「食あたり」を発症すると現れる症状はご存知ですか?医師が監修!

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食あたりは食中毒とも呼ばれ、細菌やウイルスにより引き起こされる食べ物による中毒症状をいいます。

多くは嘔吐をともなう腹痛や下痢がその症状ですが、ひどい場合は症状が長引き不安になることも多いです。

そこで今回は食あたりの症状や危険性について解説します。受診の目安やノロウイルスとの違いも詳しく解説していきますので、ぜひ参考にしてください。

そもそも食あたりとは?

食あたりとはどんな病気ですか?

食あたりとは細菌やウイルスに汚染された食品を摂取することで起きる中毒症状です。多くは嘔吐・腹痛・下痢・発熱などの症状で、ひどい場合は命にかかわることもあります。
食あたりは細菌による中毒をいうことが多いのですがウイルスによるものも症状はほぼ同じと考えてよいでしょう。食あたりの原因となる細菌には次のようなものがあります。

病原性大腸菌

カンピロバクター菌

サルモネラ菌

ウェルシュ菌

ブドウ球菌

その他にもキノコなどの植物性自然毒やフグを代表とする動物性自然毒などでの食あたり(食中毒)もみられます。

食中毒のことなのですね。発症した際にみられる症状を教えてください。

細菌やウイルスに汚染された食品を食べてしまい食中毒を発症すると、次のような症状が現れます。

吐き気

嘔吐

下痢

腹痛

頭痛

発熱

倦怠感

悪寒

細菌の種類にもよるのですが、その日の内に発症する場合と数日後に発症する場合があります。数日後に発症した場合は食後すぐに症状が出ず数日後に急に症状が起こるため、何が原因なのかわからないことがしばしばあります。
軽い場合は1日で自然に回復することもありますが、多くは数日症状が続きます。食あたりが疑われる場合には自己判断で下痢止めなどは絶対に服用せず安静にし、必要に応じて早めに受診してください。
吐き気や嘔吐は体内の有害物質を排除するためのものであり、腹痛も細菌を排除するための収縮からくる場合もあります。また細菌の感染が原因で胃腸炎を発症している場合も、ひどい腹痛や胃のけいれんが起こるのです。
通常、下痢の症状は1日長くても2日ほどで治まることが多いのですが、3日以上しかも1日に10回以上下痢の症状が続く場合には深刻な腸疾患が考えられるので受診してください。
発熱・頭痛・倦怠感・悪寒などは嘔吐や下痢から起こる脱水症状、また細菌から身を守るための免疫反応と考えられます。いずれも食あたり(食中毒)の可能性が強いです。

海鮮物などを食べても食あたりを起こす方もいますが何故ですか?

海鮮物での食あたりはかなり多く、特に海鮮物の場合は古くなりお腹を壊すということだけではなく、次のようにさまざまな要因が考えられます。

自然毒

寄生虫

アレルギー

化学物質

自然毒としてはフグ毒が知られていますが、他にもシガテラ毒・パリトキシン・貝毒・テトラミンなどがあります。
フグ毒は命に関わるためフグ調理師免許を持たない人は決して調理を行わないことです。その他については市場を通っているものについては安心と考えてよいでしょう。
寄生虫ではアニサキス・クドアが有名ですが、これら寄生虫については冷凍や加熱で中毒を防げることが多いです。
アレルギーや化学物質の中毒としてはヒスタミンが関わりますが、食あたりが起こることに関しては個人差が大きいのが特徴です。この場合もしっかりとした魚介類の管理で防げる食中毒といえるでしょう。

食あたりの危険性と受診目安

食あたりは最悪命の危険に陥ってしまうこともあるのでしょうか?

食あたりというと軽く考えてしまいがちですが、時には命に関わる危険性があるので充分な注意が必要です。
最も多く死亡者が出やすい食中毒はキノコなどの植物性自然毒の中毒で、次いでフグ毒による動物性自然毒の中毒です。キノコ狩りなどで毒性の強いキノコを食用としたり、自分で釣ったフグを捌き食べてしまったりなどで発症し死に至ります。
また食あたりで嘔吐や下痢のために脱水症状を起こし、命の危険に陥る人も多いのです。
食あたりが重大な病気の引き金になる場合もあります。自己診断せずに受診してしっかりと治療することが必要です。

ノロウイルスとはどのような違いがありますか?

ノロウイルスはウイルスに汚染された食べ物を充分に加熱せずに摂取したことで起こる食中毒です。通常の食あたりと違うところは、ノロウイルスの場合は感染者が調理した食物を口にすることで別の人に2次感染が起こる点です。
また食あたりを引き起こす細菌は食品の中で増殖を続けますが、ノロウイルスの場合は食品中では増えません。ノロウイルスは人の体内に入ってから増殖し、嘔吐や下痢などを引き起こすのです。
食品そのものが原因で食あたりを起こす細菌性食中毒と、人の手から手に感染することが原因のノロウイルスの食中毒ではその感染経路がまったく違います。
ただ症状としてはとてもよく似ているため、区別がつきにくいことも事実です。

食あたりとノロウイルスとの見分け方などありますか?

食あたりもノロウイルス食中毒も症状としてはほぼ同じといえますが、食あたりは夏場(6月~8月)、ノロウイルスは冬場(11月~2月)に最も患者が増えます。
見分け方としては、嘔吐や腹痛、発熱などの症状が出た場合、周りにノロウイルス感染者がいないか確認しましょう。家族にノロウイルス感染者がいる場合には、ノロウイルスに感染していることが疑われるため受診して検査を受ける必要があります。
ノロウイルス感染をしているかどうかは、抗原検査で確認することが可能です。もちろん周りに感染者がいないからといって安心はできません。
万が一に備えてできるだけ2次感染を引き起こさないようにしっかりと対策をした上で、受診しましょう。

食あたりを疑った場合の受診目安を教えてください。

食あたりの症状もさまざまで、軽い場合はお腹の痛みと吐き気下痢の症状が数日で治まることもあります。そのような場合は様子をみてもよいでしょう。
吐き気が治まったら水分補給をしながら安静にして回復を待つようにしてください。ただし、高齢者や乳幼児は重症化しやすいので早めに受診してください。
また次のような症状がある場合も早急な受診が必要です。

下痢や嘔吐を何度も繰り返す

高熱がある

水分を摂ることができない

尿が出にくい

意識障害がある

このような時には脱水症状を起こしている可能性もあり、命に関わる場合もあるので早めに受診してください。
軽い症状であってもいつまでも症状が続く場合は、何か別の病気が潜んでいる可能性があるので、かかりつけ医に相談することをおすすめします。

食あたりの治療法や予防方法

食あたりではどのような治療をしますか?

食あたりの治療としては、点滴を行い脱水症状を防ぎ早く菌が排出されるための処置が行われます。下痢止めなどは長く菌が身体に留まる原因となるため自分で勝手に飲まないように注意してください。
病院では点滴の他に原因になる細菌や毒素・症状により適切な処置を行います。

食あたりは大体どのくらいの期間で治るのでしょう?

原因となった菌によって多少違いますが、1週間~2週間ほどで治癒することが多いです。早い場合は数日で症状が治まります。
症状が治まっても胃腸が弱っていることが多いので、少しずつ通常の食生活に戻すよう注意してください。

食あたりの治療中におすすめな食べ物があれば教えてください。

治療中は少量ずつ消化のよい食べ物を摂るようにしましょう。食べたいと思うものを食べるとよいのですが、揚げ物・乳製品・糖分の多いものは避けて薄味のうどん・スープ・おかゆなどを少しずつ摂るようにしてください。
一度にたくさん食べると弱った胃腸に負担をかけるため、少量ずつ食べて様子を見ながら量を調節していくことが大切です。

食あたりを予防するにはどのような事をしたら良いですか?

食あたりを防ぐために注意したいことをいくつか挙げてみましょう。

冷蔵・冷凍食品は素早く冷蔵庫冷凍庫に入れる

冷蔵庫の詰めすぎに注意

調理の前にしっかりと手を洗う

調理中もこまめな手洗いを心掛ける

野菜もしっかりと洗浄する

使用後のまな板布きんなどは煮沸する

残った食べ物は清潔な容器に保存する

充分に再加熱して食べる

時間の経ったものは思い切って処分する

当たり前のことですが、少しの心掛けで食あたりは防げるのです。また食中毒には自然毒が原因となることも少なくありません。
魚介類ではフグや貝に注意が必要ですが、特に注意したいのが植物性自然毒です。キノコや野草など、日常手にしがちな植物で食中毒が起きた例もあります。
専門的な知識を持つ人に確認してもらう必要が出てくるため、怪しいと思う場合は触れたり食べたりしないことが大切です。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

食あたりは細菌やウイルスに汚染された食べ物を口にすることで発症します。食あたりを引き起こす細菌やウイルスには重篤な症状をもたらすものもあるので、食べ物を扱うときには充分な注意が必要です。
かかってしまったときには、水分補給しながら安静にして菌やウイルスが体外に排泄されるのを待ちましょう。決して独自判断で下痢止めなどの服用はしないように注意してください。
なお、ノロウイルスなど感染者から他の人への感染を広げるウイルス感染の場合は至急受診して検査を受けるようにしてください。
また日頃の対策で防げることも多いのが食あたりの特徴です。食品の取扱いに注意するなど食あたりの予防を心掛けるようにしてください。

編集部まとめ


食あたり(食中毒)は細菌やウイルスが食べ物によって体内に入ることで発症する病気です。

安静にしていれば1週間から2週間ほどで治癒することが多いですが、細菌の種類によっては重症化する場合もあるので注意が必要です。

ノロウイルスなど感染者からさらに感染が広がる恐れのある食中毒に関しては、検査などの必要があるので至急受診してください。

食べ物を扱う時のひと手間が、食あたりを防ぐことにつながります。特に、生ものの扱いには充分注意して食あたりを防ぎましょう。

参考文献

食中毒予防の原則と6つのポイント(政府広報オンライン)

食中毒(厚生労働省)