まもなく女子ゴルフツアー開幕、ポテンシャルの高さに注目が集まる鶴岡果恋の素顔に迫った【写真:高橋学】

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3月3日からのダイキンオーキッドレディスで国内女子ゴルフツアー開幕

 女子プロゴルフの鶴岡果恋(明治安田生命)が、開幕ダッシュを狙う。昨季国内ツアーはメルセデスランキング55位。ギリギリで今季前半戦の出場が可能になる準シードを獲得した。だが、ドライバー平均飛距離とフェアウェーキープ率のポイントを換算したトータルドライビングは全体5位。そのポテンシャルの高さから、ツアー関係者の間では「1999年度生まれの“狭間世代”では、稲見萌寧の次に優勝する選手」と目されている。

 細身ながら迫力あるスイングも魅力。今季開幕戦のダイキンオーキッドレディス(3月3〜6日、沖縄・琉球GC)を前にその素顔に迫った。

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 ドキドキが止まらなかった。昨年11月21日の午後。愛媛・エリエールGC松山では、大王製紙エリエールレディス最終ラウンドが開催されていたが、鶴岡はクラブではなく、スマートホンを手にしていた。

「大事なシードが決まる試合なのに、私は予選落ちをして横浜の自宅にいました。そして、メルセデスランキングで私より下位にいた選手2人以上が、この試合の結果で私の合計ポイントを上回ると、私は56位になって最終QT(ツアー予選会)に行く状況でした。

 気が気じゃなく、JLPGA(日本女子プロゴルフ協会)スコア速報の更新をひたすら押していました。結果的に私を抜いたのは1人の選手だけで、私は55位。22年シーズン前半戦に出場できる準シードをギリギリで取れ、QTに行かずに済んで心底ホッとしました。もう、こんな思いはしたくないです」

 この「運」は大きい。最終QTは実績がある選手でも、通過できる保証がない。勢いのあるルーキーも含めた96人による4日間の戦い。前半戦の試合出場がうかがえる40位に入れなかったツアー優勝経験者、元シード選手は少なくない。

「本当にQTのプレッシャーはすごいです。最初に受けた時も、散々な結果に終わりました。その大切さは後になって知って、試合に出られるようになるまでが大変でした」

父「4回まで受けろ」のプロテストに一発合格もQT失敗

 プロ5年目を迎える鶴岡は、兄2人の影響を受けて10歳からゴルフを始めた。だが、のめり込むことはなく、他のスポーツにも関心を持っていた。

「兄たちは中学に上がるタイミングでゴルフをやめたので、私もやめてバレーボール部に入るつもりでした。でも、私をプロにさせる気満々の父は『絶対にダメだ』と。私は結構、抵抗していたんですけど」

 そんな思いとは裏腹に小6の鶴岡は、大会で好成績を残していた。中学時代も日本ジュニアなどの全国大会に出場。高校は、同じ練習環境だった1学年上の原英莉花に続いて湘南学院に進んだ。

「英莉花先輩がいたので高校まで頑張れました。2年になってからは『プロを目指そう。でも、大学に行きたい』という感じでしたが、父からは『高校を出たら受けろ。大学に進んだと思って4回までは受けろ』と言われていました。でも、さすがに『4回は嫌だ』と思い、そこからはめっちゃ練習しました」

 結果は一発合格だった。幼い頃から仲が良い稲見が、合格ラインの20位タイだった中、鶴岡は渋野日向子と同じ14位タイで突破。渋野と同様に前年度テストに失敗していた原は、10位で合格した。

「すごく嬉しかったです。父親が本当に喜んで『良かったな〜』と言ってくれました。今になっても、唯一の親孝行だったと思います(笑)。その頃は調子が良くて、練習ラウンドから『いけるかも』という感覚はありました」

 しかし、約3か月後に開催されたQTは2次で不通過。3日間で通算11オーバーだった。

「全然ダメでした。プロテストに合格してホッとしていたし、気合も入っていませんでした。ただ、新人はステップ・アップ・ツアーに出場できるので助かりました。翌19年の最終QTは42位。何人かが休んでいたら出られる順位でした」

 20年は、新型コロナウイルス感染拡大で大幅に試合数が減り、シーズンは翌21年と統合された。だが、鶴岡はQT順位から、ステップ・アップ・ツアーと両にらみで出場試合を決めていた。その中で、同年12月に開催された「増枠QT」を4位で通過。21年に実施された2度のリランキングでも上位に入り、統合シーズン計52試合のうち40試合出場を果たした。

「昨年の前半戦はいい流れがありましたが、終盤は体力が持ちませんでした。疲労がすごいのと、家に帰れないストレスも重なりました。試合は楽しいのですが、遠征地で月曜にコロナ検査、火曜は空いて、水曜に練ラン(練習ラウンド)という週もありました。家と地元が好きなのできつかったです。自然とやせて心配もしたのですが、バンバンに振れていて飛距離は落ちませんでした。ただ、4日間大会の最終日は疲れてショットが曲がっていました」

昨季、同期の稲見萌寧と優勝争い「持っていかれました」

「飛んで曲がらない」ドライバーショットで、トータルドライビングは5位だったが、終盤はその持ち味も生かせなかった。そして、パットにも泣かされたという。

「前半戦は距離感が合うし、ショートパットも入っていましたが、中盤から調子が悪くなって、グリップを順手から(左手は通常の握り方で、右手は添えるだけの)クロウにしたりもしました。ただ、クロウではロングパットの距離感が合わないので、今はロングを順手にして、ショートをクロウにしています」

 迷い、体力の問題も感じた1年だったが、4月のヤマハレディース(4位)では優勝争いをし、8月のニトリレディース(20位)では最終日最終組を経験、9月のゴルフ5レディス(3位)では最終日を64で回り、自己最高位をマークした。ただ、その3試合は全て稲見が優勝している。

「全部、萌寧に持っていかれました(笑)。萌寧とは小学校時代からずっと仲良しです。ひたすら練習するのは昔からです、一緒に夜ご飯を食べていると、『遊びに行きたいな〜』と言ったりはしますが、萌寧は絶対に行かないです」

 同じ1999年度生まれでツアー通算10勝を挙げ、昨季賞金女王の稲見は突出した存在だ。一方で、他に優勝者がいないことから、渋野、原ら98年度生まれの「黄金世代」、古江彩佳、西村優菜ら2000年度生まれの「プラチナ世代」に挟まれた「狭間世代」とも呼ばれている。その中で、鶴岡は優勝に近い存在だが、不名誉な世代の呼称は気にしていないという。

「特に『え〜っ』とは思いません。(99年度生まれは)アマチュアの頃から、上と下と比べて選手数が少ないんです。その構図が変わらないだけなのですが、同学年の萌寧が優勝することは嬉しいです。ただ、私も勝ちたいです。そして、早くシード権を決めたいです。朝からどんぶりでご飯を食べて、体づくりもしています。昨年まで、試合に帯同してくれた父も離れ、今季は自分でキャディーさんを手配して、運転もして頑張ります」

 勝負のシーズンも開幕間近。大手芸能プロダクションのホリプロとマネジメント契約している鶴岡には、一つのモチベーションがある。同じホリプロ所属で俳優の竹内涼真と対面することだ。

「結果を出せば、お会いできるのかな……と夢見ています(笑)」

 女子プロゴルファーも活躍していけば、番組やイベントで有名芸能人と共演する機会が出てくる、そこも踏まえて奮起を促すと、鶴岡は「そんな〜。私はちょっとだけ、お姿を見られるだけでいいので」と照れ笑いした。飛躍を予感させる22歳。今季もありのままで、愛される存在になりそうだ。

■鶴岡果恋(つるおか・かれん)

 1999年8月20日、神奈川・横浜市生まれ。湘南学院高卒。同校には片道約2時間かけて通学した。2018年7月にプロテスト合格。ホリプロとは19年からマネジメント契約。所属の明治安田生命、用具のテーラーメイドとは今オフに契約。昨季のトータルドライビング5位は、ドライビングディスタンス243.81ヤード(17位)とフェアウェーキープ率70.5046%(30位)の順位ポイントで示したもので、「飛んで曲がらない」を象徴。

(取材協力:港南ゴルフセンター)

(THE ANSWER編集部・柳田 通斉 / Michinari Yanagida)