日本新記録となる9秒95で優勝した山懸亮太【写真:奥井隆史】

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陸上・布勢スプリント

 陸上の布勢スプリントが6日、鳥取・ヤマタスポーツパーク陸上競技場で行われ、男子100メートル決勝Aでは山懸亮太(セイコー)が日本新記録となる9秒95(追い風2.0メートル)で優勝した。日本人の9秒台はサニブラウン・ハキーム(9秒97)、桐生祥秀(9秒98)、小池祐貴(9秒98)に続く史上4人目。3枠の東京五輪代表を争う24日開幕の日本選手権(大阪)に向けて快挙を成し遂げ、父・浩一さんは「陸上は彼を輝かせてくれる場所」と心境を明かした。

 山縣は隣のレーンの多田と並ぶと、伸びのある走りで振り切った。速報値は9秒97。どよめきが起きると、数十秒後に確定タイム9秒95と追い風2.0メートルを発表された。無観客ながら入場が許可された関係者と保護者らは拍手喝采。日本新記録を樹立し、手を叩いて喜んだ。

 父・浩一さん、母・美津恵さんはスタンドから観戦。息子の快挙に沸いた。見届けた浩一さんは「陸上が自分(亮太)を輝かせてくれる場所。そこにいろんな理論とか、思考とかがミックスされていた。決して恵まれた体格ではないけど、凄い理論的なものが確立されている」と、身長177センチ、74キロながら駆け抜けた姿に感動した様子だった。

 山縣は広島の名門進学校、修道中・高を経て慶大に進学した異色のスプリンター。浩一さんは「勉強をやりなさいと言って、亮太の悪いところは当然怒るんですけど、陸上で怒ったことはない」と幼い頃を振り返った。どんどん記録を伸ばした中で、子育てでは「褒め続ける」ことを意識していたという。

「足が速くてどこに行っても褒めてもらえた。褒めてもらえると本人は嬉しくなって頑張るんです。試合に出て一番になって、ほとんど負けることがなかった時は、タイムがいいか悪いか僕には判断基準がなかったんですね。だから『よかったね』って褒めることはあっても、怒ったことがないんですよ。だから、陸上を嫌いにならずに済んだ。

 彼も一生懸命かもしれないけど、僕らも仕事をしないといけないのですべてに寄り添うことはできない。ただ、想いを叶えさせてやりたいというのは当然忘れることはなかったし、正真正銘それを一身に思っていた」

 息子の快挙に感無量の面持ちだった。(THE ANSWER編集部)