「首にしこり」ができる原因はご存知ですか?医師が監修!

写真拡大 (全6枚)

ある日突然首のしこりを見つけた時、原因がわからないと心配になるものです。首には様々な組織や臓器が集中しているので、しこりが生じた場合様々な原因が考えられます。

判断基準はいくつかのポイントに分けることができます。痛みを伴うか・大きさはどれくらいか・どの位置にできたのかによってそれぞれ原因が異なることが多いです。

ここでは、首にしこりができた場合に考えられる病気と見分け方についてご紹介します。さらに対処法と受診目安についても解説します。

首のしこりの症状で考えられる病気と対処法


首のしこりは、位置によっても原因が変わります。まずは位置やでき方で首のしこりについて解説します。

首の後ろにできたしこりで考えられる病気と対処法

首の後ろにしこりができる病気は、耳下腺腫瘍と脂肪腫が多いです。耳下腺腫瘍とは、唾液を作る「耳下腺」という部分に腫瘍ができてしまいます。なぜ発生するのかはわかっていません。首の後ろの髪の毛を触った時や、耳の後ろ下側を触った時に気づきやすいしこりです。ほとんどの場合が良性ですが、まれに悪性の場合もあります。特に痛みがなく、増えたりもしないのであればそのままにして構いません。ただし腫瘍が大きい場合、神経を圧迫する可能性があります。あまりにもしこりが大きい場合や段々と増えてきた場合は医療機関を受診してください。一方の脂肪腫は、良性の腫瘍です。こちらもなぜ発生するかわかっていません。触ると弾力があり柔らかいです。首以外にも体中のいたる所で発生する腫瘍でもあります。放置しても治ることはありません。大きいと神経を圧迫することもあり、しこり自体に痛みもある場合は手術で切除することもあります。首の前後ろは、頸部にある胸鎖乳突筋を境にして判断してください。

首の横にできたしこりで考えられる病気と対処法

首の横にできたしこりは、大きさによって疑われる病気が変わります。1cm以上の大きさにならないしこりはウイルス感染症によるものの可能性が高いです。数日でピークを過ぎ徐々に小さくなっていきます。しこりが1cm以上でなおかつ痛みがある場合は、化膿性リンパ節炎の可能性があります。のどや歯の細菌感染がリンパ節に広がったものです。痛みと発熱を伴うことがあるため、投薬で発熱等の症状を抑えつつ治療します。投薬で細菌感染が治まれば自然としこりも小さくなっていきます。もししこりがどんどん大きくなり、2cm以上になったにもかかわらず痛みがない場合は注意が必要です。悪性リンパ腫や癌のリンパ節転移の可能性があります。早めに検査をしてもらうようにしてください。

グリグリとした首のしこりで考えられる病気と対処法

特にお子さんの場合に見られることのある首のグリグリとしたしこりは、ほとんどがリンパ節です。本来、小児のリンパ節はまだ小さく、身体に触れた時に気づくほどの大きさしかありません。基本的に1cmほどの大きさとなっています。しかし、短期間でグリグリが大きくなったり他のリンパ節が腫れている場合は、医療機関を受診してください。近くの部位の皮膚疾患が原因でリンパ節が腫れている場合がほとんどです。まれに痛みを伴わず、リンパ節が硬く大きくなることがあります。こちらは白血病や悪性リンパ腫の可能性もあるため、なるべく早く医療機関を受診し検査をするようにしてください。また、首のしこりが現れる疾患として甲状腺腫瘤があります。女性に多い疾患で、多くの場合は良性です。しかし、中には甲状腺癌の場合もあるため注意をしましょう。

首のしこりが特徴的な病気・疾患


次に、首のしこりで考えられる病気についてです。ここでは代表的な3つの病気について解説します。

急性リンパ管炎

急性リンパ管炎は、外傷を負った際に溶血性連鎖球菌や黄色ブドウ球菌などの細菌が侵入したことが原因で発症します。発症するとリンパ節が腫れ、しこりが生じます。また、リンパ節に向かった不規則な赤い線が皮膚上に現れるのも特徴です。この線は熱を帯びており、触れると痛みを感じることもあります。その他にも悪寒・発熱・食欲不振などの全身症状が現れます。抗生物質を使用し、外傷を治すことで徐々に回復していく疾患です。

菊池病

菊池病は良性リンパ節炎です。組織球性壊死性リンパ節炎、もしくは亜急性壊死性リンパ節炎とも呼ばれています。原因はいまだわかっていません。発熱・頭痛・嘔吐感・筋肉痛などの全身症状を伴う病気です。圧迫するような痛みを伴う首のリンパ節の腫れやしこりが大きな特徴です。症状自体は数週間~半年で自然と消えていきます。この病気による特徴がないため、多くの場合はリンパ節を採取して検査することで初めて診断されます。特別な治療法もなく、無治療で自然治癒することが多いです。そのため、発熱や痛みといった症状への対症療法で対処するケースが多くなります。

脂肪腫

脂肪腫は全身にできる可能性のある良性腫瘍です。一般的に「できもの」と呼ばれているものはほとんどが脂肪腫でもあります。現れるしこりは柔らかく弾力があり、ニキビとも似ています。特に首をはじめとした背部、肩に多くできるできものです。ほとんどの場合は痛みを感じません。脂肪腫ができる原因はわかっていません。肥満気味の方に多いですが、体質的に脂肪腫ができやすいという方もいらっしゃいます。自然治癒は特にありませんが、大きさ的に気になるということもないでしょう。あまりにも見た目が悪かったり大きかったりする場合は、手術による摘出が行われます。摘出が終わればほとんどの場合近くの部位に再発することはありません。しかし、脂肪腫ができやすい体質の方は新たな脂肪腫が生じることがあります。その場合は再度手術が必要です。

首のしこりが良性か悪性かを見分ける方法は?


首のしこりのほとんどは良性腫瘍であることが多いです。しかし、まれに悪性腫瘍なこともあります。悪性として疑われるしこりの見分け方としては以下のようなポイントがあります。

しこりが硬い

触っても動かない

急に大きくなってきた

特に触っても痛みがない

もし自然に消えたり小さくなったりした場合は、悪性の可能性は低いです。そのため、数日観察してみると良いでしょう。医療機関であっても良性、悪性の判断は複数の検査をすることで初めてわかるものなので、決めつけをせず心配であれば受診してください。また、以前がんを患っていた場合でもリンパ節に転移してしまい、それがしこりとして表れるという場合もあります。その場合もなるべく主治医に相談するようにしてください。病院ではエコー検査が行われることが多いです。必要に応じて癌との選別のために生検や外科的に摘出をし、病理組織検査を行います。頸部CTやMRIでの検査や触診を行うことも多いです。

首のしこりで受診する目安


首のしこりは、以下のようなパターンに分けられます。

リンパ節の近くかどうか

痛みの有無

しこりが硬いか柔らかいか

しこりの大きさが1cm以下、1cm以上、2cm以上

まずしこりの位置がリンパ節の近くの場合、リンパ節炎などの可能性が高くなります。発熱を伴う場合はまず可能性が高いので、医療機関を受診しましょう。そうでない場合は、痛みの有無を確かめます。痛みがなくしこりが柔らかい場合は脂肪腫の可能性が高く、様子を見ても良いでしょう。リンパ節の近く・しこりの大きさが2cm以上・痛みがないという場合は悪性腫瘍の可能性もあるため、早めに医療機関を受診してください。どの場合でも、見つけたら慌てずに数日観察してみることが大切です。最初に発見した時のしこりの大きさを確認しておき、数日ごとにしこりが大きくなっていないか、増えていないかを観察してください。

まとめ


首のしこりの原因は、主にリンパ節周辺の感染症であることが多いです。ほとんどの場合は感染症が治ればしこりも小さくなっていきます。

もし発熱等の全身症状を伴う場合は、それらの症状が治ることでしこりも小さくなります。

ただし、脂肪腫が原因の場合は自然に治りません。大きく見た目の問題がある場合は切除も考えましょう。

首にできるしこりのすべてが良性の腫瘍というわけではありません。まれに悪性腫瘍の場合があるため、痛みがなく大きなしこりである場合は医療機関を受診しましょう。

首しこり症状の病気

関連する病気

バセドウ病橋本病

単純甲状腺腫

急性化膿性甲状腺炎

亜急性甲状腺炎

甲状腺嚢腫

腺腫様甲状腺腫

甲状腺腺腫

甲状腺癌

甲状腺悪性リンパ腫

副甲状腺腫

副甲状腺過形成

非特異的リンパ節炎

化膿性リンパ節炎

結核性リンパ節炎

伝染性単核球症悪性リンパ腫

癌の頚部リンパ節転移

血管腫

脂肪腫

正中頚嚢胞

側頚嚢胞

嚢胞状リンパ管腫

皮様嚢腫

流行性耳下腺炎

唾石症

耳下腺癌

石灰化上皮腫

横紋筋肉腫

神経芽腫

川崎病

猫ひっかき病

喉頭嚢腫

鰓裂性嚢胞

甲状舌管嚢胞

非定型的マイコバクテリア感染症

頚肋

頚動脈瘤

頚動脈小体腫瘍

悪性末梢神経症腫瘍

交感神経鞘腫

シェーグレン症候群