ベランダ菜園におすすめのハーブ年表。上手な活用法もご紹介!【ベランダ菜園におすすめの野菜&ハーブ #22】

1年が経過したベランダ菜園。気になるハーブの結果は!?

ベランダ菜園をやってみたけどなかなかうまくいかない、何から始めれば良いかわからないという方へ向けて、月ごとにベランダ菜園向きのおすすめ野菜&ハーブを紹介してきた本連載。

野菜編の前回に続き、後編ではハーブの結果についてお伝えいたします。てしま農園の龍さん指導の元、取材だけでなく実際にベランダ菜園に挑戦していた筆者がこれまでに植えた植物のビフォーアフターを振り返りながら、1年間教えていただことを復習していきましょう!

ハーブは全体的に育てやすいものが多く失敗は少なかったのですが、むしろ育ちすぎて使いみちに困ることも。そんなときの上手な活用法も紹介しているので、ぜひ参考にしてみてくださいね。

【9月】ルッコラ

【Before】お手入れのしやすさ&使い勝手はピカイチ

筆者の自宅ベランダは水道がなく非常に狭いこともあり、1階の玄関前で1年間栽培を続けていました。玄関は北向きなので、日当たりがあまりよくありません。

しかしルッコラは、「日が当たりすぎると苦味が強くなってしまうので、明るい日陰がもっとも適切な環境です」という龍さんの言葉どおり、冬の北向き玄関という日差しがほぼ入らない環境でもグングン育ちました!

【After】とう立ちは栽培終了の合図

日にあまり当たっていなかったためか、甘くおいしく育ったルッコラ。摘めば摘むほど新芽が生えるので、毎日のように料理に活用できます。朝に水やりをするときに少し摘んで、パンに挟んだりミニサラダにしたりと、朝食に使用するのがおすすめです。

そんな大活躍のルッコラですが、4月頃には暖かな気候でとう立ち(花が咲くこと)してしまいます。寂しくもありますが「とう立ちは栽培終了の合図のようなもの。3~4月はほかの植物が植え込みシーズンを迎えるので、別の植物に目を向けるタイミングなんだと割り切りましょう!」と龍さん。また来年会うことを誓い、ルッコラとはお別れをしました。

【10月】パクチー

【Before】苗が定着しない場合は土寄せを

最初はヒョロヒョロで頼りないパクチーの苗でしたが、数週間もするとしっかり根を張って、茎もかなり太くなりました。ほかの苗にも共通しますが、時間が経ってもまだ苗が安定していないと感じたら、根元に土を寄せて茎を少し深めに土に入れてあげると茎が安定し育ちやすくなりますよ!

【After】大量に収穫できたら冷凍保存がおすすめ

しっかり根付いたパクチーは、冬の寒さなんてなんのその、モリモリ育っていきました。病気にも強く虫もほとんどつかないので、お手入れは土が乾いたときに水をやることと、葉が黄色くなってきたら油かすや化成肥料などを追肥してあげるくらいでOKです。

パクチー好きな筆者ですが、それでも消費が追いつかないほど繁殖力の強いパクチー。困ったときは、チャック付き保存袋で冷凍保存がおすすめです。葉と茎はざく切りにして、そのまま袋に入れて冷凍庫へ。

また、パクチーの根っこもエスニック料理ではよく使われるので、ぜひ活用しましょう!根っこは1本ずつラップにくるんでから、袋に入れて冷凍するといいですよ。

【11月】パセリ

【Before】驚異の成長スピード!毎日収穫しても次々に生える

日当たりと風通しの良い環境を好むパセリは、北向き玄関のなかでもなるべく日の当たる風通しの良い場所に置きました。あとは土が乾いたら水やり、月に一度の追肥、この2つを徹底するだけで、消費が追いつかないほどグングン育ちます。

【After】種まで育てれば半永久的に群生

4月頃からとう立ちし始めたパセリですが、花が咲く前に花芽を摘み取ることで7月頃まで成長し続けました。「とう立ちしたあとも育て続ければ、種が取れることも。特にパセリは越冬できる植物なので、そのまま放置して種が落ちるのを見守っても大丈夫です」と龍さん。そのとおり、種が落ちたところから新しい芽がたくさん生えてきました!

パセリもパクチー同様、冷凍保存が可能。凍ったパセリを袋の上から揉みほぐしてパラパラにすると、簡単にみじん切りの状態になるので、使い勝手が良くなります。

【12月】リーフミックス

【Before】不織布で虫よけと保温を!

虫よけと保温のために不織布を常にかぶせていたリーフミックス。その成果もあってか、冬の寒い時期も適度に成長し続けてくれました。追肥の必要もなく、土が乾いたら水をやることを徹底するだけでOK。日当たりの良い環境を好むとのことでしたが、北向きの玄関でも特に影響はないように感じました。

【After】苗によって異なる味わいは、まさに葉物野菜の宝石箱

先述したルッコラ同様、摘めば摘むほど生い茂っていくので、毎日少しずつでも収穫するのがおすすめです。使い勝手の良さはもちろん、その日に摘んだ葉の種類によって異なる味わいや風味が楽しめるのも、おすすめポイントのひとつ。6種類以上のさまざまなベビーリーフが入っているので、まさしく“宝石箱”のようでした。

【1月】クレソン

【Before】屋内の水耕栽培は日照不足に注意!

屋内でスポンジを利用した水耕栽培の方法を教わった1月。クレソンの種をスポンジに植えたところ、3日ほどで芽を出しました。その後も順調に育ったように見えましたが、なんだかヒョロヒョロと心もとない様子。

この茎だけが伸びる現象は徒長(とちょう)ともいい、日照不足や水分過多などが原因で起こるそうです。屋内の水耕栽培は徒長が起きやすいので、なるべく日の光を当てるようにしましょう!

【After】大きく育てようとしないことがポイント

「屋内の水耕栽培は、菌が繁殖しやすいので1~2ヶ月で収穫しましょう」との龍さんの言葉を受け、「少し小さいかな?」と思うくらいで収穫しました。小ぶりのクレソンは、サラダや炒めものにするよりもスムージーに向いています。スーパーで売られているクレソンよりもクセがなく、ゴクゴク飲めておいしいですよ♪

【2月】土のメンテナンス期間

前編でもご紹介したとおり、2月は植物が休眠する季節。植物を育てるよりも土のメンテナンスをおこなうなど、本格的なシーズンに向けてしっかり準備するほうがよいでしょう。

土のメンテナンス方法は、前編または第8回の記事をご参考ください。

【3月】フェンネル

【Before】球茎を収穫するためには間引きが必要!

フェンネルもほかのハーブ同様、非常に育てやすく、ほとんどお手入れをせずともグングンと伸びていきました。ただ、葉っぱよりも根元にできる球茎を楽しみに育てていましたが、なかなか大きくなる気配がありません。

どうやら「球茎を肥大化させるには、葉が2~3枚になったら数本間引き、5~6枚まで育ったら一番元気な芽を残して1本立ちにする」ことが必要だったようです。

大きくなると根が張ってしまい、あとからの間引きは困難。葉を収穫する分には問題ありませんが、球茎を収穫したい場合は間引きしましょう。

【After】採れすぎた葉はソースにして保存

間引きをしなかったおかげで、大量に収穫できたフェンネルの葉。なかなか使いみちが思いつきませんでしたが、バジルと同じような風味を感じたのでパスタソースを作ってみることに。

たっぷりのオリーブオイルとニンニクと一緒にじっくり炒めるだけでできるので、手軽に作れます。フェンネルに限らずほかのハーブも、ソースにして長期保存するのもおすすめですよ!

【4月】バジル

【Before】寒の戻りに注意!

夏の暑さに強いバジルですが、寒さにはめっぽう弱いです。今年の夏の寒さなど、寒の戻りには充分注意が必要。昼間は暖かくても、夜の寒さに当たると葉が黒ずんでしまいます。そんなときは、ポリ袋や不織布で対策を取りましょう。

【After】収穫量は葉の剪定で決まる!

暑さに強いバジルは、高温になると次々に葉が生えてきます。ここでそのまま茎を切らずに伸ばし続けると、開花し始めます。

花が咲くと葉が固くなってしまうので、花が咲く前に摘心しましょう。「摘心は、茎の最先端(成長点)をハサミでカットするだけ。脇芽も生えやすくなり、徒長防止にもつながるので、ぜひおこなってください」と龍さん。

収穫した葉は細かく千切ってスープストックと一緒に製氷器で凍らせると、必要な分だけ調理に使えるので便利ですよ!

【5月】青じそ

【Before】イモムシの虫食い被害が頻発

虫の被害が少ないハーブですが、こと青しそに関しては、日々イモムシとの戦いでした。イモムシは生えたばかりの葉を好んで食べるので、虫食いの葉をもぎ取って対処すると葉がどんどんなくなるうえに、新しい葉がまったく育ちません。

木酢液などの自然由来のスプレーを使っても一向に被害は減らず、もっとも効果的な対策は、植え替えの時点でプランターにネットを張る方法であると痛感しました。

ただ、今回のようにナスと同じプランターで育てると、ナスは大きく育つのでネットを張るのも大変です。絶対に虫食いは避けたいという方は、青しそ単体でプランターに植えるとよいかもしれません。

【After】花が咲いたら収穫終了

秋口に入ると、しその実がたくさん実りました。実も葉と同じような風味がするので食べられますし、そのまま放置して種を取ることもできます。

当初2本の苗を植え付けましたが、1本だけ6月頃に早々と実がなったためほとんど収穫ができませんでした。

龍さんいわく「植物は気温で四季を察知していますが、春と秋は気候がほぼ一緒です。では春秋の違いを何で感じているかというと、日の長さなのです。そのため夜間に街灯の光を浴びすぎて、季節を勘違いしてしまったのかもしれません」とのこと。確かに早くに実がなった青しその苗は、街灯に一番近い位置に置いていました。植物の賢さに脱帽です!

【6月】タイム

【Before】長雨にも負けない生命力

植え替えてから数日で収穫ができるほど、安定感のあるタイム。龍さんは「乾燥を好む」とおっしゃっていましたが、梅雨の長雨でもびくともしないほど、どんな環境下にも強い印象を受けました。

丈夫が故に、消費がまったく追いつかず!あっという間にプランターはタイムで覆われて土が見えないくらいにグングン育ちました。

【After】丈夫さに甘えて放置し過ぎはNG!

あまりに密な状態になったことが原因で、水はけが悪くなっていたようです。茎の部分が茶色く変色したタイムを見た龍さんに「少し水のやりすぎかもしれません。また、ここまで育ってしまったらプランターの中で根詰まりしている可能性が高いです。株分けをしてサイズを小さくし植え替えたほうがいいですね」とアドバイスをいただきました。

プランターから出してみると、確かに根がビッシリ!土がほとんどありません。丈夫だからといって放置しすぎると、どんなに強いハーブも弱ってしまうと痛感しました。植物は正直なので、変色などのSOSがあったら無視せず対処が必要。ほとんどの場合、水のやりすぎ(水はけが悪い)か根詰まり、肥料切れの可能性が高いです。

【7月】ペパーミント

【Before】気温の低下で成長速度が弱まる

種から育てたミントは7月後半の梅雨明けでようやく芽を出し、少しずつではありますが成長を続けていました。しかし8月中旬と9月の急激な気温の低下により、成長が止まったように。

龍さんも「ミントは気温が下がると休眠状態に入り、伸びる勢いが衰えます。その間は水やりの頻度も下げたほうがいいですね」とのこと。暖かくなるまで、そっと見守ることにしました。

【After】成長期間中は肥料が有効!

9月後半に入り気温が上がると、また葉が増え始めました!「ミントが成長しているとき、たくさん採りたい場合は液体肥料か化成肥料を2~3週間に1回与えるといいですよ」と龍さん。ミントはフレーバーウォーターやハイボールなど飲料水で活躍してくれるので、収穫量UPを目指して定期的に肥料を与えました。

「そろそろ本格的に休眠体制に入ります。3月頃に暖かな気温でまた伸び始めるので、その少し前の2月後半に肥料をあげると休眠明けの合図にもなりますよ」とのことなので、忘れずおこないます!

【8月】ローズマリー

【Before】初めの“ひと切り”を忘れずに!

樹木でもあるローズマリーは、ゆっくり成長するため毎日の観察では成長が感じられません。

こんなものかと1ヶ月ほど見守りつづけているうちに、龍さんの「新芽を摘むことによって枝分かれし少しずつ増えていきます」という重要な言葉を思い出し、先端を10cmほどカット。そこから、みるみると枝が付き始めました!最初の摘心は必ずおこなうようにしましょう。

【After】料理以外の活用法にも目を向けて

どんどん剪定すると、おもしろいほどにローズマリーの枝が増えていきます。先述したタイムやローズマリーは料理に使おうとするとなかなか使いみちが限られますが、香りがとても良いので、料理以外に活用するのもおすすめです!

そのひとつが、アロマワックスサシェ。溶かしたロウにアロマオイルを混ぜ込み、ハーブやドライフラワーと一緒に固めた芳香剤の一種です。我が家ではマスクやハンカチを入れる引き出しの中や、脱衣所やお手洗いなどに飾って楽しんでいますよ♪

特におすすめのハーブはコレ!

ハーブはどれも育てやすく、特に初心者の方にはおすすめです。使い勝手の観点からおすすめのハーブを紹介するなら、ルッコラやベビーリーフはそのまま食べられるうえ、毎日食べても飽きないので、とても便利だと感じました。また、冬より夏のほうが外に出るのが億劫だったので、冬に育てられる点もおすすめポイントです。

ミントやパセリ、バジル、パクチーも、冷凍保存ができることと使いみちが多様にあるため使いやすいです。どうしても使い切れないハーブがあったとしても、自分なりの使い方を見つけるのが、ハーブ栽培の一興と言えるかもしれません。

失敗の少ないハーブはベランダ菜園初チャレンジにおすすめ!

それほど気遣わなくても、グングン育ってくれるハーブ。ワンシーズン終えたあとの対処法としては、大きく4パターンあると龍さんはいいます。

「(1)株分けして近所に配ったり、(2)株分けしたものを植え代えて更新したり、(3)種をとって翌年に再チャレンジしたりすることができます。また樹木系のハーブは、(4)枝を切って挿し木にして増殖することも可能です」

初心者の方やベランダの環境がそれほど良くないという方でも、失敗のリスクが少なく栽培できるので、そういった方はハーブからチャレンジするのがおすすめ。丈夫がゆえに消費のほうが追いつかず持て余し気味になることもありますが、今回紹介した栽培のコツや活用法を参考に、ハーブで彩りのある生活を楽しんでいただけたら嬉しいです。

取材・文/鎌上織愛

監修