【詳細】他の写真はこちら

「アイドルマスター シンデレラガールズ」の10周年を祝うライブツアーの名古屋公演“THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS 10th ANNIVERSARY M@GICAL WONDERLAND TOUR!!! CosmoStar Land”DAY1が2021年12月25日、愛知県国際展示場ホールA+オンライン配信にて開催された。

DAY1には一ノ瀬志希役の藍原ことみ、白菊ほたる役の天野聡美、緒方智絵里役の大空直美、藤本里奈役の金子真由美、白雪千夜役の関口理咲、渋谷凛役の福原綾香、二宮飛鳥役の青木志貴、速水奏役の飯田友子、新田美波役の洲崎綾、荒木比奈役の田辺留依、松永涼役の千菅春香、佐城雪美役の中澤ミナ、大和亜季役の村中知、塩見周子役のルゥティン、日野茜役の赤粼千夏、堀裕子役の鈴木絵理、的場梨沙役の集貝はな、小関麗奈役の長野佑紀、向井拓海役の原優子、城ヶ崎莉嘉役の山本希望、DAY1ゲストとして相葉夕美役の木村珠莉が出演した。

本来2021年9月4日〜5日にツアーの開幕公演として開催される予定だった本公演だが、今般の状況により開催延期に。順番を入れ替えて福岡、千葉(幕張)に続く形で年内に開催されることになった。折しもクリスマス当日の開催となったことに、公演前説&諸注意を担当したアシスタントの千川ちひろからは「あらためてこの日を迎えられるのは、聖なる夜の奇跡なのかもしれませんね」の言葉があった。福岡公演のDAY2で体調不良のために出演できなかった木村珠莉が新たにゲスト出演することが叶ったのも、嬉しい巡りあわせだ。

愛知公演のコンセプトは「CosmoStar Land」、星々の公演だ。順延前の開幕公演をベースにした演出ということで、ツアーの雛形となる内容と考えていいだろう。オープニングの映像演出には福岡公演とおなじく探検家衣装のダンサーたちが登場し、冒険の旅の彼方にある秘境の城を目指すパフォーマンスを繰り広げた。



けたたましい警告音とともに真っ赤な「!CAUTION」の文字列がサイドスクリーンに表示される。やがてステージが青い薄明かりに照らし出されると、舞台の各所に彫像のようにポーズを取ってたたずむアイドルたちが現れた。どこか剣呑で胸がザワザワするイントロが示すオープニングナンバーは「星環世界」。「アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ(デレステ)」6周年記念楽曲であり、本公演のために作られたと言ってもいいコンセプチュアルな楽曲だ。

姿を現したアイドルたちの衣装はアド・アストラ。アストロノーツをイメージした、「星環世界」に対応する衣装だ。ステージには出演アイドル全員が登場。オリジナル歌唱メンバーのひとりである木村の出演が叶ったのは星の巡り合わせだろうか。無重力を感じさせる浮遊感のある歌唱の中に、木村や大空の印象的なソロラップが自由に舞う。フルサイズではラップ成分が増えて楽曲の表情が少し変わり、より力強く感じられたように思う。

オープニングMCでライトが灯ると、キャスト陣から「みんないる!」「すごい!」の歓声が上がる。MCを仕切るのは福原綾香だ。当日は12月25日ということで、声を揃えての「メリークリスマス!」の言葉とともに、ステージに飾られたツリーや雪だるまといったアイテムが紹介された。また、洲崎綾の誕生日がサプライズで祝われたりと盛りだくさんだ。挨拶では集貝はなの「このツアーからスピンオフしないように、アタシについてきなさい!」と的場梨沙のボイス実装のきっかけになった短編アニメ「Spin-off!」に掛けた台詞や、福原の「ふーん、アンタたちが今日のクルー?」と渋谷凛の名フレーズを宇宙船になぞらえた台詞が印象に残った。

ライブ本編の先陣を切ったのは赤崎千夏、大空直美、金子真由美、洲崎綾、鈴木絵理、田辺留依、長野佑紀、原優子、村中知、山本希望による「無重力シャトル」。アップテンポで心浮き立つナンバーはゆずの北川悠仁の作詞作曲で話題となった楽曲だ。個性的なメンバーが揃った多人数歌唱の中で、長野の個性の立ったボーカルが飛び出してくるようで、ここからのパフォーマンスに期待が高まる。

宇宙をイメージさせる楽曲の並びに続くのは「オウムアムアに幸運を」。オウムアムアとは太陽系外から飛来した恒星間天体の名称だ。歌唱メンバーは藍原ことみ、千菅春香、集貝はなで、オリジナルメンバーである藍原と集貝のふたりに千菅が加わった形だ。藍原と集貝の膨らみのある響きのよい歌声は抜群の相性で、そこに千菅の力強く表現力豊かな歌声がぴったりとフィット。天才広川恵一の手による魅力的な難曲を見事にものにしていた。

ソロのトップバッターは山本希望の「SUPERLOVE☆」。「スーパーメリークリースマス!」の声とともに登場した山本は、人生初だという金髪で莉嘉のビジュアルを再現。ダンサーを引き連れた軽快でリズミカルなダンスと笑顔が眩しい表情の躍動が印象的だ。莉嘉らしさ全開の楽曲だが、2番に入ると“新時代 愛は宇宙を超えた 無重力 上も下もない”と実は宇宙モチーフを引き継いでいることが明らかになるのがいい。“世界中に”の歌詞は“宇宙中に”に歌い変え。身近な人に、世界の人に向けた無邪気で無敵な愛の歌が、ついに宇宙を超えた。

金子真由美と原優子はノーティギャルズとして「Virgin Love」を披露。コミック「アイドルマスター シンデレラガールズ WILD WIND GIRL」から生まれた楽曲だ。拳を突き上げて煽る原と両手をいっぱいに広げて手を振る金子、表現は違ってもこぼれるような満面の笑顔は同じだ。藤本の腰のあたりでは、里奈がいつも身につけているクマちゃんずのぬいぐるみがペアで揺れている。間奏で原が「行くぜ〜!」と雄叫びを上げると、ふたりはステージの合流ポイントに全力ダッシュ! 「ふたりの色、振ってほしいぽよ〜!」「心のなかでハイハイ言えよな〜!」と煽ると、観客も全力でこれに応えていた。



「君のステージ衣装、本当は…」は飯田友子、関口理咲、田辺留依、集貝はな、中澤ミナのオリジナルメンバー5人が集結して披露。優しい旋律のロングイントロが付加されたバージョンだ。飯田が落ち着いた大人のトーンで優しくソロを歌い出すと、関口がキリッとした表情の聴かせる低音で、田辺が全身で大きく表現するような歌唱で歌い継いでいく。全体のトーンが抑えめな分、集貝のキャラクターボイス強めで通りのいい高音が際立って響く。中澤の訥々とまっすぐに歌う感じは佐城雪美の世界そのものに感じられた。俊龍が作詞作曲を手掛けた楽曲は2010年代を色濃く感じさせるアイドルソング。時代に合わせてアップデートし続ける「シンデレラガールズ」ならではのライブ感を感じたし、そのセンターに立つ新しい世代のシンデレラである中澤の存在感が光っていた。

最初のMCコーナーでは“忘れられないあの出来事”をテーマにトークを進行。福原綾香は「(最初期のテレビCMで)渋谷凛の声が流れた瞬間」を挙げると、5畳の古いアパートで震えながら反響の大きさを見ていたという、これぞ10年! という思い出を明かしていた。誕生日のライブを有観客で迎えられた今そのものを忘れられないとした洲崎綾や、「4thLIVE TriCastle Story」で竹達彩奈がサプライズ出演した瞬間の会場で受けた衝撃を挙げた藍原ことみ、「日清カレーメシ」とのコラボを熱く語った赤粼千夏など思い出は多岐にわたった。天野聡美がとても緊張していた初ライブの控室で、椅子を並べて寝ている山本希望や、その前をセグウェイに乗って通り過ぎていく桜咲千依が見せた余裕に驚いたというエピソードは、光景が目に浮かぶようだった。木村珠莉はユニット・フィオレンティナの仲間である西園寺琴歌に声がつく日が待ち望んでいたことや、千葉公演のDAY2で琴歌役の安齋由香里が自身の大切な歌「Dreaming Star」を歌ってくれた喜びを語っていて、ツアーならではの物語のつながりを感じさせた。

「BEYOND THE STARLIGHT」は天野聡美、鈴木絵理、中澤ミナ、長野佑紀、山本希望が披露。山本の楽しそうな歌声の存在感が圧倒的で、5人で歌う際の土台になっているのはさすがはオリジナルメンバー。センターでは長野佑紀で元気いっぱいに躍動し、自由に弾むような歌声が楽しい。元気なアイドルからおとなしいアイドルまでが一緒になって歌う楽しく輝かしい楽曲は、「デレステ」の1周年を祝った最初のアニバーサリーの楽曲。それが「シンデレラガールズ」の10年のほぼ半ばに登場した曲であることに、積み重ねてきた時間を改めて感じた。

藍原ことみは「秘密のトワレ」を披露。「CINDERELLA MASTER 038」に収録された一ノ瀬志希のルーツとなる楽曲だ。ここまでロングイントロでじっくりと見せる曲が多かった分、頭サビの印象的なボーカルでズバッと斬り込んでいく歌い出しが鮮やかに映る。歌声そのものから志希という存在を濃厚に香り立たせる歌唱には魔力すら感じた。今日の藍原の歌唱は抑えたトーンのパートをグッと控えて歌い、その分サビの明度を上げていくメリハリが印象的で、隅々までコントロールされた表現と歌唱が見事だった。

ルゥティンは「Private Sign」を披露。周子のソロ2周目の楽曲で、ライブでの披露は2回目となる。志希から周子、藍原からルゥという流れがとても自然に収まって感じられるのはこれまでの積み重ねだろうか。さわやかで玲瓏な響きのイントロとともに、ルゥとダンサーたちが円をイメージさせる流れるようなダンスで魅せる。周子という雲のように自由な少女がうちに秘めた一面と心情を垣間見せるようなパフォーマンスだ。弾むような足取りでステージを渡っていくと、くるっとターン。涼やかでキュートな歌声と、小指をぴっと立てたようなサイン、飛び回る蝶を象った軽やかなダンスが印象的だった。

ソロ三連のラストは天野聡美の「谷の底で咲く花は」。天野の初のソロ曲であり、白菊ほたるというアイドルの在り方を象徴するような楽曲だ。星空が瞬くようなステージに天野の姿が浮かび上がると、思わず息を呑む。「CINDERELLA MASTER」のジャケットでほたるが着ていた、個別衣装を天野が身にまとっていたからだ。白を基調に、幾重にも布地を重ねたシルエットは慎ましやかな花のよう。胸元に光る真紅のブローチが目を惹く。スクリーンには一輪のスズランが浮かび上がるように咲いているが、衣装をまとい歌う天野の姿と花の佇まいが重なる。無人の野に身ひとつで立つようなむきだしのステージで、時に声を震わせながらもひたむきに、まっすぐに歌う強さは、嵐や雪の中でも気高さを失わない一輪の花のようだった。

赤崎千夏、大空直美、鈴木絵理、村中知、山本希望は「空想探査計画」を披露。遠い銀河に向けた探査音が響くと、明るい笑顔で冒険に向かう5人がステージに登場。どこかしっとりとした落ち着きがありながらも、希望に満ちている感じは未知なる宇宙の探査にふさわしい響きだ。赤粼はこの曲のオリジナルメンバーで、“活字の星を手を伸ばし掴めば”や“突き進むずっと!”のフレーズでの朗らかさがとても印象的だった。落ち着いたトーンの楽曲であっても、歌うのはアクティブなアイドルが多いメンバーで、内に秘めたワクワクがあふれでるように感じられる。児童合唱のように素朴なラララの歌声が、ライブ会場という宇宙に広がっていった。

ここでのMCコーナーでのトークテーマは“忘れられないライブの名場面”。なんと飯田は先の藍原と全く同じく竹達彩奈のサプライズ出演シーンを挙げており、出演キャストにとってもそれだけ記憶に残る場面だったことがわかる。集貝はなは、2014年の「THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS 2ndLIVE PARTY M@GIC!!」を挙げた。集貝は当時同ライブのライブBDをママに買ってもらったとのことで、ステージ上でさまざまな体験をするたびに原点としてこのライブを思い出すとのことだった。山本は「(名場面は)今でしょ!」と名台詞風にキメると、「人生初のパツキンで宇宙にいる。今でしょ!」と、莉嘉をイメージした明るい髪色が人生初の挑戦であることに言及していた。



木村珠莉は「花のことば」をライブ披露。相葉夕美の3曲目のソロ曲であり、おそらくは彼女が体調不良でライブに参加できなかった本ツアー福岡公演DAY2で披露される予定だったであろう楽曲だ。木村は髪を夕美の明るい色に染め、福岡公演用に用意されたピクシー・ケープ衣装をまとって登場。あの日を取り戻す意志を感じる装いだ。柔らかい表情で優しく紡がれる歌声は、緑が芽吹き花が開くように徐々に力強さと光を増していく。スクリーンには一面の美しい花畑が広がり、様々な花のイメージが飛び交う。季節の彩りを楽しそうに、時にはにかみなから歌う姿に、心が暖かくなるようなステージだった。歌い終えた木村はようやくこの曲を歌えた喜びを語ると「あの時の忘れ物を回収できたと思っています。本当に待っててくれてありがとう、プロデューサーさん!」と、木村自身と夕美の言葉で伝えていた。

天野聡美、福原綾香、村中知、ルゥティンは「さよならアンドロメダ」を披露。青を基軸としたレーザー光が会場を満たし、星空のスクリーンに叙情的な縦書き文字が曲名を映す。原曲メンバーは福原と村中で、ふたりの落ち着いた大人でクールな一面を感じることができた。これにルゥが魅惑的な低音で寄り添っていけば、キュート一点の天野の可憐な歌声がワンポイントとして光ってくる。動きの少ない楽曲だからこそ表情と佇まいが重要で、世界に深く潜っていくルゥや、微笑みながら歌いかけるような福原など、それぞれの表現を堪能することができた。淡く優しく、低音とファルセットを巧みに行き来する村中の歌唱もこの楽曲ならではのものだった。

洲崎綾は「ヴィーナスシンドローム」を披露。新田美波の原点と言える楽曲で、この曲を歌う時の洲崎には美波が化身したような、どこか女神めいた神々しさがある。紫と白に染め分けられたステージに登場した洲崎は、暗闇から浮かび上がるように歌い始める。しっかりとした歌唱は、いつもより少し力強いように感じる。カメラを見つめる涼やかな目元と、ニュアンス豊かな手元の動きが歌声と同じぐらい雄弁だ。間奏で決然とした足取りで階段を降りると、歌声はさらに伸びやかに広がっていった。歌い終えた洲崎はつぼみを咲かせるように開けた手元を見つめると、にこっと華やかな笑顔を浮かべた。

青木志貴は「共鳴世界の存在論」を披露。疾走するサウンドとともに荒れ狂うエネルギーを具象化したような映像が映し出されると、スタンドマイクを手にした青木が登場。飛鳥をイメージしたビジュアルだが、それが普段の青木自身と地続きに感じられるのが彼女の特異なところ。明滅するライトとノイズを身にまといながら歌う姿はどこか浮世離れしている。バックに流れるノイズ混じりの飛鳥の台詞に合わせて音のない言葉を紡ぐ姿が怖いぐらいに絵になる。マイクスタンドを自在に操りながら、時に透明で高らかに、時に語りかけるように叙情的に。強烈な印象を残した青木は「さぁ、行こうか」と観衆をいざなってステージを締めくくった。

ここからは属性曲ブロック。キュート曲は天野聡美、大空直美、関口理咲による「アタシポンコツアンドロイド」だ。花咲くような笑顔で元気に手を振る大空と天野と、きゅっと唇を引き結んだクールな表情で直立して手を振る関口の落差が楽しい。ツインテールを弾ませながら歌う大空をセンターに、キュート側いっぱいに寄せた天野とキュート内クールと言えそうな関口の低めの美声のバランスがいい。キュートさとアンドロイド感の塩梅をうまく分担したパフォーマンスだった。

クール属性曲は青木志貴、飯田友子、洲崎綾、中澤ミナの「Nation Blue」。最初の属性曲を集めたド直球の曲選考は、この公演が本来ツアーの開幕であったことを考えるとしっくり来る。2013年にリリースされた「THE IDOLM@STER CINDERELLA MASTER Cool jewelries! 001」収録時のオリジナルメンバーである洲崎を筆頭に、各世代からバランス良くメンバーを集めた。黒髪ストレートの洲崎と中澤、白金と青に髪を染めあげた青木と飯田の対比が鮮やかだが、ビジュアル再現度の高さは共通している。クールさの中にも時折微笑みを交える洲崎や、観客を煽る動きがどこか控えめな中澤など、共通曲の中でもちょっとした表現の差異が見えるのが少人数編成の楽しみだ。

この流れならパッション曲はもちろん「Orange Sapphire」。メンバーは赤崎千夏、集貝はな、長野佑紀で、パッションを体現するアイドル・日野茜を演じる赤粼が、センターに立って新鋭2人を引っ張るような編成だ。集貝のパフォーマンスは恋の島を見つけたキラキラを好奇心いっぱいに表現しているよう。長野は歌声の端々から“レイナサマ”らしいいたずらっぽい笑みがこぼれるような表現がとてもオリジナルだ。そしてそれを受ける赤崎はいつもの元気さはそのままに抜群の安定感を見せていて、3人を引っ張るちょっとお姉さんな茜のイメージだ。新鋭2人のソロパートを見ていると、抑揚をはっきりつけながらリズミカルな音の楽しさを重視する集貝と、曲と歌詞に込める喜・楽の感情表現に特化した長野という印象だ。長年聴き慣れた楽曲だからこそ、組み合わせの新鮮さが際立って感じられる一曲だった。

「咲いてJewel」は藍原ことみ、青木志貴、天野聡美、飯田友子、関口理咲、千菅春香、中澤ミナ、福原綾香、ルゥティンの多人数編成で披露。ダンサブルなアレンジのロングイントロがあけると、ステージに4人×5人のフォーメーションを取ったアイドルたちが登場。クール適性の高いメンバーの中で、時に妖しい笑みを浮かべながら温度の低い表現を見せる天野の姿が新鮮だ。オリジナルメンバーの飯田やルゥ、青木に加え、実力派をズラリと並べた分厚いパフォーマンスだった。



ラストブロック、ソロのトップを飾ったのは田辺留依の「泡沫のアイオーン」。ライブ初披露だ。清涼で疾走感のあるイントロと突き抜けるようなファルセットの頭サビから雪崩込む音の世界は、まるでロボットアニメの主題歌のようだ。“宇宙に導かれて私は生きる”のフレーズに、今回のライブコンセプトとのつながりを見つけてにやり。間奏の舞うようなダンスのメリハリ感も印象的だ。田辺自身のスキルの高さを十全に生かしている印象で、アイドルとしての荒木比奈の可能性をリアルサイドから拡張していくように感じられた。

飯田友子は「Hotel Moonside」を披露。セットリストには“Dance ShowCase Ver.”と刻まれており、アレンジされたイントロに合わせてサングラスを着用したダンサーたちがキレ味鋭いダンスパフォーマンスを披露。8人のダンサーが独特の世界をステージに展開したところで、ダンサーの影から飯田が真打ち登場とばかりに姿を見せる。驚いたのは飯田がハンドマイクではなくヘッドセットを着用していたこと。過去、ステージ上で物を食べる両手を開けるためにヘッドセットを着用したアイドルはいたが、ダンスのために両手を空けてステージに立つのはかなり異例。この曲に対するこだわりの深さを感じる。スーパーロングアレンジのイントロをダンサーと一体になったダンスだけで魅せきると、深い海の底から響くようなボーカルパートへ。ダンスの負荷を大きく挙げたとは思えない安定した歌声は練度の高さを感じさせた。歌声とダンスと光の洪水の中で、見るものを忘我の世界にトランスさせるような圧巻のパフォーマンスだった。

村中知は「弾丸サバイバー」を披露。前曲とカラーは全く違うが、パフォーマンスの強度という点では匹敵する楽曲だ。歌い出しの一音目から頂点とも言うべきテンションで放たれる歌声が、彼女に内在するエネルギーの大きさを感じさせる。敬礼とともに拳を突き上げ、大きなアクションで会場を見渡す村中の瞳が爛々と輝く。新年の配信ライブで着用した個別衣装から共通衣装のアド・アストラになったことで印象が変わるかと思ったが、村中知という個から放たれる巨大なエネルギーに塗りつぶされる感じで意外と落差は少ない。パワフルさに圧倒され続けたと思えば、“Ready?”のフレーズではささやくように抑えたボーカルでぐいっと引力を出す。カメラを指差す瞬間の眼力と笑顔にフォーカスしていくカメラワークが、見せ所を心得ていて快感だ。怒涛のように畳み掛ける追撃で、見る者のテンションと熱量を引っ張り上げ、一緒に燃え上がるような時間だった。



金子真由美、集貝はな、長野佑紀、原優子は「EVIL LIVE」を初披露。ユニットBAD BEASTSから4人が集結した。剣呑なイントロとともに4人が登場すると、金子と原は鉄パイプ! 長野と集貝は釘バット! を担いでいる。据わった目で客席を見据える金子の隠れた実力者感。余裕たっぷりに客席を見渡す集貝や、心底楽しそうに釘バットを振りかぶる長野の釘バットが似合うことと言ったらない。原演じる拓海は、あまり演じる必要なく鉄パイプが馴染む感じだ。時にドスを利かせ、がなるようなワイルドな歌声が新たな扉を開いていく。間奏、ステージ前に出た4人はステージ下に凶器をポイっと投げ捨てると、ここからは徒手にハンドマイクでダンスを見せていく。観客の声なき激情を示すように、燃えるようなサイリウムが躍動していた。



関口理咲、千菅春香、福原綾香は「Drastic Melody」を披露。ユニットSirius Chordが勢揃い、前曲に続き初披露ユニット曲だ。ここまでのパフォーマンスを見ていても、関口は福原や千菅との共演が絶対にハマる予感があった。関口は普段よりもさらにハスキーでパワフルな歌唱で、シンデレラ屈指の実力者たちと響き合ってみせた。笑顔で歌う千菅が本当に楽しそうで、センターに立つ福原も歌声のノリが違う。千菅と福原があまりにも強く全力過ぎて、その渦の中で自在に歌う関口の非凡さが際立って感じられた。3人の凛としたソリッドなパフォーマンスと、アド・アストラ衣装の相性の良さも付記しておきたい。歌明けのMCでは、キャスト陣から思わず「かっこいい!」の声が幾つも飛んでいた。

本編のラストは「Stage Bye Stage」。ステージを締めくくり、一時の別れを告げるナンバーだ。たくさんの笑顔とともに“またね”の約束を積み重ねると、「バイバイ!」の声とともにアイドルたちはステージを降りた。

アンコール中には、これまでのライブの歴史を振り返るメモリームービーが流された。ファーストライブの初々しい姿から最新のライブまでを辿る映像の中に、今日の出演者たちの名シーンや、MCで話題になったサプライズなどもきちんと織り込まれていた。



アンコールステージでは、10周年衣装“シンデレラ・コレクション”に着替えたアイドルたちが「EVERLASTING」を披露。9月にこの公演が行われていたら、今日のようなセットリストを畳み掛けたあとのアンコールに新曲・新衣装を初お披露目する予定だったと思うと、出し惜しみのなさに恐れ入る。間奏ではモチーフとした楽曲たちの数だけスターがまたたく中、アイドルたちのゆったりとした群舞がステージを彩った。

締めの挨拶では、延期されていた念願の名古屋公演を有観客で迎えることができた喜びと感謝の声が多く聞かれた。この日クリスマスが誕生日当日の洲崎は「今日だけは言わせてください、今日皆さんに会えて、本当に心がいっぱいになりました。幸せな時間をありがとうございました」と深々と頭を下げていた。会場いっぱいに広がるあたたかな光の海を、山本が「世界で一番大きなクリスマスツリー、クリスマス平野」と表現していたのも印象的だった。

アンコールのラストナンバーはもちろん「お願い!シンデレラ」。変わることのない、変わり続ける歌声で、10周年の聖夜のライブは幕を下ろした。

Text by 中里キリ

THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS 10th ANNIVERSARY M@GICAL WONDERLAND TOUR!!! CosmoStar Land」DAY1

2021.12.25 愛知県国際展示場ホールA+オンライン配信

<セットリスト>

M01:星環世界(THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS)

M02:無重力シャトル(赤崎千夏、大空直美、金子真由美、洲崎綾、鈴木絵理、田辺留依、長野佑紀、原優子、村中知、山本希望)

M03:オウムアムアに幸運を(Short Outro Ver.)(藍原ことみ、千菅春香、集貝はな)

M04:SUPERLOVE☆(山本希望)

M05:Virgin Love(金子真由美、原優子)

M06:君のステージ衣装、本当は…(Long Intro Ver.)(飯田友子、関口理咲、田辺留依、集貝はな、中澤ミナ)

M07:BEYOND THE STARLIGHT(Long Intro Ver.)(天野聡美、鈴木絵理、中澤ミナ、長野佑紀、山本希望)

M08:秘密のトワレ(藍原ことみ)

M09:Private Sign(ルゥティン)

M10:谷の底で咲く花は(天野聡美)

M11:空想探査計画(赤崎千夏、大空直美、鈴木絵理、村中知、山本希望)

M12:花のことば(木村珠莉)

M13:さよならアンドロメダ(天野聡美、福原綾香、村中知、ルゥティン)

M14:ヴィーナスシンドローム(Long Intro Ver.)(洲崎綾)

M15:共鳴世界の存在論(青木志貴)

M16:アタシポンコツアンドロイド(天野聡美、大空直美、関口理咲)

M17:Nation Blue(青木志貴、飯田友子、洲崎綾、中澤ミナ)

M18:Orange Sapphire(赤崎千夏、集貝はな、長野佑紀)

M19:咲いてJewel(Long Intro Ver.)(藍原ことみ、青木志貴、天野聡美、飯田友子、関口理咲、千菅春香、中澤ミナ、福原綾香、ルゥティン)

M20:泡沫のアイオーン(Long Intro Ver.)(田辺留依)

M21:Hotel Moonside(Dance ShowCase Ver.)(飯田友子)

M22:弾丸サバイバー(Long Intro Ver.)(村中知)

M23:EVIL LIVE(金子真由美、集貝はな、長野佑紀、原優子)

M24:Drastic Melody(Long Intro Ver.)(関口理咲、千菅春香、福原綾香)

M25:Stage Bye Stage(THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS)

M26:EVERLASTING(THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS)

M27:お願い!シンデレラ(THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS)

©BANDAI NAMCO Entertainment Inc.

関連リンク



「アイドルマスターシンデレラガールズ」日本コロムビア公式サイト

https://columbia.jp/idolmaster/

「アイドルマスター」公式ポータルサイト

https://idolmaster-official.jp/