「耳の裏が腫れる」のは「リンパ節炎」や「粉瘤」が原因?医師が徹底解説!

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耳の裏の腫れで、身体はどんなサインを発している?Medical DOC監修医が主な原因や考えられる病気・何科へ受診すべきか・対処法などを解説します。気になる症状は迷わず病院を受診してください。

監修医師:
磯野 志真 医師

東京慈恵会医科大学医学部卒業。耳鼻咽喉科・頭頸部外科医師。東京医科歯科大学医学部附属病院、横浜市立みなと赤十字病院、賛育会病院などでの勤務経験あり。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会所属。小児の難聴・中耳炎から、成人の頭頸部癌まで幅広く診療している。

「耳の裏の腫れ」の症状で考えられる病気と対処法

耳の後ろに腫れがある場合は、耳自体だけでなく、全身の病気が原因となっている場合があります。耳の後ろの腫れが気になる場合は、以下のような疾患が考えられます。

・リンパ節炎

・風邪やインフルエンザ

・耳下腺炎、顎下腺炎

・咽頭炎、中耳炎、外耳炎

・帯状疱疹

・片頭痛、後頭神経痛

・粉瘤

・頸部嚢胞

・リンパ腫

・悪性腫瘍

これらの病気はどのような場合に考えられるでしょうか。症状に応じた原因とその対処法、病院を受診する目安について解説していきます。

痛くないが耳の裏が腫れている症状で考えられる原因と対処法

触ったり、押したりしても痛くはないけれど、耳の後ろに何か固まりが触れるような症状を指します。
このような場合に考えられる原因として粉瘤や頸部嚢胞が挙げられます。粉瘤や頸部嚢胞は、皮膚の内側に袋状の構造物ができてしまう疾患です。これらの疾患は、細菌などによる感染がなければ腫れ以外の症状は出現しません。
症状がなければ治療は必要ありません。サイズがどんどん大きくなる場合や痛みなどを生じる場合は、病院で切除や摘出を行う必要があります。
主な診療科は、耳鼻科です。腫れの大きさの変化が速い場合や、ごりごりとした硬さがある場合は粉瘤や頸部嚢胞ではなく、悪性腫瘍の可能性があるため早めに受診してください。

耳の裏が腫れていて痛い症状で考えられる原因と対処法

耳の後ろの腫れと同時に腫れそのもの、あるいは耳周囲全体に痛みがある場合を指します。
このような場合に考えられる主な原因として、リンパ節炎や耳下腺炎、顎下腺炎が挙げられます。
これらの疾患は、風邪やインフルエンザなどのウイルス感染症や、咽頭炎や中耳炎などの細菌感染症に伴ってリンパ節や耳下腺、顎下腺に炎症が生じる疾患です。治療は、原因となっている感染症の治療と、発熱や腫れの痛みなどの症状に対する解熱鎮痛剤による治療を行います。
また、その他の原因としてピアスの装着や耳掃除に伴って耳介や耳の穴の皮膚から細菌感染症を発症している外耳炎があげられます。痛みを伴う真っ赤な腫れがある場合、臭みのある膿がでる場合が多いです。治療は、原因となる細菌にあわせた抗菌薬が必要となるため病院を受診してください。
主な診療科は、内科または耳鼻科です。主に原因となっている感染症の治療を行います。耳の裏の腫れに伴う水分や食事がとれなくなる場合は早めに受診してください。

耳の裏が腫れていて頭痛がする症状で考えられる原因と対処法

耳の後ろの腫れに伴って頭痛が出現する場合を指します。
このような場合に考えられる原因として、片頭痛や後頭神経痛が挙げられます。
片頭痛は、何らかの原因で脳の血管が拡張し、神経が圧迫されることで頭痛が生じる疾患です。片頭痛は、どくどくと脈をうつような特徴的な頭痛と同時に吐き気やめまいを伴う場合があります。治療は、非ステロイド性抗炎症薬による対症療法を行います。症状が強く、頻回に出現する場合は予防薬として、トリプタン製剤やカルシウム拮抗薬、漢方薬などを使用する場合があります。
次に、後頭神経痛について解説します。後頭神経痛は、瞬間的にビリっとした電撃が走るような痛みが出現するのが特徴です。首や肩の凝りなどの血流障害などが原因で発症するとされています。症状は自然に改善する場合が多いですが、痛みが強い場合には鎮痛剤やビタミン剤の投与、局所麻酔による神経ブロック等が行われます。
主な診療科は内科です。頭痛症状の程度が強い場合は、病院を受診してください。

すぐに病院へ行くべき「耳の裏の腫れ」に関する症状

ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。
応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。

痛くて発疹がある場合は、内科、耳鼻科、眼科へ

耳の後ろの腫れと同時に首の周りや顔に発疹が出現することが特徴的です。
このような場合に考えられる原因として帯状疱疹があります。帯状疱疹は、耳やくび、顔に帯状の小さな水ぶくれが出現する疾患です。発熱やピリピリとした痛みを伴う場合があります。痛みは湿疹のある部位を温めると和らぐ場合があり、非ステロイド性抗炎症薬やアセトアミノフェンの内服も有効です。治療は抗ウイルス薬の投与が必要となるため病院を受診してください。
主な診療科は内科です。ただし、帯状疱疹が目の周りに出現した場合は、目の神経に影響を及ぼす可能性があるため眼科を受診してください。

受診・予防の目安となる「耳の裏の腫れ」のセルフチェック法

・耳の裏の腫れに伴って食事や水分がとれない場合

・耳の裏の腫れがどんどん大きくなる、ごりごりとした硬さある場合

・耳の裏の腫れ以外に耳垂れや耳鳴りなど耳の症状がある場合

・耳の裏の腫れ以外に湿疹症状がある場合

・耳の裏の腫れの赤みが強く、押すと痛みを伴い、膿がでる場合

「耳の裏の腫れ」の症状が特徴的な病気・疾患

ここではMedical DOC監修医が、「耳の裏の腫れ」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。

リンパ節炎

​​リンパ節炎は、風邪やインフルエンザなどのウイルス感染症や、咽頭炎や中耳炎などの細菌感染症が生じた際にリンパ節にも炎症が生じる疾患です。感染症を発症していない場合でも、仕事による疲れが溜まっているときなどに発症する場合もあります。治療は、原因となる感染症の治療、発熱や痛みに対して非ステロイド性抗炎症薬やアセトアミノフェンなどの解熱鎮痛剤による治療を行います。

帯状疱疹

帯状疱疹は、水痘ウイルス(いわゆる「水ぼうそう」の原因となるウイルス)により耳やくび、顔に帯状の小さな水ぶくれが出現する疾患です。帯状疱疹は、湿疹が出現するほかに発熱やピリピリとした痛みを伴う場合があります。痛みは湿疹のある部位を温めると和らぐ場合があり、非ステロイド性抗炎症薬やアセトアミノフェンの内服も有効です。治療は抗ウイルス薬の投与を行います。

帯状疱疹はまれに顔全体や舌を動かす神経、味覚や聴覚の神経に影響を与えるBell麻痺やRamsay Hunt症候群を合併する場合があります。耳の後ろの腫れに加えて、顔や舌の動かしにくさ、味や耳の聞こえに違和感が出現した場合はそのまま放置しておくと麻痺が残る可能性があるので、速やかに病院を受診してください。

粉瘤

粉瘤とは、皮膚の内側に袋状の構造物ができてしまい、その中に古くなった皮膚である角質や皮脂が溜まることで形成される良性の腫瘤です。細菌などによる感染がなければ腫れ以外に症状はなく、治療は必要ありません。サイズが大きくなる場合、白っぽい膿が出てきて独特なにおいを発する場合、痛みや発赤や熱感が出現した場合は細菌感染症を発症している可能性があるため医療機関での摘出が必要となります。

「耳の裏の腫れ」の正しい対処法は?

耳の裏が腫れる症状は、一般的な風邪やストレス、疲労により腫れが出現する場合があります。病院受診の目安に該当する症状がない場合は、まずは水分を十分にとってゆっくり身体を休めると自然に消退する可能性があります。
発熱や痛みが気になる場合は市販の解熱鎮痛剤を飲んでも構いません。
症状を緩和させる市販薬の例は、タイレノールA(ジョンソンエンドジョンソン)、ノーシンAc(matsukiyo)、バファリン(ライオン)、ロキソニンS(第一三共)、イブA(エスエス)などです。
38.5度以上の発熱がある場合、痛みが強く日常に影響を及ぼしている場合には、市販薬の使用を検討してください。
ただし、胃十二指腸潰瘍のあるかた、肝臓の病気のあるかた、腎臓の病気のあるかた、血液の病気のあるかた、妊娠中のかたは医師または薬剤師と相談のうえ、市販の薬剤を使用してください。
耳の裏が腫れる症状は、原則として揉んだり、温めたり、冷ますことにより腫れが良くなることはありません。帯状疱疹が出現している場合は、湿疹のある部位を温めると症状が和らぐことがあります。
腫れ自体から膿がでた際にご自身で押し出したという話をよく耳にします。しかし、粉瘤や嚢胞の場合は袋自体を摘出しない限り根本的な治療とはなりません。粉瘤や嚢胞に限らず、腫れを触ることは細菌感染症のリスクを増加させ、症状を悪化させる可能性があるため腫れが気になる場合は病院へ相談してください。
発熱や痛みに対して解熱鎮痛剤を使用しても症状が良くならないというケースは、めずらしいことではありません。一般的な風邪などであっても、体の発熱などが上回っている場合は薬剤の効果が十分に得られないことがあります。まずはゆっくり身体を休めて、病院への受診の目安に該当する場合は病院を受診してください。

「耳の裏の腫れ」の症状についてよくある質問

ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「耳の裏の腫れ」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

耳の裏に腫れがあるときは何科に行けばいいですか?

磯野 志真 医師

主な診療科は耳鼻科と内科です。耳に関係する症状がある場合や腫れ自体が気になる場合は耳鼻科を、耳以外の症状が気になる場合は内科を受診してください。

耳の裏が腫れているとき、ピアスはしない方がいいですか?

磯野 志真 医師

さらに腫れがひどくなる原因になる可能性や新しく感染症を起こしやすい可能性があるため控えたほうが無難です。

耳の裏の腫れは一般的にどのくらいで治りますか?

磯野 志真 医師

数日から2週間までになくなる場合がほとんどです。2週間以上腫れが続く場合や、どんどん大きくなる場合は病院を受診してください。

まとめ

耳の裏の腫れは風邪を引いたときなど体調が悪くなったときによくある症状の1つです。なかには、重篤な疾患が隠れている場合があるので気になる症状がある場合はお近くの医療機関へ受診してください。

「耳の裏の腫れ」の症状で考えられる病気

「耳の裏の腫れ」から医師が考えられる病気は10個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

内科の病気

リンパ節炎

風邪やインフルエンザ

リンパ腫

悪性腫瘍

耳鼻咽喉科の病気

耳下腺炎、顎下腺炎

咽頭炎、中耳炎、外耳炎

頸部嚢胞

脳神経内科・脳神経外科の病気

片頭痛、後頭神経痛

皮膚科の病気

帯状疱疹粉瘤

耳自体の病気以外にも、全身の病気が原因となって症状が出現している場合があります。

「耳の裏の腫れ」に似ている症状・関連する症状

「耳の裏の腫れ」と関連している、似ている症状は9個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

熱がある

耳が痛い

耳から膿が出る

聞こえにくい

のどが痛い

首が痛い頭が痛い

耳の裏から膿が出る

耳にしこりがある

「耳の裏の腫れ」の症状の他にこれらの症状がある場合でも「リンパ節炎」「風邪」「インフルエンザ」「耳下腺炎」「顎下腺炎」「咽頭炎」「中耳炎」「外耳炎」「帯状疱疹」「片頭痛」「後頭神経痛」「粉瘤」「頸部嚢胞」「リンパ腫」などの疾患の可能性が考えられます。症状がなかなか改善しない場合は、早めに医療機関を受診しましょう。

【参考文献】
・耳鼻咽喉科・頭頸部外科が扱う代表的な病気(耳鼻咽喉科頭頸部外科学会)