止まらない物価の高騰が企業経営や家計を圧迫しています。今月1日からは食卓に欠かせない牛乳や乳製品が値上げされました。その背景には、生産現場である酪農家の苦境があります。生乳の生産量全国2位を誇る栃木県の酪農業、経営を圧迫する要因は何か、取材しました。

牛乳は飲み物としてはもちろんチーズやバター、生クリームと、加工品としても生活に欠かせない食材です。

今、その生産現場が危機に瀕しています。

朝6時、市貝町にある酪農企業コージーファームです。

辺りはまだ薄暗いなか牛舎には灯りが灯りエサやりや搾乳の準備が進められていました。いつもと変わらない一日の始まり。しかし、この1年で大きく変わったことがあります。

コージーファーム大瀧信夫社長:「過去にないエサの高騰なんで過去にない苦労をしているっていうことなんですけど異常な感じなので、どんないい経営をしても黒字にするのが難しいかな正直打つ手がないなっていうそういう状況ですねうちは今、総頭数で300ぐらいいるんですけどざっくりですけど毎月200万から300万の赤字になっているだから1年にするともう相当な赤字だからこれは経験したことがないです」

コージーファーム代表の大瀧信夫さん(62)です。

大瀧さんは父親が始めた農場を受け継ぎ40年に渡って経営してきましたがここまで厳しくなったのは初めてだといいます。

こちらの牛舎では大瀧さんのほか4人の従業員で成牛と育成牛、合わせて220頭を飼育しています。

経営を圧迫する最大の原因はエサ代です。

エサの9割を輸入飼料に頼っているため世界情勢と直結、長引くコロナ禍、ロシアのウクライナ侵攻による穀物価格の上昇、エネルギー価格の高騰、それに急激な円安で厳しい状況にあります。

コージーファーム大瀧信夫社長:「うちの場合は(1カ月当たり)400万ぐらいはエサ代だけで上がっていると思う単純にエサ代が元のように落ち着いてくれればそれを願うだけなんですけどほかにも電気代とか燃料代とか3割から5割ぐらい上がっていると思うのでその辺がまた今後どうなるかっていうことで経営が成り立つかどうかはそれにほぼかかっている燃料代、電気代に対して、エサ代の割合が多くて負担の割合がエサ代が圧倒的に多いのでエサ代、飼料価格、これ次第ですね」

さらに追い打ちをかけるのが子牛の取り引き価格の下落です。

酪農家で生まれたホルスタインのメス牛はミルクを搾るために育てられる一方でオス牛は肉となるため肥育農家などへ販売されます。

コージーファーム大瀧信夫社長:「子牛も種類とかによって多少違うんですけど平均すると10万ぐらい1頭で変わっているかなと思いますねここのところ急に下落したんですけど1頭10万とすると毎月5、6頭は販売しているので50、60万はマイナスになります」

市場では売り手と買い手のバランスで価格が決まります。ここ数ヶ月、そのバランスが崩れているといいます。

コージーファーム大瀧信夫社長「詳しくは分からないが、大手の肥育関係の会社の方が購入にきていないそういう話は聞いているのでそのへんでちょっと買い手が少なくなっていて下落しているのかな搾りの牛も肉の牛も食わす物は多少違いますけど種類的には似ていますからやっぱり(エサ代高騰の)影響は大きいと思いますよね、肥育の方も」

コージーファームでは効率的な経営を進めようと去年4月、県内で初めて搾乳ロボットを導入しました。

無人で搾乳ができる搾乳ロボットは作業の省力化と搾乳回数が増えることでミルクの量が増える2つのメリットがあるといいます。しかし・・・

コージーファーム大瀧信夫社長:「こんな情勢がくるんだったら投資していないですよね借金が増えただけ大変な状況になったわけだからこういう情勢になったら借金って重くのしかかるので」

こうした状況のなか、生乳の取り引き価格が今月から1キロ10円上がりました。

コージーファーム大瀧信夫社長:「経費の上昇には追いつかない数値なんですけど酪農家が八方塞がりですけど牛乳の行き先というか牛乳の生産・販売、製品とか含めて販売する方もけっこう四苦八苦している状況なので牛乳を高く買ってくださいって いうのは、これもなかなか難しいんですよね、業界全体で苦労しているっていう」

大瀧さんは、現在は1割ほどのエサの自給率を上げるなどコストの圧縮を掲げ、最善の経営を目指すしかないと力を込めます。

コージーファーム大瀧信夫社長:「とにかく牛を飼っている以上は牛を大事にして、牛を最大限、牛が働けるような環境を作ってあげるのが牛を飼っている人の最大の宿命だと思っているのでそこを従業員ともそういう話をしながらモチベーションを落とさないように話しているところでやっぱりそれがあって初めて消費者に飲んでもらえる牛乳を 届けられるわけなんでそこが最終的に大事なところですからそういうことを思いながらやっていくことだと思っています」