東京五輪の出場権を争う『東京2020ビーチバレーボール日本代表チーム決定戦・女子 立川立飛大会』(東京都立川市・ドーム立川立飛)が5月22〜23日に行なわれた。

 これは、東京五輪に出場できる女子全24チームのうち、日本に与えられた開催国枠「1」を決める大会。ワールドランキングポイントに基づくFIVB(国際バレーボール連盟)開催国枠ランキングの上位6チームによって、変則ダブルエリミネーション方式(1、2回戦の敗者に復活戦がある)で争われた。

 ちなみに、今回の舞台はこの代表決定戦のために特別に作られた屋内コートを使用。プレーの鍵となる風がまったく吹かず、天井や壁との距離感などに順応するにも時間を要するが、選手たちには事前に十分な練習時間を与えられることはなかった。五輪出場をかけた重要な一戦にもかかわらず、そうした異例の条件下で行なわれるとあって、選手たちからは戸惑いの声も上がっていた。

 その代表決定戦に、ペアを組んで3年目となる坂口佳穂(25歳/マイナビ)&村上礼華(24歳/ダイキアクシス)ペアも出場。五輪切符を目指して奮闘した。


東京五輪の日本代表決定戦に挑んだ坂口佳穂(右)と村上礼華のペア

 1回戦の相手は、長谷川暁子(35歳)&二見梓(29歳)ペア。身長180cmの二見の高さと、長谷川のオールラウンドなプレーで攻撃を仕掛けていくチームだ。2週間前に行なわれた『マイナビジャパンビーチバレーボールツアー2021』の第1戦では優勝を飾っており、今最も好調な2人である。

 坂口の気合いの入った強打から始まった試合は、序盤から一進一退が続く。坂口&村上礼ペアは、武器である坂口のスパイクや村上礼のサーブで得点を重ねていったが、慣れないコート、大一番のプレッシャーからか、主導権をつかむまでには至らなかった。

 すると中盤、村上礼の強打が二見のブロックに止められると、次第に流れは長谷川&二見ペアに傾いていく。坂口のバックトスで相手コートにボールを落とすなど、意表をついた攻撃でリズムを変えようとするが、一度傾いた流れは止められず、第1セットは16−21で失った。

 第2セットもシーソーゲームとなった。坂口&村上礼ペアは中盤劣勢になりかけるも、長いラリーから坂口が強打を決めるなどして反撃。第1セットと違って、ブロックを避ける角度をつけたスパイクや、コート奥へのディープショットを多用して二見の高さも打開し、点差を離されることなく、終盤まで持ち込んだ。

 そうして、20−20のデュースに持ち込むと、相手もミスが増え、付け入る隙が見えてきた。しかし、チャンスボールからの軟打を二見に拾われて逆襲を許してしまう。結局、最後は坂口のストレートの強打がアウト。21−23で第2セットも落として、セットカウント0−2で敗れた。

 坂口は、「スパイクやサーブなどのミスが多く、決め切らなければいけないところで決められなかった」と振り返った。

 敗者復活戦の相手は、石井美樹(31歳)&村上めぐみ(35歳)だった。国内最強チームで、このトーナメントも本命視されていたが、1戦目は動きにまったく精彩がなく、ストレート負け。敗者復活サイドへ回ってきた。

 その戦いぶりを見る限り、坂口&村上礼ペアにも勝機はあると思われたが、日本トップチームの底力はさすがに違った。一戦目と打って変わって、プレーにキレが戻った石井&村上めぐみペアに序盤から圧倒された。強打がことごとく拾われ、効果的なサーブが決まらず、相手の強固なディフェンスの前に攻め手を欠いて、11−21で第1セットを落とした。

 第2セットも、状況は変わらなかった。石井&村上めぐみペアが本来の形を取り戻し、攻守のギアがまた一段上がると、坂口&村上礼ペアはミスを連発。坂口のスパイク、ブロックも単発では決まるが、流れを一変させることはできなかった。そのまま第2セットも12−21で失って セットカウント0−2で敗退した。

 坂口佳穂と村上礼華の、初めてのオリンピックへの挑戦は終わった。1セットも取れず2戦2敗と、チームのいいところを出し切ることはできなかった。

 それでも、得たものは少なくない。「思い切ってできたのはよかったが、悔しい......」と村上礼が涙を流す横で、坂口は「次につながる試合はできた。競技生活の中で貴重な経験ができたと思う」と気丈に話した。

 痺れるような緊張感のなかで行なわれるゲーム体験は、そうそう経験できるものではない。4年に一度の大きな目標に対しても、改めてその"重さ"を実感したことだろう。

 最終的に石井&村上めぐみペアがトーナメントを勝ち上がって、東京五輪への切符を手にした。石井&村上めぐみペアは5年前、リオデジャネイロ五輪のアジア大陸予選に出場。準決勝で敗れ、涙を呑んだ。だが、その時の経験、悔しさをバネにして「ここまでやって来た」という。まさに苦難の過程を経て、ついに大いなる夢をつかんだ。

 坂口佳穂と村上礼華は、今大会の出場チームの中ではランキング最下位。しかも、最年少ペアである。未来あるチームであり、2024年パリ五輪、2028年ロサンゼルス五輪と、夢舞台への挑戦もこれからが本番だ。

「まだまだ目指す目標はたくさんある。それに向けてがんばっていきたい」

 坂口はそう言って、最後は笑顔を浮かべた。今回の貴重な体験を経て、近い将来、逞しく成長した彼女たちの姿が見られることを期待したい。