いくつかの不手際と不運が重なって、目的地から約1450kmも離れたジャマイカ・モンテゴベイ空港に到着した乗客に対して、フロンティア航空は謝罪と補償を発表した(画像は『Eyewitness News 2023年5月6日付Twitter「Travel mishap lands NJ woman 900 miles from destination with no passport in new country」』のスクリーンショット)

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昨年11月、冬の寒いニュージャージー州からフロリダ州へ向かう予定だった乗客が、どういうわけかカリブ海に浮かぶジャマイカに到着してしまった。まるでコメディ映画『ホーム・アローン2』のような出来事を、米テレビ局『6abc Action News』や旅行系ブロガーサイト『One Mile at a Time』などが伝えている。

米ニュージャージー州グロスター郡在住のビバリー・エリス=へバードさん(Beverly Ellis-Hebard、年齢不明)は、所有するセカンドハウスがあるフロリダに行くため6週間に1回の頻度で飛行機を利用しており、自身を「旅慣れている」と称する。昨年11月6日も彼女は、最寄りのペンシルベニア州フィラデルフィア空港からフロリダ州ジャクソンビル空港行きのフロンティア航空の便に搭乗する予定だった。

ビバリーさんは、フロンティア航空のゲートに到着して「ジャクソンビル行き」と表示されているのを確認したという。その後、搭乗係員にトイレに行く時間があるか聞いたところ、「ええ、20分ありますよ」と言われたそうだ。ビバリーさんは当時、背中の手術から回復途中で歩行に時間がかかっていたようだが、トイレを済ませてゲートに戻った時は、すでに大方の乗客が搭乗しており、もうすぐゲートが閉まるというタイミングだったと述べている。

「搭乗しようとしたら、係員から旅行バッグがちょっと大きいようだと言われたので、搭乗口の手荷物サイザー(計測器)にバッグを入れたんです。その時に腕を擦って血が出ました。」

そのように明かしたビバリーさんによると、搭乗係員は「さあ早く、搭乗券をください」と急かし、さらに10歩ほど歩いたところで「ビバリー・エリス=へバードさんですよね?」と名前を確認してきたという。ビバリーさんが「そうよ! 今、搭乗券を渡したじゃない、それをスキャンしたのはあなたでしょう?」と答えると、「それならいいんです、では行きましょう!」と係員は慌ただしく彼女を飛行機に送り出したそうだ。

事態が思わぬ方向に行っていることにビバリーさんが気付いたのは、キャビンアテンダント(CA)に腕の傷の手当てをしてもらった時だった。

ジャマイカに着陸したらリラックスできますからね」とCAに言われたビバリーさんは、思わず笑いながら「ジャマイカに行きたいのはやまやまだけど、私には住んでいるビーチがあるのよ」と答えた。

ところがCAは「当機はジャマイカ行きですよ」と述べ、その表情から冗談ではないことが明らかだった。乗務員がビバリーさんに伝えたところによると、ジャクソンビル行きはゲートが変更になったようで、ビバリーさんの乗った飛行機はジャマイカのモンテゴベイ空港に向かっていることが告げられた。

ここでもうひとつの問題が浮上した。ビバリーさんは国内線を利用するつもりだったため、パスポートを所持していなかったのだ。パスポートなしで他の国に入国すると、どうなってしまうのだろうか。乗務員からも「それはまずいですね」と言われてしまった。

最終的にジャマイカ当局が“厳密には米国領土と見なされる”として、ビバリーさんが搭乗ブリッジに留まることを許可してくれたので入国審査に向かう必要はなかった。ビバリーさんは数時間後の折り返しの便に乗るまで、乗務員と一緒に搭乗ブリッジで待つことになったという。

ビバリーさんが地元テレビ局『6abc Action News』の調査チームに依頼したことで、今回の不運な出来事が明るみに出た。調査チームは、米国運輸保安局、連邦航空局および税関・国境取締局に連絡を取り、これらすべての機関から乗客名簿と搭乗者を照合するのは航空会社の責任であるとの回答を得た。またフロンティア航空もビバリーさんに対して謝罪を発表し、補償としてフロンティア航空で使える本人名義の600ドル(約8万円)の金券(1年有効)を発行し、該当チケットも払い戻しされたことを明らかにした。また今回の空港職員についても対処したという。