オーディオ・ホームシアター製品を体験できる「OTOTEN2022」が、3年ぶりに東京国際フォーラムで開幕。今回はビクター(JVCケンウッド)、ヤマハの各ブースで参考出品があるということで、さっそく見てきました。

OTOTEN2022、東京国際フォーラムで開幕

OTOTENは入場無料ですが、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、Webサイトから事前登録が必要です。会期は6月12日まで。

“空間表現がスゴい”ビクター新ウッドコーンオーディオ(ガラス棟5F G510)

ビクターの新ウッドコーンオーディオシステムの参考出品

JVCケンウッドブースは2つの展示エリアに分かれており、注目はビクターブランドの製品として現在開発中の新しい“プレミアムウッドコーンオーディオシステム”の参考出品です。



ステレオスピーカーとCDレシーバー部で構成した製品で、発売時期や価格についてはまだ未定ですが、セット販売が基本となる模様。会期中の試作機による実演を通して、“CDでもいい音が安定して楽しめる”ことを伝えたいそうです。

音楽CDをセットしたところ

JVCケンウッドの音質マイスターである今村智氏によると、試作機のスピーカーは10年前の「EX-A300」(2012年発売)のものをベースとしながら、内部の構成を変えて音質強化を図っています。具体的には、過去製品ではネットワークを入れると音質が低下してしまうことからバイアンプ駆動・バイワイヤリング接続としていましたが、これでは汎用性に乏しいという課題があったとのこと。

今回の試作機ではスピーカーにネットワークを入れ、シングルワイヤ接続に変更。過去製品を超える音質を実現するために、さまざまな工夫も凝らしているといいます。

参考出品のスピーカー試作機。10年前の製品を改良し、過去製品を超える音質を追求している

背面。シングルワイヤ接続になっている

JVCケンウッドの音質マイスター、今村智氏(右)

サウンドの特徴について今村氏は、「(300と比べると)空間表現力がすごいことになっています。2chだけどサラウンド的な広がりがあり、重心の低い低音がさらに重厚になりました」と説明しています。

「空間表現力を上げることは解像感をあげるということ。ピアニッシモの表現力をいかに出すか、スピーカーの存在をいかに消すか、というところを目標にやってきて、そういう音が出るようになりました」(今村氏)

試作機のウッドコーンウーファーの色は、新品のウッドコーンと比べると色が濃く見えるが、これは経年経過による変化だという。長く使われてきたことがよく分かる、味わい深い色合いだ

CDレシーバー部については現行のコンパクトコンポーネントシステム「EX-HR10000」(直販162,800円)をベースに、振動対策を施すなどの改良を施しているとのこと。試作機のため詳細仕様はまだ固まっていないそうですが、ビクターならではの高音質化技術「K2テクノロジー」の投入や、Bluetooth対応製品になることが予想されます。

CDレシーバー部。試作機のベースになっているのは現行の「EX-HR10000」だという

現行のEX-HR10000。スピーカーは小さめのデスクトップサイズ

CDレシーバー部を上から見たところ

Bluetooth対応一体型コンポ「EX-D6」。同製品をベースに、CD BOX「JAZZで聴く」シリーズの音源160曲も収録した特定販路向けの「EX-D7」も高い人気を集めているそうだ

宇宙服にも使われる繊維素材使ったヤマハ新スピーカー(ガラス棟5F G502)

ヤマハミュージックジャパンは、5月にドイツで開かれたオーディオショー「HIGH END MUNICH」において海外発表した、3ウェイ4スピーカーのフロア型スピーカー「NS-2000A」を、OTOTEN会場にて国内初披露しました。

ヤマハの新しいフロア型スピーカー「NS-2000A」を、OTOTEN会場にて国内初披露

既存のヤマハ製スピーカー「NS-5000」、「NS-3000」の技術と設計思想を継承し、“音楽とライフスタイルの共存を追求した”という新デザインを採用。ヤマハのスピーカーらしい、黒鏡面ピアノフィニッシュで仕上げたデザインが高級感を演出しています。

今回のヤマハブースでは、最上位AVアンプ「RX-A8A」(484,000円)と計7本のNS-2000Aを組み合わせ、11.2chシステムによるホームシアターのデモンストレーションを実施。トーナルバランス(音色の正確な再現)、ダイナミクス(静と動の表現による躍動感)、サウンドイメージ(空間描写)をテーマに、音と臨場感の本質にこだわった、高い品位と没入感を生み出す「TRUE SOUND」が体感できるそうです。

NS-2000Aが前方スクリーンを挟んでズラリと並ぶ

試聴ブースの後ろ側にも直立するNS-2000Aの姿が

NS-2000Aは、宇宙服にも使われるほどの軽さと強靱さを兼ね備えた化学繊維「ZYLON」(ザイロン)と、ピアノスプルースなどの複合素材による振動板「ハーモニアス ダイアフラム」を全ユニットに採用しているのが大きな特徴です。

全ユニットでザイロンとピアノスプルースなどの複合素材による振動板「ハーモニアス ダイアフラム」を採用。マルチウェイスピーカーだが、(単発の)フルレンジスピーカーのように音色のそろった表現ができるのが特徴だという

同社のAV流通営業部 マーケティング課 主事の手塚忍氏によると、ザイロンは音の伝わり方が速く、内部損失が大きいことから不要共振が抑えられるメリットがあるものの、丈夫すぎて成形しにくく、その分コストがかかって高価になってしまうという課題があるとのこと。

NS-2000Aでは、振動板にザイロンを含む複合素材を使うことで成型しやすくし、さらにこれをツイーター(高域)、スコーカー(中域)、ウーファー(低域)のすべてに搭載。ユニットごとに鳴らす周波数帯域を分けているところは一般的なマルチウェイスピーカーと同じながら、「(単発の)フルレンジスピーカーのように音色のそろった表現ができる」のを特徴としています。

NS-2000Aは、ヤマハのフロア型スピーカーとしては「Soavo NS-F901」(2013年発売/1本22万円)以来の新製品になるとのこと。今回は参考出品ということで、発売時期と価格については未定としています。F901ユーザーの買い替え先として、今後注目を集めるスピーカーになるのかもしれません。

なお、ヤマハブースではこのほか、同社が取り組んでいる車載オーディオ商品向けの立体音響技術に関する説明パネルの展示と、車載向けに開発した位相イコライザー「Phitune」をヘッドホンで体験できるデモコーナーが設けられていました。

ヤマハの車載オーディオ向け立体音響技術の説明パネル展示

車載向けに開発した位相イコライザー「Phitune」をヘッドホンで体験できるデモコーナー