アメリカのニューヨーク州知事のキャシー・ホークル氏が、2022年12月28日に広い範囲の電子機器を対象にした「修理する権利」を認める「デジタル公正修理法」に署名しました。これにより同法が2023年7月1日から施行されることが決まりましたが、ホークル知事が署名した法案には、多くの条件や例外を伴う修正が含まれており、物議を醸しています。

NY State Senate Bill S4104A

https://www.nysenate.gov/legislation/bills/2021/S4104

New York breaks the right to repair bill as it’s signed into law - The Verge

https://www.theverge.com/2022/12/29/23530733/right-to-repair-law-new-york-tech-hochul-oems-parts

New York’s governor signs watered-down right-to-repair bill

https://www.engadget.com/new-york-right-to-repair-law-kathy-hochul-184654713.html

NY's Digital Fair Repair Act gets nerfed at last minute - Android Authority

https://www.androidauthority.com/digital-fair-repair-act-3260958/

「修理する権利」とはPCやスマートフォンといった製品を購入したユーザーが、メーカーの修理サービスを介さずに自身で修理することができる権利です。電子機器などの分野ではメーカーや特定の修理業者のみが製品を修理できることとなっていましたが、この仕組みは「独占的である」といった非難の対象になっていました。

そこで、2022年6月1日にアメリカ初となる「電子機器を広く対象とした修理する権利」を認める「デジタル公正修理法」がニューヨーク州議会を通過しました。この法案により、消費者と独立系店舗の両方に対してデジタル電子製品を修理できるようにすることが、全てのメーカーに義務づけられました。

広い範囲の電子機器を対象とした「修理する権利」を認める法案をニューヨーク州議会がアメリカで初めて可決 - GIGAZINE

法案の通過から約7カ月後の12月28日にはニューヨーク州のホークル知事がこの法案に署名し、正式に法制化されました。デジタル公正修理法は2023年7月1日に施行されます。

一方でこの法案に対するAppleやGoogleなどの電子製品メーカーのロビー活動の結果、当初の草案からは複数の修正が追加されています。

AppleやGoogleが圧倒的多数の賛成で可決した「修理する権利」を認める法案に反対し施行を阻止しようとしている - GIGAZINE

法制化されたデジタル公正修理法では、OEMが個々の部品ではなく、グループ化された部品を販売することが可能になっています。スマートフォンメーカーでは、マザーボードやバッテリー、ディスプレイをグループ化して販売することで、これらの部品のうちの1つだけが必要な場合でも3つすべてを購入する必要があり、結果として新しくスマートフォンを購入することになるとされています。

また、セキュリティ機能をバイパスするためにOEMがパスワードを提供する必要がなくなりました。つまり、何らかの要因でパスワードによってロックされているデバイスがある場合、スマートフォンメーカーはロックを解除する方法を提供する必要はありません。そのため、消費者は新しくスマートフォンを購入する必要があるとのこと。

ホークル知事はこれらの修正について、「修理中の身体的危害やセキュリティ問題のリスクを軽減するためです」と述べる一方で、修理技術者のルイス・ロスマン氏は、これらの修正の結果、「この法案は機能的に役に立ちません」と述べています。

さらに、デジタル公正修理法の対象は、2023年7月1日以降にニューヨークで製造および販売されたデバイスにのみに限られ、法案の発行日よりも前に製造・販売されたデバイスには適用されないことが指摘されています。

しかし、消費者権利団体の公益研究グループ(PIRG)の責任者であるネイサン・プロクター氏は「私たちが望んでいたすべてではありませんが、アメリカ国内で初めての法律であり、ほんの始まりにすぎません」と声明の中で述べています。