メタバースが見せる新たな世界! リアルタイム性を追求したコミュニケーションのあるべき未来を考える

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●メタバースが身近な存在になる未来
2021年にIT・通信業界を賑わせたキーワードに「メタバース」があります。
人々がVR(仮想現実)やAR(拡張現実)、そしてMR(複合現実)といった「xR」
技術を利用し、いつでもどこでも隣にいるかのようにコミュニケーションを取れる社会や世界を指した概念です。

SNSサービス「Facebook(フェイスブック)」を運営する企業は社名を「Facebook」から「Meta(メタ)」へと変更し、SNSの進化した未来としてメタバースを定義づけて同社の基軸戦略に据えました。
いよいよ、バーチャルとリアルが融合する時代が来ます。

では、メタバースは私たちの生活にどのような影響を与え、どのような便利さを提供してくれるのでしょうか。
そもそもメタバースとは、肌感覚でどう解釈すべき概念なのでしょうか。


フェイスブック改めメタが目指す未来のコミュニケーションとは



●メタバースはSNSの発展型ではない
現在、私たちの主なコミュニケーション手段と言えば、
・LINE
・Instagram
・Twitter
・Facebook
・TikTok
これらのSNSサービスではないでしょうか。
恐らく、仕事以外でメールやSMSでのやり取りを中心としている人は少ないでしょう。

それぞれのSNSには特徴があり、
・非常に親しい人々でコミュニティを形成するLINE
・写真や動画を中心としたコミュニティを形成するInstagram
・特定の趣向や話題、仕事などでコミュニティを形成するFacebook
・お互いがゆるく繋がりニュースソースなどにも活用するTwitter
・動画配信サービスのようなコミュニティを形成するTikTok
このような違いがあります。
しかしながら、これらのSNSすべてに共通する部分もあります。
それは、「お互いが常に遠くにいる人とコミュニケーションを取っている感覚」であることです。

例えばLINEなどは非常に近い人間関係で利用されることが多いSNSですが、
それでもすぐ隣にいて会話している感覚とは少し違います。

常に繋がり続けながらも、時間がある時に閲覧し返信するという「非リアルタイム性」を主軸とし、それが評価されたからこそ「既読」というシステムが人々に高く評価されたのです。

メタバースが目指す未来は少し違います。
メタバースでは、常にお互いが隣にいるような感覚で会話をする「リアルタイム性」を重視します。

例えば、
・仮想空間にバーチャル会議室を設け、アバターによって人々がそこに集って会議を行う
・仮想空間にイベントスペースを設けてバーチャルライブやスポーツ観戦を行う
・ARやMR技術によって自分の隣に友人を表示し、あたかもそこに存在しているかのように会話をする
このような使い方が想定されます。
メタバースはSNSの発展型というよりも、電話やボイスチャットに映像技術を組み合わせたものと考えると分かりやすいかもしれません。


ボイスチャットを使ってオンラインゲームを遊んでいる感覚が最も近いだろう(「ファイナルファンタジーXIV」Copyright (C) SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.)



●KDDIのハロウィーンフェス成功が見せたメタバースの可能性
こういった違いから、SNSは今後も残り続け、新たにメタバースという存在が私達のコミュニケーション手段の1つとして登場すると考えるのが自然です。

また、メタバースは遠くにいる人々を直接的に繋ぐコミュニケーションサービスだけに当てはめられる概念ではありません。
・家族で自宅にいながら世界旅行体験をする
・友人とバーチャルゲームを一緒に楽しむ
このような、現実に近くにいる人々と仮想体験を共有する、という楽しみ方もあります。

仮想空間の利用や、現実の空間へ映像を合成・融合する技術を活用することのすべてがメタバースの要素として考えられます。
そしてそれは多くの人々がまだ体験したことのない世界です。

現実には、オンラインゲームやVRチャットシステムなどですでに体験している人々がいます。

メタや通信関連企業は、これをすべての人々が当たり前に使える世界を目指しています。

例えばKDDIは、2020年から「バーチャル渋谷 au 5G ハロウィーンフェス」と題するVRイベントを開催してきました。
第2回となる2021年には述べ55万人もの集客を行い、興行としても大きな成果を上げています。


仮想空間上に「バーチャル渋谷」を作り、そこでお祭りイベントを開催し大いに盛り上がった


このフェスでは単に仮想空間上に人々を集めてライブを行っただけではなく、
・アニメとのコラボアバターを用意
・参加者が楽しめる探索型イベントや時間制限のあるゲリライベントを実施
・イベントグッズをバーチャルショップで展開・販売
このように、1つの仮想空間で複数の楽しみ方を用意したり、現実でも楽しめる複合型のメタバース体験を提供しました。

KDDIによるフェスの実現は、メタバースの可能性を非常に強く印象づけるものです。
単なるコミュニケーションツールではなく、企業がビジネスとして活用できることを証明したのです。

また、このフェスはVRゴーグルのような特殊なデバイスを用いなくとも、誰でも持っているスマートフォンから参加できたことも大きな成果です。

すべての人が利用しやすいサービスを考えたとき、重くて持ち運びづらいVRゴーグルや自宅専用の巨大なモニター(テレビ)では普及しません。
スマートフォンだけでアバターを作成でき、仮想空間へ入ることができるという手軽さこそが重要だったのです。


メタバース普及のカギはスマートフォンにある



スマートフォンだけで仮想現実や仮想空間を手軽に利用できる世界、それがメタバースの目指す未来です。
もしかしたら、スマートフォン以外にもスマートグラスのようなデバイスが登場するかもしれません。

非リアルタイムなつながりを楽しむSNSと、リアルタイムで楽しさを共有するメタバース。
2つの存在が私たちの未来をさらに面白くしてくれることを期待しましょう。




執筆 秋吉 健