英字新聞で英語を学んでみませんか?(写真は2022年、BTSがホワイトハウスを訪問した際のもの。写真:AP/アフロ)

翻訳会社などを運営する傍ら、メールマガジン「毎日1分!英字新聞」を発行している石田健さん。発行開始は2000年9月という長寿メルマガです。平日毎日発行していて、購読者数は7万人。「まぐまぐ!」によると、英字新聞を題材にしたメールマガジンとしては日本最大といいます。

石田さんによれば、「英字新聞こそ最強の英語学習ツール」。その活用法や勉強のコツを、最新刊『1日1分!英字新聞 2023年版』からご紹介します。

英字新聞がなぜ「最強の英語学習ツール」?

私は「英字新聞は最強の英語学習ツール」と考えてきました。ではいったいなぜ、そう言えるのか。

理由はとてもシンプルです。「飽きずに続けられる」からです。

英語学習の最大のポイントは、継続できるか否か。最初の数日はやる気なのに、いつの間にか続かなくなっている。これでは力がつきません。逆に、毎日少しずつでも勉強できれば、少しずつですが英語力が自分のものになっていきます。その「継続」に、英字新聞は最適なのです。

新聞ですから、政治、経済、芸能、スポーツ、文化といった多彩な記事が毎日登場します。自分が知っているニュースを、英文で毎日日替わりで読むので、飽きる暇がありません。話題になったあのニュースが、英語だとこういう表現になるのか、と楽しんでください。

もちろん、新聞全部を読む必要はありません。日本語の新聞だって、全ページをくまなく読んでいる人なんていませんよね。気になる記事、面白そうな記事だけを読んでいるはずです。英字新聞だったらなおのこと、気になる記事だけを読めばいいのです。時間がなかったら、見出しをチェックするだけでも構いません。

いきなり英字新聞をとるのはハードルが高いと思います。そこで2021年12月から2022年11月までの記事の中から、「英語学習に役立つ」「バラエティーに富んでいる」という2つの視点から厳選しました。今回は、『1日1分!英字新聞 2023年版』から3本の記事をご紹介します。

実際にお読みいただく前に、記事の構成をご説明します。

最初に英文。そこに「単語CHECK!」「訳出のポイント」「和訳」「今日のポイント」を加えています。「訳出のポイント」では、文法事項や和訳のヒントをわかりやすく解説しています。「今日のポイント」では、英字新聞頻出の時事英単語やちょっとわかりにくい文法事項など、特に大事なところを解説しています。

英語力とは、文字通り「力」

英語力というのは、文字通り、「力」です。人生という荒波を戦い、くぐり抜けるためのツールだと思います。このツールを身につけるかつけないか、これにより人生の選択の幅が大きく変わってきます。

この積み重ねにより1年後、あなたの英語力は飛躍的に向上します。今年こそ、「英字新聞」を毎日の習慣にしましょう。

Tom Cruise Awarded Surprise Honorary Palme d’Or At Cannes
Tom Cruise was awarded a surprise honorary Palme d’Or during his first visit in 30 years to the Cannes International Film Festival Wednesday for the premiere of “Top Gun: Maverick”.

May20,2022

CHECK!
(be) awarded … 〜を授与される
surprise … 驚きの、不意の
honorary Palme d’Or … パルム・ドール名誉賞
Cannes (Film Festival) … カンヌ(国際映画祭)
premiere … プレミア(試写会)

訳出のポイント

●今日の本文は「映画『トップガン マーヴェリック』のプレミアのためのこの30年間で初めてのカンヌ国際映画祭訪問(している)間に、トム・クルーズは予期していなかったパルム・ドール名誉賞を水曜に受賞した」→「映画『トップガン マーヴェリック』のプレミアのため、30年ぶりにカンヌ国際映画祭に参加したトム・クルーズが、サプライズでパルム・ドール名誉賞を水曜に受賞した」となっています。Palme dʼOr「パルム・ドール」は Cannes International Film Festival「カンヌ国際映画祭」における最高賞。honorary Palme dʼOr「パルム・ドール名誉賞」はもともとはフランス語で Palme dʼor dʼhonneur。

主催者によって発表・授与される“名誉賞”となっています。

対訳
「トム・クルーズ、カンヌでパルムドール名誉賞のサプライズ」
映画『トップガン マーヴェリック』のプレミアのため、30年ぶりにカンヌ国際映画祭に参加したトム・クルーズが、水曜にサプライズでパルム・ドール名誉賞を受賞した。

2022年5月20日

今日のポイント

●surpriseの用法

surpriseはもともと「(人・動物)を(不意に)驚かす」「びっくりさせる」という動詞。

受動態のbe surprised「驚く」「びっくりする」という言い方が最も一般的ですが、「驚き」「予期しない驚き」という名詞としてもよく使われます。

そして、名詞と組み合わせて形容詞的に、「驚きの」「突然の」「不意の」「予期しない」という表現にもなります。

そこで、(be) awarded (a) surprise honorary Palme dʼOrは「突然のパルム・ドール名誉賞を授与される」「予期していなかったパルム・ドール名誉賞を授与される」→「サプライズでパルム・ドール名誉賞を授与される」ということですね。

「揺さぶられて粉々になった」=話し合い?

BTS Visits White House to Discuss Hate Crimes
K-pop boy idol group BTS visited the White House on Tuesday to meet with President Joe
Biden and discuss hate crimes targeting Asian Americans.
Jun2,2022

CHECK!
K-pop boy idol group … Kポップ男性アイドルグループ
discuss … 〜について話し合う、意見を交わす
hate crime … ヘイトクライム、憎悪犯罪
target … 〜を標的にする
Asian American(s) … アジア系米国人

訳出のポイント

●discussの語源は「揺さぶられて粉々になった」「分散させられた」という意のラテン語discussus。ここから「言葉を揺さぶって粉々にする」→「話し合う」「討論(議論)する」「意見を出し合う」という動詞となっています。

●hateは「憎悪」「憎しみ(の念)」「嫌悪」という名詞なので、hate crimeは直訳すると「憎悪犯罪」。“特定の人種、国、宗教に対する偏見、差別にもとづく憎悪・怨恨による犯罪”を意味しています。日本語では「ヘイトクライム」あるいは「憎悪犯罪」と訳されていますね。

●2020年に新型コロナが中国から世界に拡大したことをきっかけに、米国内ではアジア系住民への憎悪犯罪が増加しました。今回はそのhate crimeについて意見を交換する目的で、バイデン大統領がBTSをホワイトハウスに招きました。大統領との面会に先立って行われた記者会見で、メンバーたちは社会におけるdiversity「多様性」の大切さを訴えたということです。

対訳
「BTSがホワイトハウス訪問、ヘイトクライムについて意見交換」
Kポップ男性アイドルグループ、BTSが火曜日、ホワイトハウスを訪れジョー・バイデン米大統領と会談した。アジア系米国人に対するヘイトクライムについて意見を交換した。

2022年6月2日

今日のポイント

●動詞としてのtarget

targetはもともと射撃や弓術などの「的」「標的」「攻撃目標」を意味する名詞。

「〜を的(目標)にする」「〜を攻撃目標(対象)にする」という動詞としてもよく使われます。

本文末尾のhate crimes targeting Asian Americansの部分は「アジア系米国人を対象にするヘイトクライム」→「アジア系米国人に対するヘイトクライム」となっています。

Shohei Ohtani Achieves a Feat We Haven’t Seen Since Babe Ruth
Los Angeles Angels two-way star Shohei Ohtani from Japan earned his 10th pitching win
of the season on Tuesday, joining Babe Ruth as the only MLB players ever to record at least 10 home runs and 10 wins in the same season.
Aug12,2022

CHECK!
achieve a feat … 偉業を達成する
two-way star … 二刀流のスター選手
earn one’s _th pitching win … 投手として_勝目を挙げる
join … 〜に加わる
record … 〜を記録する

訳出のポイント

●pitching winは直訳すると「ピッチング勝利」「投球勝利」。earn oneʼs _th pitching winで「_回目の投球勝利を獲得する」→「投手として_勝目を挙げる」となっています。

●本文後半のjoining……以下はそのまま訳すと「同一シーズン中に少なくとも本塁打10本と10勝を記録したメジャーリーグ選手として唯一、ベーブ・ルースに加わった」。対訳では、この部分を第2文として独立させ、「同一シーズン中に2桁本塁打と2桁勝利を記録したメジャーリーグ選手は、ベーブ・ルース以外では大谷だけである」と意訳しています。

対訳
「大谷翔平、ベーブ・ルース以来の偉業達成」
日本出身でロサンゼルス・エンゼルスの二刀流スター選手・大谷翔平が火曜日、投手として今季10勝目を挙げた。同一シーズン中に2桁本塁打と2桁勝利を記録したメジャーリーグ選手は、ベーブ・ルース以外では大谷だけである。

2022年8月12日

意訳することで伝えたいことがより鮮明に

今日のポイント

●「偉業を達成する」をどう訳す?


featの語源は「行為」「なされたこと」「功績」という意味のラテン語factum。ここから「偉業」「功績」「きわだった行い」という名詞になっています。そして、achieveが「〜を成し遂げる」「〜を完成する」「〜を達成する」という動詞なので、achieve a featで「偉業を成し遂げる」「偉業を達成する」という言い方ですね。

そこで、今日のタイトルは直訳すると「大谷翔平が、我々がベーブ・ルース以降見なかった偉業を達成する」→「大谷翔平が、ベーブ・ルース以来の偉業を達成する」というわけです。

(石田 健 : メールマガジン「毎日1分!英字新聞」発行人)