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●日立が米IT企業を約1兆円で買収

 日立製作所は3月31日、米カリフォルニア州シリコンバレーのIT企業・グローバルロジック社を買収すると発表した。ロイター通信によると、買収総額は有利子負債の返済額も含めると、約96億ドル(約1兆368億円)となる見込みだ。規制当局の承認などが順調に通れば、7月末までに買収を終える。

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 日立には、IoT基盤「ルマーダ」の世界展開を加速させたい狙いがある。今回の規模は日立にとっても過去最大規模の買収であるが、ここ数年M&Aによって変革を進める日立に死角はないのか?

●デジタル企業への変換を目指す日立

 かつて日立製作所と言えば、家電から原子力まで幅広い業態を持つ多角的企業だったが、リーマンショックの影響を受け、2009年3月期に約7800億円の最終赤字に陥り事業構造の転換を加速せざるを得なくなった。

 日立は上場子会社について、次々と完全子会社化もしくは売却を進め、現在上場子会社は日立金属と日立建機だけとなった。一方で2000年代から進めてきた海外市場への進出と、デジタル企業への転換を進めてきた。

 IoT基盤「ルマーダ」は人工知能が搭載され、故障予兆診断や生産計画最適化などを分析し提案する、DXのような役割を果たす日立の切り札的存在として期待されている。

●吉と出るか?凶と出るか?

 グローバルロジック社の買収のニュースを受けて、ムーディーズもS&Pも日立の格付けを格下げする方向で見直すと報道されている。日立の株価は31日から10%近く値を下げている。

 買収資金の調達も課題で、2000億円を手元資金で、8000億円を借入と社債の発行でまかなうとしている。有利子負債での買収により、財務状況の悪化が懸念される。

 日立金属を売却して、約7000億円を買収資金に充当すると見られているが、あくまで目論見に過ぎない。

 ムーディーズは財務レバレッジが上昇する可能性があるとしているが、それも資産売却の状況によるとしている。この大型買収は、日立の海外展開が成功するかどうかの鍵を握ることになるだろう。