今春のダイヤ改正で日中の各駅停車が減った東急田園都市線(写真:ニングル/PIXTA)

今年の春も、全国で鉄道のダイヤ改正が行われた。一般的には終電繰り上げに注目が集まったが、日中帯のダイヤが大きく変わり、本数が減少した路線もある。コロナ禍による鉄道への影響の大きさが感じられるが、本数が減っても利便性を損なわなかったり、実は乗り継ぎが便利になったりしたケースがある。

今回は、そんな路線のダイヤについて取り上げたい。

大きな変化を遂げた路線として挙げられるのが東急田園都市線だ。日中の各駅停車が減便されたのである。以前は各駅停車と急行・準急ともに毎時8本ずつだったのが、各駅停車6本、急行・準急9本となり、東急史上初めて各駅停車よりも急行系電車のほうが本数が多いダイヤとなった。各駅停車の頻繁運転を重視してきた同社としては異例のことである。

実は使える本数はほぼ同じ?

各駅停車の減便は衝撃的ではあるが、実際に割りを食った駅は限定的だ。中央林間―長津田間は毎時3本の準急が各駅に停まるので、急行通過駅でも各駅停車と準急を合わせて毎時9本が利用でき、ダイヤ改正前(毎時8本)よりもむしろ乗車チャンスは増えた。


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高津と二子新地については大井町線の一部の各駅停車が停まるが、両駅に停車する大井町線の列車は、上りは二子玉川で渋谷方面への準急に接続、下りは同駅で準急から高津・二子新地停車の各駅停車へ乗り継げる。準急は二子玉川―渋谷間各駅停車なので、高津・二子新地―用賀・渋谷方面各駅間の移動に使える本数は実質毎時9本で、改正前の毎時10本から1本減っただけで済んだ。

田奈発着の場合は、新たに青葉台で準急への乗り継ぎができるようになった。田奈駅毎時19・39・59分発の各駅停車が青葉台で準急に乗り継げる列車である。

また、急行のうち3本は大井町線直通の急行だが、二子玉川で渋谷方面の各駅停車と接続するため、渋谷発着でも急行系列車の本数は実質9本走っているのと同じだ。渋谷からだと毎時03・23・43分発の各駅停車が、二子玉川で大井町線発の急行に接続する電車だ。

そして、今回のダイヤ改正の大きなポイントといえるのが、15分サイクル、つまり15分ごとに同じパターンを繰り返すダイヤが20分サイクルに変わったことである。

実は、田園都市線と接続する埼京線のりんかい線直通列車、南武線、横浜線、小田急江ノ島線は以前から20分サイクルのダイヤだった。田園都市線も同じサイクルになったことで、これまでは列車によってバラバラだった乗り換えのパターンが統一されたのだ。

実例をいくつか紹介しよう。なお、田園都市線側の着時刻は時刻表の発車時刻を参照しているため、表記の時刻より前に着く場合もある。

統一された「乗り換えのパターン」

例えば中央林間で小田急江ノ島線藤沢方面行きの快速急行(毎時09・29・49分発)に乗りたい場合は、中央林間に毎時19・39・59分に着く渋谷方面発の急行を利用すれば乗り継げる。足の速い人なら毎時06・26・46分着の大井町発の急行からも乗り継げるだろう。逆に、快速急行新宿行きから田園都市線に乗り換える場合は、毎時00・20・40分の渋谷方面行き急行か、08・28・48分発の急行大井町行きが利用できる。

長津田から横浜線の毎時17・37・57分発快速桜木町行きに乗りたければ、長津田毎時08・28・48分着の急行渋谷方面行き、毎時11・31・51分着の急行中央林間行きに乗ればいい。


溝の口から南武線の毎時00・20・40分発快速川崎行きを使う場合は、上り列車から乗り継ぐ場合、溝の口毎時13・33・53分着の急行大井町行きがちょうどいいタイミングだ。


さらに、渋谷からお台場方面、毎時12・32・52分発車(一部時間帯は異なる)のりんかい線直通新木場行きには、毎時03・23・43分着(一部、これより1〜2分遅く着く列車もある)の各駅停車押上行きがちょうどいい。この各駅停車は桜新町での急行通過待ちがない列車だ。

このように覚えやすいダイヤ、覚えておけば感覚的に利用できるダイヤとなった。

東急では、大井町線も田園都市線に合わせて20分サイクルのダイヤとなり、20分間に急行1本、各駅停車3本の体制へと変わった。

このダイヤ改正により急行・各駅停車ともに毎時1本ずつ減ったものの、いいことも起きている。大岡山駅で毎時3本の急行のうち1本が上下ともに目黒線の急行と接続するようになり、目黒―二子玉川間が最速15分、武蔵小杉―大井町間が最速16分と、従来より3〜6分短縮された。大井町毎時43分発(大井町線急行)は目黒44分発(目黒線急行)に、二子玉川毎時36分発(大井町線急行)が武蔵小杉毎時37分発(目黒線急行)に接続する。ただ、とくに後者はわずかでも遅延すると接続できない場合が多いので注意が必要だ。

減便はしていないが、JR線で接続が改善された例も紹介したい。

筆者は以前、「駅時刻表には表れない『便利な路線の見分け方』」という記事で、「大宮駅での湘南新宿ラインと上野東京ラインの同一ホーム接続」を訴えたが、今回のダイヤ改正で一部だがこれが実現した。毎時43分(一部時間帯は異なる)に発車する宇都宮線内発の湘南新宿ライン快速と上野東京ラインが同じホームで接続するようになったのだ。

これにより、宇都宮線快速停車駅から東京方面各駅への所要時間は10分ほど短縮された。これだけでも大きな前進だが、接続するのはどちらも宇都宮線内発の列車だ。できれば高崎線内発・新宿方面行きと宇都宮線内発・東京方面行きなど、方面が違う列車同士の接続を検討してほしいところである。

残念なケースもあるが…

いかがだったであろうか。今回のダイヤ改正で田園都市線・大井町線は減便されたものの、接続する各線とダイヤのパターンが一致したことによって、列車によって乗り換えの待ち時間が大きく変わることはなくなり、利便性が向上したと筆者は考える。

ただ、いいことばかりではない。同じ東急の路線ながら、目黒線は15分サイクル、大井町線は20分サイクルのダイヤに分かれてしまったのは残念である。

2022年度下期には、東急線と相鉄線の直通運転が始まる予定だ。相鉄直通をきっかけに目黒線と東横線は10分サイクルのダイヤになるだろうか。接続する路線同士のダイヤパターンが一致していれば、時間帯によって発車時刻や接続するかどうかが微妙に違うといった不便はなくなる。鉄道各社には、さまざまなダイヤサイクル長の路線と親和性が高くなる、汎用性の高いパターンの研究をしてもらいたいと思う。