「口唇がん」を発症すると現れる症状・原因はご存知ですか?医師が監修!

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口唇がんは、唇にできるがんです。

まれながんですが、主に喫煙・飲酒・紫外線などが原因とされ、50~70代の男性に多く発症しています。

唇や粘膜の内側など目に見えるところにできるので発見しやすいのですが、初期においては痛みも無いことも多く、放置されて進行してしまうケースも少なくありません。

早期発見であれば治癒できる可能性が高いのですが、進行すると治癒が難しくなります。

そこで、今回は口唇がんの症状・主な原因・セルフチェック法・治療方法を詳しく解説いたします。

口唇がんの主な症状と原因

口唇がんの主な症状を教えてください。

はじめは目立った症状がないことや、症状が軽度であることも多いです。唇があれる・ただれる・しこりができるといった粘膜の変化に加え、腫れる・出血する・しびれるといった症状が出ることがあります。これらの症状は内側の粘膜に出ることも少なくありません。
粘膜の部分が白くなる白板症という疾患がありますが、このうち約1割ががんになるという報告があります。口唇がんが頚部リンパ節に転移すると、しこりとして触れることがあります。潰瘍になっていたら、がんはだいぶ進行しており、さらに深い部分まで浸透していきます。自分で病変を確認できるがんですので、違和感や見た目の変化を感じたら早めに医療機関を受診してください。

口唇がんは口腔がんの1つなのでしょうか。

口唇(こうしん)がんは唇にできるがんで、口腔がんの一つです。口の中にできるがんを口腔(こうくう)がんといいます。
口腔がんはこの他に、舌がん・口底(こうてい)がん・歯肉(しにく)がん・頬粘膜(きょうねんまく)がん・硬口蓋(こうこうがい)がんなどがあります。口のように内部が空洞になっている臓器の内側の粘膜組織のことを重曹扁平上皮といいます。口腔がんの約90%がこの粘膜組織から発生する扁平上皮がんです。

口唇がんの原因について知りたいです。

発症リスクを高める主な要因として考えられているものは次の3つです。

喫煙

飲酒

紫外線

たばこの煙の中には多くの発がん性物質が含まれます。これらの発がん物質は細胞の中にあるDNAの損傷を引き起こし、がんの発生メカニズムの様々な段階に作用すると考えられています。喫煙年数が長いほど、また1日の喫煙本数が多いほど、がんになりやすい傾向が大きいです。飲酒で体に取り込まれるエタノールが分解されてアセトアルデヒドになり、これががんの発生にかかわると考えられています。また飲酒と喫煙は、相乗的にがんの危険性を高めるという報告もあります。
紫外線は皮膚の細胞の中にあるDNAを傷つけますが、通常は修復されることが多いです。この修復がうまくできないときがあり、正常でなくなった細胞ががんの原因になるのです。

口唇がんの特徴やセルフチェックについて

口唇がんの特徴を教えてください。

口唇がんの特徴は、目で見て、手でさわってわかるということです。初期の症状は、主に次のようなものです。

赤や白への色の変化

ただれ・ざらつき

しこり・はれ

これらの初期症状は口唇がんだけの特徴ではないので、がんかどうかを見極めるのは困難です。ただの炎症だと思って放置していたら、実はがんだったということも珍しくありません。
たとえ症状が軽くても、なかなか良くならないという場合は、ためらわず専門の医療機関を受診することが大切です。一つの目安として、1ヶ月しても良くならない症状を感じた場合は受診を検討して下さい。

口唇がんを放置するリスクを教えてください。

がん細胞は増殖し、リンパの流れに乗って、他の組織に浸潤・転移するという性質を持っています。放置しておくと、がんの範囲が広まり、他の組織に転移するリスクが高まります。唇は生活・活動するうえで非常に大切なものなのです。治療が遅れれば治癒が難しくなり、手術でがんを取りのぞけたとしても、外観や機能が大きく損なわれます。
また、治療できたとしても再発のリスクが高まるのです。当然のことですが、ステージ(病期)が早いほど生存率や治癒率は高くなります。そのため、がんは早期発見・早期治療が非常に大切です。唇や口の中の異変がなかなか良くならない場合は、症状が軽くてもためらわず専門の医療機関を受診することが大切です。

口唇がんのセルフチェック方法を教えてください。

口唇がんは、目で見ることができ、舌や手で触ることができるので自分で見つけることができます。がんは唇だけにできるわけではなく、舌など口の中どこにでも発生する可能性があります。
そこで今回は唇だけでなく口の中全体をチェックする方法をご紹介いたしましょう。チェックする場所は、次のとおりです。

唇の裏側

ほおの裏側

舌の上下左右

口の中の底の部分

口の中の天井の部分

歯肉のほお側

歯肉の裏側

チェックする項目は次のとおりです。

「はれ」「しこり」はないか

周りより赤くなったり、白くなったりしていないか

「ざらつき」「炎症」はないか

しびれ」「麻痺」はないか

どの症状も、なかなか治らない場合はさらに要注意です。舌をティッシュをまいた指で軽く引っ張ってみて、何か異常はないでしょうか。また、食べ物が飲みにくい・ほおや下の動きが悪いなどの症状はありませんか。
特に痛みがない場合でも、気になる症状があれば、遠慮せず専門の医療機関を受診することが大切です。

口唇がんの治療方法や予防方法

口唇がんの治療方法について詳しく教えてください。

手術でがんを取り除く治療が中心です。転移があった場合は、まわりのリンパ節も取り除きます。生活するための機能をできるだけ補うために、手術で取り除いた部分を腕など別の部分の皮膚を使って補う手術をする場合もあります。
手術でがんを取り除いたとしても、まだがん細胞が残っているかもしれません。そのため、残っているがん細胞を死滅させるために、手術した後で放射線や抗がん剤を使う場合もあります。次のような場合は、手術ができません。

がんの転移の範囲が広い

手術に耐えられる体力がないと判断される

本人が手術を望まない

このような場合は、放射線や抗がん剤を使った治療を行います。

口唇がんの治療期間はどのくらいですか?

手術をする場合は、2~3週間の入院となります。放射線治療はケースバイケースで、1回のみの場合もあれば、2カ月間に及ぶ場合もあります。治療頻度は通常1日1回、月曜日から金曜日までの週5回です。抗がん剤治療も期間・頻度はケースバイケースで、最低でも3カ月、長ければ数年かかることもあります。
毎日・毎週1-2回・毎月1-2回など、さまざまな頻度で行われます。 治療終了後、少なくとも約5年間は1~4カ月単位で、再発がないか検査器械を使い慎重な経過観察を行っていくことが必要です。

口唇がんの再発の可能性を教えてください。

これはどのがんでも同じことですが、再発する可能性はあります。手術後1年半ぐらいが多いです。同じ場所からがんが発生する場合だけでなく、離れた場所から発生することも少なくありません。がん細胞は、血液やリンパ液に乗って移動する性質があるからです。
転移しやすいのは首・リンパ節・肺・骨などです。同じ場所から発生したときは、基本的に手術で切除を行います。リンパ節に転移した場合は、その周辺も含め手術で切除します。
離れた場所に転移したときは、各臓器の専門医と連携し治療方針を決めなければなりません。5年経つと再発の可能性は少なくなるといわれていますが、経過観察は重要ですので、担当医の指示通り通院してください。念のため10年くらいまでは経過観察するのが望ましいです。

口唇がんの予防方法を教えてください。

先に述べたとおり、口唇がんの最大のリスク要因は喫煙・飲酒・紫外線です。次のことを心がけてください。

喫煙を控える

飲酒を控える

強い日差しに当たるときは、日焼け止めのリップクリームを塗る

バランスの良い食生活を心がける

適度な運動をする

先に紹介したセルフチェックを普段から行ってください。

編集部まとめ


口唇がんを含む口腔がんは、患部を直接見ることができるので早期発見しやすいがんです。

そして、初期のうちに発見できれば比較的簡単な治療ですみます。ところが、進行するまで放置されてしまうケースも少なくありません。

そうなると、治療できたとしても顔が変形したり食事や会話が困難になったりして、日常生活に大きな支障をきたすことになります。

そのため早期発見・早期治療が非常に大切です。

参考文献

口腔がん(がん情報サービス)

口腔がん(日本癌治療学会)