「白板症」になると現れる症状・原因はご存知ですか?医師が監修!

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白板症(はくばんしょう)という病気はあまり聞き慣れないかも知れませんが、口腔がんとも関係が深いので注意が必要です。

白板症は口腔内の粘膜が部分的に白くなる病気で、舌のがん・口腔がんの前がん病変になることがあります。

前がん病変とは今の段階ではがんの診断を確定することはできないものの、がんになる可能性が高い状態で警戒が必要です。つまり、白板症に気づくことでがんの早期発見・早期治療につながります。

ここでは白板症がどのような病気なのか、特徴・治療法・注意点などを詳しく解説します。

白板症の特徴

白板症はどのような病気?

口腔粘膜や舌が一部白く変化する症状が出る病気です。病変が白い板のように見えることからこの病名がついていますが、白斑状になることもあります。歯肉や頬の粘膜に病原が出ることもありますが、単純な汚れなら歯磨きをしたり指で擦ったりすれば落ちるはずです。
ところが、白板症による白い病変の場合、洗浄や摩擦で剥がれ落ちることはありません。圧迫しても色が薄くならないところも特徴の1つです。カンジダ症など他の病気でもないのにこういった白い部分を見つけた場合、白板症の疑いがあるかも知れません。

白板症の原因にはどのようなものがありますか。

はっきりしたメカニズムは分かっていませんが、何らかの刺激が口腔へ慢性的に与えられることが発症原因の1つです。体質や年齢の関与も否定できませんし、栄養面ではビタミンAやビタミンBが足りないせいで発症する可能性も指摘されています。嗜好品では、喫煙や飲酒の習慣との関連が疑われているので思い当たる方は注意が必要です。
煙草やアルコールが口腔粘膜の刺激となり、病原が出現するケースも報告されています。そのため、白板症と診断された場合でも煙草を吸わなくなったら病状が改善したケースも少なくありません。
その他、合わない義歯・歯の詰め物・被せ物も発症原因になります。合わない義歯によって機械的な刺激が繰り返し口腔内に与えられる環境は、白板症になるリスクが高い環境です。

白板症には痛みがありますか。

発症しても必ず痛むとは限りません。痛みを伴わず色や形状だけ変化するケースも確認できています。もちろん、痛みを訴える患者さんも少なくありません。白い病変が出現した段階では様子を見守っていて、口腔内のはっきりした痛みを自覚するようになり初めて病院を受診する患者さんもいらっしゃいます。痛みを伴う場合はがんになっている可能性も考えなくてはならないため、注意が必要です。

白板症はがんになることがあるのですか。

白板症になってもがんにならないこともありますが、がん化することもあるので注意が必要です。特に舌に病変ができるとがんになる確率が高いため、慎重に経過観察をしなければなりません。
表面が不均一、白一色ではなく赤色も混じっていたり潰瘍やびらんがあったりする場合も、がんに移行しやすいと指摘されています。データによると白板症の病変が、がんになる確率は、日本人の場合3.1%から16.3%です。

白板症の診断と治療

白板症の診断の方法は?

お口の中を覗くと白い病変が確認できるので、視診や触診など臨床的な方法で診断しやすい病気です。口腔内が白く変化する疾患は他にもあり、真菌症など増えすぎたカビが悪さをする病気も色々あります。
カビの場合は擦り落とすことが可能ですが、白板症の病変なら摩擦で落とすことはできません。実際に口腔粘膜の白い病変を擦って変化を観察し、診断の参考にします。
患者さんが痛みを訴えている場合や病変の形状によってがん化が疑われる場合は、最終的に診断を下す前に実施する検査が生検検査です。がん化していないかどうか確かめるためにも、生検検査はとても大切な検査の1つになります。

治療には手術が必要ですか?少し怖いです。

確かに手術と聞いて怖いと感じない方の方が珍しいでしょう。患者さんはもちろん、ご家族も不安に感じてしまうのは無理もありません。ただ、今後ご自身の身体にがん化する恐れがある病変を抱えたまま生きるより、思い切って切除した方が安心できる…と前向きに考えることもできるのではないでしょうか。
また、白板症になってもすべての患者さんが手術を受けるわけではありません。明らかな病変がある場合は顕微鏡で患部を観察します。この検査で上皮性異形成が認められず病変の表面も均一なら、早急な手術は必ずしも推奨されていません。ほとんどの場合は定期的に再検査を受けながら、経過観察していく流れになります。
一方手術を受けた方が良いと考えられるのは検査で異形が確認できた患者さんや病変の表面が不均一の患者さんです。将来のがん化リスクを考慮し、手術療法を提案するケースもあるでしょう。

手術以外の治療法はどのようなものがありますか?

患者さんによって白板症を発症した原因は違うので、まずは発症原因と考えられるものを探さなくてはいけません。その上で、ヘビースモーカーやお酒を飲みすぎている方なら禁煙や節酒をすすめ、生活習慣を改善します。
義歯や歯の被せものが原因になっている可能性があるなら、取り除く治療が必要です。ビタミン不足が疑われるときは、食生活を改善するよう指導することもあるでしょう。治療のためにビタミン製剤を処方することもあります。
消炎鎮痛薬や抗アレルギー薬が必要な患者さんもいらっしゃいます。その他、うがい薬や抗生物質配合のクリームなどを使うこともありますが、飲み薬にしても塗り薬にしても白板症を治すためのものではありません。

白板症で気を付けること

白板症はどのような人に起こりやすいですか?

今のところ分かっているのは、男性の発症率が女性の2倍近く高いことです。病変が現れる年齢は若ければ20代、高年齢では80代の患者さんもいらっしゃるので、年代の偏りはそこまでありません。データから分かるのは、50~60代が比較的多いことです。既にお伝えしていますが、発症原因の1つに喫煙習慣が指摘されています。煙草を日常的に吸っている中高年の男性は白板症に警戒しておいた方が良いかも知れません。

自然治癒の可能性はありますか?

自然に治ることもあります。ただし、医療機関の治療を受けずに自然治癒する確率は低く放置するのは非常にリスキーです。白板症になってから治療を受けずにいる方は、一定の割合でがんになってしまっています。治療を受けても再発する可能性は0ではありません。治療後しばらくの間何も症状が出ないまま経過し、初診から15年後にがん化したケースもありました。

白板症の予防に最も良い手段は?

現時点では喫煙が発症原因になる確率が高いことがわかっているため、喫煙者は禁煙が最良の予防手段になるでしょう。他には飲酒にも気をつけなくてはいけません。お酒の飲み過ぎを自覚している方なら禁酒や節酒することが病気の予防につながります。
義歯や入れ歯、詰め物が合わないときも口腔内の刺激になって発症原因になり得るので、定期的に歯医者さんに通い歯の適切な治療を受けることも大切です。

日常生活で気を付けることは何かありますか。

ご自身のお口の中の様子に無頓着にならないよう、気を付けましょう。毎日歯を磨いている方でも、歯や舌の様子を毎日観察している方はそう多くありません。そもそも、普段見えにくい舌の裏側などは鏡などを使ってじっくり見てみないと、健康な状態がどのような感じなのか分からないこともあるのではないでしょうか。
白板症の他にもお口の中の病気は色々あります。どんな病気に狙われても早期発見、早期治療ができるよう、口腔内をチェックする習慣をつけるのが理想的です。定期的に歯科検診を受けましょう。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

「口の中がおかしいな」と感じたら積極的に医療機関を頼って下さい。最初は一般的な歯医者さんで大丈夫です。診察の結果、白板症の可能性がある場合は、歯科口腔外科や口腔外科など専門機関の紹介状を書いてくれるでしょう。精密検査を受け、病名を明らかにすることが大切です。何の病気か分かれば対処法も見えてきます。外科手術で病変そのものを切除することも可能です。
日本人はがんになりやすく、がんは全身のどこに出現してもおかしくありません。口の中も例外ではないので、口腔がんの発症リスクを下げるためにも白板症に備えることはとても効果的です。

編集部まとめ


舌やお口の中が部分的に白くなっていても、白板症のことを知らなければ「ただの汚れかな」と見過ごしてしまいそうです。

がんについてはもちろん、がんと関係のある他の病気のことを知ることも重要ながん対策の1つだということがよく分かりました。

歯科検診は虫歯や歯周病をチェックするだけではなく、お口の中の病気を早期発見するためにも役立ちます。健康で長生きするために、歯科検診を定期的に受けるようにしましょう。

参考文献

口腔粘膜疾患(口腔外科相談室)

口の粘膜が痛い・ヒリヒリする(口腔外科相談室)