前後の速度測定可能な高性能レーダーパトカーが登場…北海道、日本無線の「JMA-401A」を採用

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■「データ偽造で逮捕」から約2年

「北海道警察が日本無線(JMA)のレーダーパトを購入した!」、そんな衝撃情報をマニア氏からいただいた。JMAとは、定置式(いわゆるネズミ捕り)の光電式、レーダー式の測定機でおなじみのメーカーだ。レーダーパトとは、赤いパトランプの間に速度取り締まり用の測定機を搭載したパトカーだ。警察は「車載式」という。

車載式について北海道警察は、だいぶ前から東京航空計器(TKK)のLSM-100を購入し続けてきた。私の手元にある契約書の写しから、契約日と数量と単価(税抜き)を拾ってみよう。

2014年6月3日 4セット 400万円
2015年8月17日 9セット 400万円
2016年8月10日 9セット 400万円
2016年12月2日 2セット 400万円
2018年7月27日 9セット 400万円
2019年8月9日 9セット 500万円

次々と42セットも。よっぽど気に入った? いや、LSM-100の測定方法は、可搬式(ネットではよく移動式と呼ばれる)のLSM-300と同じ、スキャンレーザー式(以下、レーザー式)だ。レーザー式はどうも取り締まりに向かず、しかし警察庁内にレーザー式を押す幹部がいるようだ。北海道警察は逆らえず、42セットも買い込んだのかも。大丈夫か?

そして2019年10月、とんでもないことが発覚した。北海道警察の警部補が、LSM-100でうまく取り締まれず測定値を偽造したというのだ。私はすぐに「ベテラン警部補が速度データ偽造を繰り返して逮捕…レーザーパトカー「LSM-100」の実績を上げるため?」(https://driver-web.jp/articles/detail/38245)との記事を書いた。だめなレーザー式の取り締まり件数を上げるよう指示され、偽造をやってしまったのではないか、と。

そこから2年間、LSM-100の購入はぴたり止まった。北海道警察はTKKに愛想を尽かし、JMAの車載式を購入した!? 私は震撼し、情報公開条例に基づき北海道警に対し開示請求をした。開示された文書は全部で301枚。その中に、2021年8月31日付けの入札結果があった。車載式5セットについて…。

(株)カナデン 2500万円 2位
日本無線(株) 1900万円 1位 →落札

おお! カナデンはTKKの代理店だ。おそらくはLSM-100の改良型、LSM-110を、1セット500万円で応札。JMAは過去の契約を見て400万円より下げ、380万円で応札したのだろう。301枚の中にはJMAの可搬式の取扱説明書もあった。表紙に「JMA-401A レーダー式車載速度測定装置」とある。JMA-401A、初めて聞く。

落札の翌日、9月1日、さっそく北海道警察本部長と日本無線とで契約が結ばれている。「納入期限」は2020年3月30日。JMA-401Aは現在すでに使用されているのだ。



■日本無線の「JMA-401A」とはどんな測定器なのか

LSM-100は、前方か後方かどちらか一方に向けてパトランプの間に搭載される。どっちを向いているか、外観から分かる。ところがJMA-401Aは、2つのアンテナを前後に向けて配置し、レドーム(白色の収納ケース)で覆う。外観からは測定機と分からず、前方も後方も測定できる。しかも、接近する車両も遠ざかる車両も測定できる。飛ばし屋たちにはヤバイ装置が登場したってことになりそうだ。

ところで、日本無線といえば2022年7月8日、新潟の可搬式の入札に突然顔を出し、カナデンを破って落札した(「新たな可搬式(移動式)オービスを新潟が落札! TKKでもSGGでもない、日本無線のオービスとは」https://driver-web.jp/articles/detail/39717)。警察庁の中に「TKKではなく」という動きがあるらしい。でもそう簡単にいくとは考えにくい。どんな暗闘がくり広げられるのか。私が言うのも何だが非常に心配だ。

文=今井亮一
肩書きは交通ジャーナリスト。1980年代から交通違反・取り締まりを取材研究し続け、著書多数。2000年以降、情報公開条例・法を利用し大量の警察文書を入手し続けてきた。2003年から裁判傍聴にも熱中。2009年12月からメルマガ「今井亮一の裁判傍聴バカ一代(いちだい)」を好評発行中。