に向き合う姿勢とマナーを身につける

身につけたいのは、人から「信じるに足る人間だ」と思ってもらえる「仕事に向き合う姿勢とマナー」です。これも、トレーニング可能なある種のスキルです。


自らがマナーを身につけるために、まず、「あなたが信頼する人はどのような姿勢で仕事に臨んでいるか、またはマナーを身につけているか?」という問いに対する答えを考えてみてください。そうすれば、信頼できる人の条件が見えてきます。

例を考えてみてください。そうすれば、信頼できる人の条件が見えてきます。例えば、「時間を守る」「約束を守る」「やると言ったことは必ずやる」といった基本的なことはどうでしょう。これらができる人なら信頼できる可能性が高まるはずです。

また、「しっかりとあいさつをする」「しっかりとお礼をする」などは、信頼につながるマナーです。そして、信頼できる人が身につけている仕事に向き合う姿勢やマナーを挙げていけば、「自分に足りないものは何か」「自分はどこを直せばいいか」も見えてくるでしょう。

加えて上司や先輩から「信じるに足る人間だ」と思われることは、取引先からそう思われることと同じくらい大切です。なぜなら、上司や先輩たちは一緒に仕事をする仲間であり、自分に仕事を預けてくれる人だからです。彼ら・彼女らから「信じるに足る人間だ」と思われるために、「何を考えているのか」を知ることも重要です。

自分に仕事を預けてくれる上司や先輩はどういう考え方をするのかを理解し、自分に求められていることを想像して、信頼を勝ち得ていくといいでしょう。

(田久保 善彦 : グロービス経営大学院 経営研究科 研究科長)
(中村 直太 : グロービス経営大学院 教員)