試合当日のS仙台戦の状況については、残って試合に参加したメンバーは大きく戦力ダウンしたわけではなく、後半80分までは0−0の拮抗した試合であり、最終的には0−1で鈴鹿PGが負けたものの、意図的に負け試合をしたことをうかがわせる事情は見られなかった。また、JFA規律委員会が独自に専門の調査機関に依頼し、実施した追加調査によれば、S仙台戦において、各国におけるスポーツ賭博等に絡んで試合結果を操作しようとする動きや徴候は確認されず、また、選手を含む関係者といわゆる八百長に関係する犯罪組織等との関連性も確認されなかった。

 JFA規律委員会は、C氏による第2回ミーティングにおける選手・スタッフに対する指示は、懲罰基準3−6(1)が定める「試合の経過、結果に不当に影響を与え、操作する行為」に該当すると判断。一方で、指示はオーナーであるB氏の第1回ミーティングにおける発言に誘発されたものであり、金銭的な利得を目的とするものではなかったこと、最終的にS仙台戦における意図的な敗退行為はなかったこと、C氏は既に執行役員を辞めチームを離れていること等は酌量すべき事情と認めている。C氏に対しては、懲罰基準3−6(1)に従えば、最低5年間のサッカー関連活動の禁止および最低1000万円の罰金が科されるところ、懲罰規程第12条第1項に基づいて酌量すべき事情を考慮して軽減し、通知日より2年間のサッカー関連活動の禁止を科すことになった。

 また、当時、鈴鹿PGの運営会社の執行役員であったC氏の行為はチームの行為に他ならないとして、懲罰基準3−6(2)「違反者が所属するチームには、当該試合の没収、競技会への参加資格の剥奪及びその他の追加的懲罰が科される」により、鈴鹿PGも懲罰の対象となった。ただ、「競技会への参加資格の剥奪」は、本件行為に何らの責任も負わない選手にとって著しく不利益を課す結果となることから、本件においては適切ではないことも踏まえ、同クラブに対しては当該試合の没収処分および追加的懲罰として500万円の罰金を科すことになった。

 B氏はチームのオーナーという影響力の強い立場にありながら、本件行為を誘発する発言をして本件の発端を作っており、その責任は重いとJFA規律委員会は判断した。そこで、B氏に対しては、懲罰基準3−7「本規程に該当条文がない場合で、チーム又は選手等が本協会の各種規程・規則の趣旨に明らかに反すると判断される行為を行った場合、当該チーム又は選手等に対して、本規程第4条に定める各懲罰のうちから適切と判断される懲罰を科すことができる」を適用し、当通知の日より3カ月間のサッカー関連活動の禁止を科すのが相当だとした。

 A氏については「チーム運営会社の代表取締役社長として本件行為を止めなければならなかったにもかかわらず、これを放置した責任は重い」としつつ、「最終的には、誓約書を作成するなどして試合の操作が起こらないように努めたこと」を酌量すべき情状と認めている。これらの事情を踏まえ、JFA規律委員会はA氏に対して懲罰基準3−7を適用し、当通知の日より1カ月間のサッカー関連活動の禁止を科すことになった。

 なお、JFAは最後に、「本件において、チーム幹部からの指示であったにもかかわらず、それを毅然として拒否し、試合のインテグリティを保全し、全力でプレーした選手及び監督の勇気ある行動は称えられるべきであり、当委員会として選手らと監督に対して、敬意を表する」ことを付言している。